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ベトナムの土地制度と外資系企業

 社会主義国であるベトナムでは,土地は全て国有です(土地法4条)。
  ベトナム人・ベトナム企業であっても,土地については,国から「土地使用権」を借りることになります。他方で,いわゆる外資系企業も,国から土地使用権を借りることができます(土地法5条7項)。
 ここで言う「外資系企業」とは,出資金を出すのは日本企業や日本人であっても,あくまでベトナムの企業法に基づいて設立されたベトナム国内企業の意味です。 外国企業(日本法人)や外国人(日本人)が,(日本にいながら)直接,ベトナム国から土地使用権の賃借を受けることは,一切できません。
 そもそも,外国人や外国企業が,土地使用権の賃貸を受けるなどの経済活動を行う場合には,投資法により,ベトナム国内に会社を設立することが義務づけられています。その意味で,外国人や外国企業によるベトナムでの経済活動そのものが国による一般的な規制下にあり,その点,原則として自由な日本と大きく異なります。
 加えて,土地使用権を「国」から借りるという仕組みが取られていることからも,外国人や外国企業がベトナムで「土地使用権」を得ること自体が国の管理下にあると言え,外国人や外国企業が自由に土地所有権を取得できる日本とは,土地制度自体の原則と例外が全く逆になっているのです。
 
 ところで,ベトナムのこの厳しい土地規制にも抜け道があります。
 それが,既に「土地使用権」の賃貸を受けているベトナム企業の株式を外国人や外国企業が取得するという方法です。これにより,外国人や外国企業がベトナム企業を通じて「土地使用権」の株式を譲受けるだけなので,ベトナムで会社を設立する必要はなく,外国にいながらこれを行うことができます。
 この方法については,土地法に規制がなく,投資法26条に「条件付き投資分野」に該当する事業を行う会社の株式を取得する場合と,持分51%以上を取得するに至る場合に限って,当局への事前登録手続が必要という,“緩い”規制がされているのみです。

 このように既に土地使用権を有しているベトナム企業を外国人や外国企業が買収することは,原則として自由にでき,持分51%以上を取得する場合等に事前登録が必要という投資法上の規制が存在するだけでした。
 海だけでなく陸も大陸の某国と接しているベトナムでは,某国による土地浸食に対する警戒心は,日本の比ではありません。
 日本も最近ようやく外国人による土地取得規制の動きが出てきましたが,昨年,ベトナムは投資法を改正し(本年2021年1月1日施行),下記の事項,すなわち,国境の島や町村,海岸の町村,その他国の防衛や安全に影響がある地域の土地使用権を有する企業の株式を,外国人や外国企業が取得する場合を,当局への事前登録が必要な事項に追加するに至っています。
 Nhà đầu tư nước ngoài góp vốn, mua cổ phần, mua phần vốn góp của tổ chức kinh tế có Giấy chứng nhận quyền sử dụng đất tại đảo và xã, phường, thị trấn biên giới; xã, phường, thị trấn ven biển; khu vực khác có ảnh hưởng đến quốc phòng, an ninh.



東京で弁護士をしています。ホーチミン市で日越関係強化のための会社を経営しています。日本のことベトナムのこと郷土福島県のこと,法律や歴史のこと,そしてそれらが関連し合うことを書いています。どうぞよろしくお願いいたします。