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パタゴニアとさがみこファーム

みなさん、パタゴニアという会社ご存知ですか。アウトドア派なら一度は着てみたい、使ってみたいと思うアウトドアグッズのメーカーです。
と言っても、私はパタゴニア社の回し者でも何でもありません。
パタゴニアは、Columbia、The North Face、K2、mont-bell等々、数あるアウトドアブランドのひとつなのですが、いまここでわたしが敢えてパタゴニアを取り上げたいと思った理由は、パタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナード氏が先日「地球が私たちの唯一の株主」と題する声明をホームページ上で公表し、気候変動問題に取り組む非営利団体Hold Collectiveと今回新設したPatagonia Purpose Trustに、本人と家族が保有する発行済み株式のすべてを引き渡したことを明らかにしたからです。同社は今までも売上高の1%を環境保護の活動にあてたり、同社の商品に環境負荷の少ない素材を使うなど地球環境問題に積極的に取り組む会社として知られていましたが、今回の声明は、そんな程度では現在の地球環境の危機は救えないという強いメッセージではないでしょうか。
 
資本主義の社会で株式を全数譲渡するということは、株主が単にその配当を受け取るだけでなく、マジョリティを持った株主が経営の意思決定権を握るということを意味します。もう少し詳しく云うと、Hold Collectiveは株式の98%(無議決権株)の譲渡を受けて配当を継続的に地球環境保全の活動に使うことができ、残り2%(議決権株)を受け取るPatagonia Purpose Trustはパタゴニアの経営陣が利益を確保せんがために株主の同意なく同社の定款上に記されているコンセプトに反した行動に走ろうとしてもそれはNGと言える権利を保有することを意味します。
パタゴニア一社がいくら頑張ってもその一事で世界が変わるわけではありませんが、大きな影響力を持つことは間違いありません。
 
近年は国連総会でSDGsが採択され、世界の多くの国がそこに掲げられている目標に向かって大きく動き始めています。投資の世界でもESG(環境、社会、統治)が企業価値の評価基準として取り入れられ、事業活動の分野ではRE100プロジェクト(再生可能エネルギー100%)が広まり日本はアメリカに次いで多くの企業がその参加を表明しています。
今までもこのような活動がなかったわけではありませんが、従来と大きく違う点は、目標や評価基準が明確に設置されていることと、特定な国や特定な会社や団体の自主活動ではなくそれが世界的なものであることです。
裏返して言うと、それだけ地球環境問題や人間社会自体が抱える問題が危機的状態にあるということなのでしょう。
 
一方、今年に入り、突然のロシアによるウクライナ侵攻が世界の社会・経済に大きな影を落としています。そのあおりを受けて下火になっていた化石燃料や原子力発電が息を吹き返し、火力発電設備の増強や原発の再稼働や新設が国のテーブルに上がっています。背に腹は代えられないということなのか、最近の世論調査では東日本大震災後はじめて原発再稼働を許容する意見が反対意見を上回ったと報じられています。
 
私たちは、創業以来、SDGsやESG、RE100などを別段意識して行動してきたわけではありませんが、結果として完全にそれらの考え方にコミットした事業活動をしてきました。
まだ生まれたばかりのヒヨッ子で私たちの言動や行動がパタゴニアのように社会に影響を及ぼすなどということは夢のまた夢ではありますが、いつの日か日本のパタゴニアと呼ばれるようになりたいと願っています。
 
いくら強い想いがあっても、実を伴わなければ絵に描いた餅です。パタゴニアの企業価値は約30億ドル(約4,300億円)とされています。そんな企業の創業者の声明だからこそ大きな説得力を持って世界中から受け入れられるのです。

パタゴニアとさがみこファーム。いまは比較の対象にもなりませんが、早くこの事業を軌道に乗せることで、小さいなりに実を伴った事業体として胸を張って発信できるようになりたいものです。
                   (2022.10.15 山川陽一)

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