見出し画像

サガン鳥栖U18 対 神村学園(九州プリンス2022)

2022年九州プリンスリーグ、サガン鳥栖U-18対神村学園の観戦記です。
当日の天気は、前夜から試合開始前まで雨が降り続ける天気となり、決してコンディションが良い状態ではありませんでしたが、試合開始前にグラウンドの水の吸い取りなどの対応によって、無事に試合開催と相成りました。開催に尽力されたみなさま、たいへんおつかれさまでした。

サガン鳥栖のスタメンとフォーメーションはこの通りです。1年生の内丸君と古館君、鈴木君がスタメンに入っています。

試合は、圧倒的なスピードと迫力のある神村学園のプレッシングによる支配で幕を開けます。鳥栖は、最終ラインからのビルドアップを試みますが、センターバックからのパスの出しどころをしっかりとつぶした神村学園が、中盤でことごとくボールをカットします。やみくもにパスを送っても網に掛かることを悟ったため、中盤を経由する選択肢がないときは、プレッシング回避のために、鈴木君や木戸君に対して、長いボールを送り込みますが、フィジカルで勝る神村のセンターバックが自由を許しません。

圧巻だったのは、神村13番の福田師王君。パスコースをしぼりながら鳥栖の出方を見ていたのですが、少しでも鳥栖の選手のトラップが離れたり、出し先を迷ったり、パスがずれた際には、一瞬にして間を詰めて、ボールを刈り取っていきます。特に、内丸君は福田君のターゲットになっていて、幾度となくボールロストする形に。これまでの中学生年代のスピードとは異なるプレッシングの速さに、なかなか慣れなかったでしょうが、今後のことを考えるとすごく良い経験をしたと思います。
プレミアとプリンスの双方に登録し、出場の機会がたくさんあるというのは、選手たちの成長のためにも非常によい環境下にありますよね。

鳥栖がボールを持つものの、うまく攻撃を構築できない中、しっかりとした守備コントロールでボールを奪う神村がショートカウンターを中心にペースを握ります。神村は、ボールを奪ってからの展開も早く、いったん中央を経由してから間を作って、その間に飛び出していくサイドハーフを上手に使ってきわどいクロスを何本もあげていましたし、コースが見えたときにや少し遠い位置からでもミドルシュートを何本も放っていました。序盤から、非常に圧力のある攻撃を受けましたが、最後はゴールキーパー小池君がピッチが濡れている難しいコンディションでしたが、しっかりとセービングしてくれたことで、少しずつ鳥栖の選手たちが慣れていく時間を作ってくれました。序盤に失点したならば、かなり難しい試合になっていたでしょうが、小池君がしっかりと守ってくれたことが非常に大きかったです。

対する鳥栖は、神村のプレッシングに苦労はしながらも、少しずつスピードにアジャストし、パススピードを上げることと、つぶされる前になるべく早めに次の選手に展開する形を模索して、少しずつ前に行ける形を作っていました。特に、左サイドは、ボールのつなぎや裏への配給も含めて、少しずつ形を作れるようになってきました。鬼木君が、いつもは縦に抜ける香車のような役割を見せるのですが、この試合では、ビルドアップがうまくいっていないこともあって、自らパスの逃げ道にはいったり、縦を急いでロストすることなくボールを落ち着かせどころになったりと、インテリジェンスなプレイを見せていたのは印象的でした。

前半はおよそこのような展開でしたが、公式記録で、前半のシュートは神村が8本で、鳥栖が3本。神村はそのすべてが前線と2列目の選手たちが放ったもので、鳥栖はすべてボランチの林君が放ったものであるところが、この試合の前半をまさに表しています。鳥栖はビルドアップから前に進もうとしますが、サイドに起点は作れたとしても、なかなかシュートの機会が作れず、苦しい形になってのシュートがあった程度。神村は主にショートカウンターからの早い攻撃が実を結んで前線がしっかりと前を向けてシュートまでつながる形。

この応酬がつづいていったなかで、前半の終了間際に神村が先制点を挙げます。鳥栖がゴール前まで押し込んで、クロスをクリアした神村がボールを拾ってそのまま縦へ。フォワード西丸君が中央でボールを受けて反転し、そしてすぐに左サイド裏のスペースに飛び出していく福田君にスルーパス。内丸君、田代君はしっかりと戻っていたのですが、縦に抜ける福田君のスピードはそれを凌駕し、追いついたと思いきやその瞬間に左足での切り替えし。必死にくらいついてスライディングを見せますが、福田君が45度の角度から右足でニアサイドに鋭いシュートを突き刺しました。
いやあ、えぐい、電光石火のカウンターとはまさにこのことで、神村のプレッシングにもなれて、少しずつゴール前に迫れるようになってからのこのカウンターによる失点は、かなり痛かったですし、神村の西丸君、福田君のコンビネーションは本当に見事でした。

後半にはいってからは、鳥栖が右サイドを中心とした攻撃に転換してきます。先田くんをより高い位置でボールに関与できるようにして、林君が低い位置から大きな展開で右サイドにフィードする仕組みをつくり、長短のパスで神村のプレッシングに対抗します。木戸君と鈴木君も、神村のセンターバックの強度にアジャストしてきて、フィジカル的なコンタクトで競り勝つ形ではなく、ボールを受けてからの素早い反転や体を当てられる前に展開するような、柔よく剛を制すな感じで少しずつゴールに迫る動きを見せます。

同点ゴールは60分。ビルドアップから小池君が左サイド鬼木君へフィード。鬼木君がダイレクトで鈴木君にパスを送り込み、鈴木君がセンターバックに体を付けられる前に鋭いターン。このターンで前に出てきていたセンターバックと相手サイドバックとのギャップができ、オフサイドラインがずれたところを狙って飛び出していく木戸君に鈴木君が素晴らしいスルーパス。木戸君が冷静にゴール前に運び込んで、左足で同点ゴールを突き刺しました。
鬼木君、鈴木君のアクロバティックとでもいいましょうか、ダイレクト - ターン - スルーパスという、これまた神村の先制点のお株を奪う攻撃で同点に追いつきました。

ここから勢いに乗ろうとするところで鳥栖にアクシデント。ボールを受けて切り返しをしようとした赤崎君が負傷退場。退場の感じから行くと、長引きそうな怪我のようです。赤崎君は、プレミアもプリンスもという、過密日程であったので、疲労が蓄積していたのかもしれません。ほかの選手も、両方を掛け持ちするような選手は、十分に体のケアをして、怪我が発生しないように無理しないでほしいところです。

そのショックも冷めやらぬ頃、勝ち越しゴールは神村に。この試合、さんざん鋭いプレッシングを見せてきた福田君だったのですが、鳥栖のビルドアップ局面ですこしトラップが離れて後ろ向きでパスコースを探すことになった林君を見つけた瞬間、素晴らしい出足とコンタクトで林君からボールを奪取します。そして、奪ったボールを高校2年生時代にセレッソ入団が内定した大迫塁君に預け、その大迫君が左足を豪快に振りぬいて鳥栖のゴールに突き刺しました。林君にとっては痛恨のボールロストだったのですが、先ほども言いましたが、福田君レベルのプレッシングとディフェンスを体験できた内丸君、田代君、林君はよい教訓になったことでしょう。

林君は、ショッキングなプレイだったでしょうが、そこから気持ちを切り替えて、中盤の底でしっかりとビルドアップの中継点という役割を果たしていました。得点にはならなかったのですが、この試合の私的最高のシーンは、失点してから数分後のこのシーン。ビルドアップで最終ラインでじっくりとボールを回して、神村のプレッシングをなんとか交わしながら隙を探し、林君が右サイドの裏のスペースに素晴らしいロングフィード。そこへ絶妙のタイミングで入ってきた松岡君がワントラップ目を最高の柔らかさで自分の進行方向に蹴りだし、そしてそのままダイレクトで中央へクロス。おしくも木戸君には合わなかったのですが、前半には捕まっていた神村のプレッシングをしっかりとしたショートパスで交わし、そして緩急のスイッチを切り替える林君の展開、松岡君のダッシュしている最高スピードの中で発揮したスキルフルなトラップとクロスはお見事。ハリルホジッチがアルジェリアを率いていた時のワールドカップの試合を見ているかのようなあっという間にゴール前に迫る展開で、あれを見れただけでも遠路はるばる行った甲斐がありました。

失点に気落ちすることなく、神村のゴール前に迫っていた鳥栖がついに同点に追いつきます。神村が自陣内でのスローインで、センターバックの選手にボールを送ります。鳥栖としては、疲れのたまっていた時間帯だったでしょうが、格好のプレッシングチャンスということで、全体が押しあがってプレッシャーをかけます。そして、鈴木君がプレッシャーをかけ、センターバックが前線にグラウンダーのボールを送り込んだところを先田君が中央で網にかけて奪いとり、即座に木戸君に送り込みます。ボールを受けた木戸君が、しなやかに反転してセンターバックを交わし、飛び込んでくるキーパー広川君の動きを見て冷静に浮き球でゴールに流し込みました。木戸君のシュートは当然お見事なんですが、先田君のパスもお見事でした。

いやー、本当に、この鈴木君、木戸君のツートップはしなやかな動きで相手センターバックを交わしきってゴール前に迫ってくるシーンが多かったです。スピードでディフェンスを振り切ってゴール前に迫るシーンもあり、カニーヒア(鈴木君)とクラウディオロペス(木戸君)のツートップみたいですね!と言ったのですが、一緒に観戦していた誰にも刺さらなったことを、ご報告いたします(笑)

同点に追いついて勢いに乗る鳥栖が、試合終了間際に立て続けにコーナーキックのチャンスを得ますが、ゴールキーパーの好セーブもあって残念ながら逆転とまではならず。2-2の同点でタイムアップとなりました。

では、今日のハイライトを2本。
前半、林君が、左サイドの裏のスペースへよいボールを送り込み、ツートップのどちらとも行ける位置にいましたが、オフサイドの位置にいた木戸君がボールに向かってしまい、オンサイドの位置だった鈴木君が躊躇してボールに向かわずに中央に行こうとし、そのあと遅れてやっぱりボールに行こうとしましたが、結果的に木戸君が行ってしまったためにオフサイドに。その瞬間、先田君が
「大馳が行けばいいやん!」
という、まあ、まさにごもっともなご指摘が(笑)
こういった言葉だけでなく、試合中もいろいろなコーチングを見せてくれて、先田君はさらに頼もしくなってきたかなと思います。

ハイライト2本目は、ゴールキックからのフィードのシーンで、長いボールの競り合いの際に鈴木君がやや相手との衝突も怖かったのか、やや遠慮する形でロングボールの競り合いに入っていきました。
そうしたところ、小池君から
「ひっこめんな!!」
との声が。
おそらく、競り合いに対する指摘かなと話していたところ、ボールデッドになった瞬間に、小池君が
「大馳!首ひっこめんな!!」
と、再びの声(笑)
『大事なことなので二度言いました』的なありがたいお言葉でした(笑)

試合は引き分けに終わりましたが、両チームともに強度の高い、そしてしなやかでスピードの速い展開のサッカーを見せてくれて、非常におもしろかったです。雨の中、串木野まで行った甲斐が大いにありました。
試合終了後、クールダウンする選手たちが、こちらに頭をさげてくれたのですが、木戸君にナイスゴールと声をかけたところ、素敵な笑顔でペコリしてくれたのが、ものすごく爽やかで印象的でした。あのさわやかさを身に着けたい(笑)
両チームの選手のみなさん、素晴らしい試合を見せてくれて、ありがとうございました。
そして、赤崎君が、すこしでも早く回復してくれることを願っております。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?