バンタンデザイン研究所で特別講義をした備忘録
去る、昨年12月20日&21日、大阪は心斎橋アメ村にある、バンタンデザイン研究所にて、弊社BALUE, Inc.で二日間の特別講義を担当させていただきました。
別案件でバンタンの方と弊社・村野(@ukeymurano)がミーティングした際、こちらの活動にご興味を持ってくださった先方が、学期末の特別授業枠に我々を推薦してくださったのがきっかけでした。
以前から社内で、受託制作だけでなくなんらかの形で教育分野に進出したいという共通意識があり、さらには村野が以前から「バンタンで先生をする」という目標を掲げていたのもあり、喜んで受けさせていただきました。
とはいえ、実績ある講師陣を差し置いて我々が技術的な講義をしたわけではありません。
経験も実績もまだまだ少ないけれども、だからこそ学生と近い目線で伝えられることがあるはずと、特別講義を計画・実施させていただきました。
このnoteでは、今後の機会のための備忘録として今回の経緯と内容を書き記しました。
学生たちのニーズ
今回実施させてもらう特別授業は必修ではないとのことだったので、そもそも学生のニーズに合わなければ、いざ授業を実施しても出席者がほぼいない、なんてこともあり得ます。
また、デザイン・映像学部という、普段は異なる授業を受けている二つの学部の生徒を対象とした授業だったので、どちらかに偏る内容にするわけにもいきません。
できるだけ多くの学生に参加してもらうため、まずはじめに担当の先生から、両学部に所属する学生の、共通のニーズをヒアリングすることから始めました。
「どんな授業なら受けたいか」
ヒアリングをしていく上で見えてきたのは、学生たちが抱えている「不安」でした。
対象となるのは、一年生をこの冬に終える学生たち。翌年には早くも就職活動が控えており、それを見据えた準備を意識し始める時期。
先生の目を通して我々に見えたのは、この一年デザインや映像を学んでは来たが、優秀な学生と自分の差に自信をなくしていたり、就職できるのか、自分が通用するのかと不安を感じていたり、そもそも先のことをどう考えていいかわからなかったり...そんな悩める学生たちの姿でした。
そしてそれは、美大生や専門学校生時代、あるいは独立間もない頃の、我々自身の姿でした。
話したこと、伝えたかったこと
そこで、あの頃のぼくらなら何を聞きたかっただろう?どうすれば自信を持てただろう?そんな視点で、今回の授業を"先生"ではなく"先輩"として組み立てることにしました。
2日間、計8時間にも渡る長い授業だったのですが、大きくは以下のような内容で組み立てました。
1日目
1. BALUE設立の経緯と会社の事業内容紹介
2. クリエイターが、どのように仕事を得るのかの事例紹介
3. 就職や仕事を得るために学生のうちから取り組めることなどを提案
4. 自分だけの肩書を見つけるための「得意×好き」を見つけるWS
2日目
1. 具体的なプロジェクト内容から抽象化した成功のヒントなどを共有
2. 業界の制作の裏側 - 具体的なプロセスや費用の算出などについて解説
3. 結果を出すために必要な「小さなバズ(局所的に話題にする)」の考え方を紹介
4. 卒業後の仕事について、自由にディスカッション
学生に興味を持ってもらえるよう、できるだけ具体的な事例や今っぽいネタ(例えばSNSやYoutubeなど)なども盛り込みつつ、クリエイターとして生きていくことの楽しさと厳しさの両方が伝わるような設計をしました。また、偏った内容になりすぎないよう、様々なジャンルに対して共通性のある内容になるよう気を付けています。
授業は基本メンバーのうち2人の対談形式で行い、オンラインコメントサービスSlido(https://www.sli.do/)を取り入れて、手をあげずとも気軽にリアルタイム質問ができる環境を用意しました。
授業には、両学部20数人いたクラスで、10数人が出席してくれました。一桁でなくて良かった。
長丁場であり、伝えたい内容が広く深くなるため、自分を含めメンバー3人が全員登壇するという、まさに総力戦ともいえる企画となったのですが、一貫して伝えたかったのは「自信をもって学んで欲しい」ということ。
今彼らが学んでいる内容は露骨なほどに仕事へと繋がっているということ、捉え方次第で進路が無限にあるということを、自分たちの経験を通して、伝えようとしました。
自分の「キャラ」を見つける
講義の中で特に力を入れていたのが、1日目の最後のワークショップでした。
このWSでは、弊社が使っている両A面名刺の片面、個人の肩書を自由に書いたものを参考に、自分の名刺を作ろうというもの。
人とは違う自分の特徴や好きなこと、特技などをざっくばらんに書き出して、それを俯瞰しながら自分のキャラ特性を見つけ、これからの武器にして欲しいという企画でした。
1日目のダイジェスト映像
もう一つ、自分たちの中で大きな挑戦だったのが、一日目の講義を撮影し、二日目にダイジェスト映像として流すというもの。
これは二日目の内容の一部で、コンテンツを出す「スピード感」と「切り取り方」の重要性を伝えるために用意したものなのですが、一日目の講義終わりに森下(@daiki_morishita)が帰社後、限られた時間の中で用意してくれました。
反省
そんな形で2日間、8時間に及ぶ講義をさせていただきましたが、端的に言えば「学生の心を掴みきれなかった」というのが正直な感想です。
"先輩"というポジショニングを意識して、互いにコミュニケーションの取りやすい、ゆるい空気感を演出しようとしたのですが、これは正直、失敗でした。
教室という場では、前で話す側とそれを聞く側はどこまでいっても「先生と生徒」の距離感を埋めることはできません。
それも、昨日今日初めて会った相手なら当然です。しかもぼくらに至っては、先生という役割が(ダンスインストラクターをしていた村野を除き)初心者同然。
我々自身が、もっと有名で派手な実績のあるクリエイター集団であればまた違ったリアクションが見れたのかもしれませんが、自分たちのことをだれ一人知っている学生がいない状態での「先輩ぶったアドバイス」は、興味のない学生からすれば「お前誰やねん」という状態だったかもしれません。
また、長時間に及ぶ講義の中で伝えたかったテーマがぼやけてしまい、うまく伝わらなかったような印象もありました。
時間を言い訳にするわけではなく、長時間をうまくドライブできるだけの技量が我々にはまだ足りていなかった。
それでも一部の生徒にとっては非常に刺さる内容だったようで、授業終わりに熱心に話を聞きに来てくれる子が何人かいてくれたことは救いでした。
とはいえ満足のいく結果ではなかったのは事実。
今回の件で見えた課題としては
・講義をしたら喜ばれる存在になる(実績と知名度)
・講義の企画力と構成力を高める(他者の講義・プレゼン研究)
・聴講者の積極的な参加促進(空気を作る要因分析)
(内は対策)
あたりの改善が、個人としても社としても、必要と感じます。
ただ同時に、自分たちだからこそ伝えられること、自分たちにしか伝えられないことは確かにあるという確信を持つこともできました。
次の機会に、活かしたいと思います。
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