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在宅勤務が困難な時はサテライトオフィス勤務を選択することができる。それがテレワーク

〇「テレワークと育児の両立がムリゲー」なのか?
もともとテレワークは育児の両立支援策として位置づけられていたが、昨日(2021年4月4日)配信の日刊SPA!の「テレワークと育児の両立がムリゲーすぎる。『絶望』する夫婦たち」との記事は「テレワークと育児の両立がムリゲーすぎる」とテレワークを断罪した。今朝、この記事を読んで正直イラッとした。

我が国で新型(略)の蔓延が始まってから、丸1年が経過した。リモートワークが推進され、出社する機会が減るなど、ライフスタイルそのものがまるっきり変化。おうち時間が増えるなかで新しい趣味を見つけたという人もいるはずだ。それを当初は歓迎したが、今となっては「絶望」と感じている人たちも少なくない。(日刊SPA!、2021年4月4日配信)

テレワークと育児の両立がムリゲーすぎる。「絶望」する夫婦たち(日刊SPA!)

〇改定テレワークガイドラインとサテライトオフィス
日刊SPA!にはテレワークの難しさ、特に子育て世代・夫婦が在宅勤務をするときの難しさばかりが列挙されているが、解決策などが全く記事には書かれていない。

厚生労働省の改定テレワークガイドライン(2021年3月25日公表、正式名称「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)を記者は読んでいないのか。改定テレワークガイドラインには次のように書かれている。

テレワークを行う作業場が、労働者の自宅等事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、事務所衛生基準規則(昭和 47 年労働省令第 43 号)、労働安全衛生規則(一部、労働者を就業させる建設物その他の作業場に係る規定)及び「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日基発 0712第3号)は一般には適用されないが、安全衛生に配慮したテレワークが実施されるよう、これらの衛生基準と同等の作業環境となるよう、事業者はテレワークを行う労働者に教育・助言等を行い、別紙2の「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト(労働者用)」を活用すること等により、自宅等の作業環境に関する状況の報告を求めるとともに、必要な場合には、労使が協力して改善を図る又は自宅以外の場所(サテライトオフィス等) の活用を検討することが重要である。(「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」抜粋)

ほとんど報道されていないが、改定テレワークガイドライン重要ポイントの一つが「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト」が添えられており、事業者はテレワークを行うテレワーカーに教育・助言等を行い、「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト(労働者用)」を活用することなどにより、自宅等の作業環境状況の報告を求め、「必要な場合には、労使が協力して改善を図る又は自宅以外の場所(サテライトオフィス等) の活用を検討することが重要である」ということ。

つまり、在宅勤務が困難な時はサテライトオフィス勤務を選択することができる。それがテレワーク。

改定テレワークガイドラインによると、サテライトオフィスは「シェアオフィス、コワーキングスペースを含む」とされている。このサテライトオフィスの活用が絶望的と思えるほど行われていなし、知られていない。

改定作業が遅かったテレワークガイドライン
厚生労働省の改定テレワークガイドライン(テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン)は、3月25日に公表されたばかりで、まだ周知徹底されてないのは当然かもしれない。だが、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」であるとするなら、改定が遅すぎたということは言い得る。

改定テレワークガイドラインは厚生労働省の有識者会議「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」で議論された。この検討会は昨年(2020年)8月から12月まで全5回開催され、12月25日、厚生労働省は「これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書」を公表した。検討会の設置も遅いし、報告書の公表も遅い。

また「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」は、報道機関のみが傍聴可能だ。だが、一般人の傍聴は許されていない。そのため、新聞等が詳しく報道しない限り、私たちはリアルタイムで知り得ない。

もちろん詳細な議事録は後日、公開されるが、膨大な議事録を全て読むことは困難。毎回、検討会を傍聴して重要な発言がどのあたりで誰からされたかをわかっていないと難しい。だから、もう少し早めに中間報告でも出して公表できなかったものか、残念だ。

〇指針としての改定テレワークガイドライン
指針として改定テレワークガイドラインを位置づける新聞報道もある。しかし、このテレワークガイドラインは労働基準法などの法律の規定を根拠とした指針ではない。指針には、法律の規定を根拠とした指針と法律に根拠規定がない指針があるが、テレワークガイドラインは後者になる。

法律に根拠規定がある指針であれば、労働政策審議会で議論されてから諮問答申され、パブコメ(パブリットコメント)も実施されるので、改定作業に日数がかかる。だが、テレワークガイドラインは法律に根拠規定のない指針だから、労働政策審議会の分科会に報告されたのみ。

改定テレワークガイドライン(案)は労働政策審議会分科会(雇用環境・均等分科会、安全衛生分科会、労働条件分科会といった3分科会)では報告事項として議案にあげられていた。

報告だから承認ではなく了承するだけであったが、育児・介護だけではなくセクハラやパワハラ等のハラスメント問題などを審議する「雇用環境・均等分科会」では質問・意見が多く出て、テレワークガイドライン改定案は一部修文されたそうだ。

そういう改定案の修文作業ということもあったが、それにしても、もう少し早く改定テレワークガイドラインを公表して、企業や社員、また法人や職員に周知することはできなかったのだろうか。

テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省ホームページ)