見出し画像

昨年4月、私はこのブログで “SDGs未来都市相模原とさがみこファーム” と題する一文を書きました。

今回、相模原市発行の小冊子「さがみはらSDGsまなべるマップ」 の1サイトとして私たちの農園が取り上げられることになったのを機に、SDGsについて再度考えてみたいと思います。(2023年3月11日 山川陽一)
 
早いもので、株式会社さがみこファームで「さがみこベリーガーデン」の事業化に取り組んで4年になろうとしています。
この間、特段SDGsを意識してやってきたきたわけではありませんが、いま改めて見直してみると、私たちが掲げている基本理念、この4年間の活動、これから進もうとしている方向のどれを取ってみても、さがみこファーム=SDGsと言っても過言ではない事業努力をしてきたんだなあと思えるのです。
 
SDGsが国連加盟国の合意事項になったのは2015年でした。世界を持続可能にするために達成すべき17のゴールとそれを実現するための169のターゲットが掲げられ、達成期限は2030年と定められました。
止まらない地球温暖化、化石燃料資源の枯渇など、地球に住む人間たちの従来型営みの延長線上に待っているのは地球の破たんであり人類の破滅であるという危機感から生まれたのがSDGsでした。
 
そんなSDGsが日本で本格的に取り上げられるようになったのはここ2、3年のことです。どの自治体にもSDGsを推進する部署が設けられ、最近は民間企業もSDGsを掲げなければ企業にあらずの感で、一気にブームの様相を呈しています。
 
それでは、さがみこファームのどこがSDGsなのか、具体的に見てみましょう。
 
Goal.4  質の高い教育をみんなに
農園が位置する相模原市緑区青野原に青和学園という公立の小中一貫校があります。その生徒さんたちが年数回農作業のお手伝いに来てくれます。作業内容は、その時々で異なり、園内清掃だったり、防草シートの張替えであったり、ブルーベリーポットの移動作業であったりといろいろですが、作業の後には我々農園スタッフとミーティングの時間を設けています。農園にとっても大助かりですが、学校にとっても、単なる農業体験ではなく、環境のこと、農業のこと、エネルギーのこと、SDGsのことなどが実地で学べる場として高く評価してもらっています。
 
Goal.7  エネルギーをみんなにそしてクリーンに
 いまこの農園ではソーラーシェアリングという形で農地の上部で太陽光から再生可能エネルギーをつくり、下部でブルーベリーを栽培しています。発電容量は272キロワットで一般家庭約80軒分の電気使用量に相当します。ソーラーシェアリングは下部の作物にしっかり陽光が届くよう一定の隙間を空けてソーラーパネルを設置するので、パネルをベタ張りする野立ての太陽光発電所と比べて面積あたりの発電効率には劣りますが、環境にやさしい自然エネルギー発電所です。
 
Goal.8  働きがいも経済成長も
 私たちは担い手がいなくなった遊休農地を借り入れてその再生に取り組んでいます。全国には再生利用が困難な荒廃農地が19.2万ヘクタールもあると言われています。担い手がいないといっても地域に若者がいなくなったわけではなく、農家の後を継いでも食べていけないから農業に従事しないということなのです。そんな場所で業としての農を成り立たせるには思い切った発想の転換が必要でした。それが、ソーラーシェアリングであり、ブルーベリーの養液ポット栽培であり、摘み取り体験農園でした。
社会性を持った新しい事業形態へのチャレンジはやりがい十分ですが、これはボランティアではありません。事業として成り立たなければ継続も拡大もないと肝に銘じて取り組んでいます。
 
Goal.9  産業と技術革新の基盤を作ろう
長い間日本の農業は、国の手厚い保護と規制のもとで、補助金、助成金ありきで進められてきました。つい最近まで一般企業の参入すらまともに許されない別世界でした。これが狭い国土の日本で食を守り農家を守る手段だという認識だったのだと思いますが、結果として国際競争力が失われ、農業人口の減少に拍車をかけてきました。一般企業の競争場裏で生きてきた私たちスタッフがそんな世界へ飛び込んで感じたことは、今まで常識としてやってきたことが全く通用しないもどかしさでした。
ただ、裏を返すと、農業は未開のフロンティアで、やり方次第で大きく変容する可能性を秘めた世界なのだと思います。
 
Goal.11  住み続けられるまちづくりを
地産地消ということばがあります。地場産業ということばもあります。自分たちの発電した電気を地域で使えるようにしたい、この農園に多くの人が集まり、賑わい、活気溢れる場にしたい、地域の人たちや障がい者たちに働く場を提供したい、そんな農園にしたいと思っています。
一気にはできないけれども、そこをめざして努力し、いいまちづくりに貢献できるよう願っています。
 
Goal.12  つくる責任つかう責任
 最近は太陽光発電事業に対する世間の風当たりが強く、同じ太陽光発電事業に携わるものとして肩身の狭い思いをしています。
山を切り崩し、森林を伐採し、緑の田畠を潰して作られた野立ての発電設備や、とても農業とは言えない形だけ作物が作られているソーラーシェアリングを見るにつけ、こんなことをやっていたらダメだと思うのです。
私たちは、安全や自然環境に配慮しつつ、発電事業としても農業としてもしっかり業として成り立ち継続的に機能し続ける形のソーラーシェアリングを、責任をもって作っていきたいと思っています。
 
Goal.17  パートナーシップで目標を達成しよう
 なにをやるにしても自分たち単独ではできません。
地元の人間ではない私たちがこの地で事業を始めようとした当初は「農業のドシロウトに何ができるか」、そんな目で見られていた気がします。4年がたった今、自分たちにむけられる周囲の目もずいぶん変わってきたように感じられます。
地元住民の方々、地域行政のみなさん、設備を建設する事業者、来園者の方たちなど、多様なひとたちとの協力関係を大事にしてはじめてめざす目標が見えてきます。
今後もパートナーとの共栄共存を念頭に目標の達成をめざしてまいります。
 
こう並べてみると、自分たちはあたかもSDGsの優等生のように見えますが、まだまだです。やらなければならないこと、できていないことが山積しています。それを実現するためには、古い法規制や古い慣習、コストパフォーマンスなど乗り越えなければならない多くの壁があって一筋縄ではいきませんが、強い決意をもって一歩一歩着実に進んでいきたいと思っています。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?