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【万葉集】ひさかたの(巻八・一五一九 山上憶良)

ひさかたの天の川瀬に船浮けて
今夜(こよひ)か君が我許(わがり)来ませむ
(巻八・一五一九 山上憶良)

【解釈】

美しい天の川の瀬に船を浮かべて、今夜こそはあなたが私のところへいらっしゃるのかしら。

今年も七夕がやってきました。
万葉集の巻八、「山上臣憶良の七夕の歌十二首」の中に収められている歌です。

七夕の歌としてはふつうというか、まあシンプルで分かりやすい歌ですね。

この歌の直前に入っているのは「あなたが来るから腰紐を解いて待っているわ」なんていうアダルトな歌(解説はこちら)なので、次はどうなるのかと読み進めると拍子抜けしてしまうかもしれません。

でも、そんな直球でつやっぽい歌の後に続くのがこんなにふんわりとしたロマンティックな世界、というのも何だか素敵です。

天の川の瀬に船を浮かべる、というだけでもう幻想的。

一年も待ち焦がれた恋しい人が私のもとへ来てくれる、という舞台装置としては充分すぎるほど美しいと思います。

飾らない言葉で語るからこそ、なかなか会えない恋人に再会する瞬間の気持ちの高まりがリアルに伝わってくるのかもしれません。

猛暑も過ぎて、少し落ち着いた気候になりました。

今夜の七夕は、2人が甘い時間を過ごせていると良いですね。


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