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大学発ベンチャーとは?~作物栽培学分野でのリモートセンシング技術の社会実装を目指す~

「大学発ベンチャー」とう言葉を聞いたことはありますか?
大学発ベンチャーとは、大学の教員や研究者、学生が研究・開発した技術シーズをもとに事業化を目指すベンチャー企業です。
大学発ベンチャーは、2000年代、経済産業省大臣が「大学発ベンチャー1000社計画」を掲げ、大学の教官が研究とベンチャー企業での活動を両立できる環境の整備も進み、新規市場や新規雇用を創出してきました。
しかし、研究開発段階である技術シーズを「製品化」「事業化」していく壁は高い状況です。

今回は大学発ベンチャーである当社サグリが目指す、技術シーズの事業化、社会実装についてお話します。

論文を書く研究者から社会実装へ
当社サグリのCTOであり、岐阜大学准教授の田中先生は、大学時代から営農を研究していました。大学で研究を進める中では、成果として有用な技術を農家さん利用するよう働きかけてもなかなか利用されないことに歯がゆさを感じていたそうです。研究者として論文はかけてもその論文は「こういう場合はこういう風に技術が使える」という、ひとつのケーススタディでしかなく、研究成果が実際に普及するためには様々な場面で検証し、多様な問題を抱える農家さんが使える形にカスタマイズする必要があると考えたのです。

その中で、ビジネスコンテストであるリバネス主催のTECH PLANTERで田中先生はファイナリストに選出され、同じくファイナリストであった代表の坪井からのアプローチをきっかけにCTOとしてサグリに参画。
現在は、岐阜大学の准教授と兼任しながら研究の実用化に向けて取り組んでいます。

作物栽培学分野における機械学習での解析とは?
人工衛星やドローンで取得した画像データを解析し、「膨大な時空間データを営農現場での意思決定にどのように活用するか」が課題となっています。
例えば、ダイズなどの畑作物の苗立ちを自動検出する技術や、現在は衛星画像から土壌の成分を解析する技術などの研究開発に取り組んでいます。

農業分野は他の分野と比較し、現場で多くのデータを得られることが特徴です。実際に現場に足を運び、土壌がどのような状態かを確かめ、実データを組み合わせて検証する地道な研究を重ねることで、衛生データの解析結果を活用することが可能になります。

農業分野でのデータ活用に向けて、横に繋がっていくことが課題。
データの活用に向けては、データを保有する企業や公的機関などそれぞれの組織が横に繋がっていくことが課題です。
農業関連の様々な企業が協力し、データを共有すれば、データを掛け合わせ新たな視点で農家さんが使えるデータを提供することが可能になるのではと考えております。
実際は、海外の企業も含め、保有しているデータを自社内で閉ざしてしまい、活用しきれていないのが現状です。
複数の条件が重なり合う農業だからこそ、多様なデータを活用できる状態にするために、協力関係を築いていくことが必要です。

技術を活用することで目指す農業の未来
農業分野でもカーボンクレジットを意識した取り組みが必要になると考えています。これまで農業はCO2排出産業と位置付けられてきました。ハウス栽培の加温や農業機械から排出されるCO2、施肥された肥料が変化してCO2より温室効果が高いメタンガスが発生しているといった背景からです。その一方で農地土壌は森林と同じようにCO2の吸収源に加える動きも出てきています。


サグリでは、これまでの単純に生産性や収益性の向上だけを目指す農業では、世の中の価値観の変化する中では通用しないと考えています。
これからの農業は地球の環境に配慮した生産工程なども「付加価値」となっていくのではないでしょうか。
欧米諸国で地球の環境に配慮した生産についての基準がつくられれば、日本の農作物はこのままでは輸出ができなくなる、という可能性も考えられます。

そこで大切になるのが、大学の研究と民間企業が農業分野に貢献していくことです。農林水産省も「みどりの食料システム戦略」を掲げ食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションでの実現に取り組んでおりますが、国策に任せるだけでなく、大学の研究・開発した技術と、現場に寄り添い社会実装を形にしていける民間企業の力は大きいと感じております。まさに私たちが頑張らなければいけません。

サグリでは衛星から得られるデータと地上のデータを活用することで、従来の農作業を効率化するだけでなく、今までに無い高効率・高付加価値の生産方法を確立できるのではないかと考えています。日本だけでなく、世界中で持続的な農業を実現したいと考えています。

農学部出身者がスタートアップで活躍できる未来へ
スタートアップの醍醐味は、やはり「自分が手掛けたものが形になる」という実感を得られることです。
農業分野でのIT技術活用は社会的ニーズがありますが、学んだことを机上で企画した施策のような形で意見を出すだけではもったいないと感じています。現場で農家さんと話ながらサービスを形にしていくことができる環境があるスタートアップでこそ、社会的意義を実感しながら学んだことが活かしていける環境があると自負しております。

大学で学んだ解析技術や農業の知見、思考力を活かす場として、農業分野のスタートアップも就職先の選択肢のひとつとして考えることが当たり前になる未来を目指しています。


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