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物語は現実を変えれるのか?

 『宇宙兄弟』の中で、ALSの新薬開発につながる発見をせりかがするシーンがある。そのシーンを描き始める前に、小山さんから相談をうけた。

 「現実には難病のままで、新薬開発の目処がたっていないのに、マンガの中で解決してしまったら、患者の人は無責任なことを描かないでほしい、自分たちの病気の大変さをわかっていないと思うのではないか」という趣旨だった。

 それに対して僕は「『ドラえもん』を読んでロボット研究者を目指す人がいるように、『宇宙兄弟』を読んで薬の研究をする人だっているかもしれない。マンガの中で描くことで、勇気を与えれると思いますよ」というようなことを答えた。

 編集者とは、マンガ家の頭の中にある世界を、本にするのを手助けする仕事なのか?

 それとも、マンガ家の頭の中にある世界を、現実にするのを手助けする仕事なのか?

 僕は、後者のほうがずっと面白い仕事だと思う。

 物語が多くの人の心に届いたのなら、その延長線を現実に用意したらどうなるか? 『宇宙兄弟』の読者の多くの人は、ALSがなくなることを、せりかのように望みながら読んだはずだ。その気持ちが、熾火のように、みんなの心の中に眠っている。それに自分で火をつけることができない。でも、誰かが手助けをすれば、その熾火は燃え盛る炎になるかもしれない。そして、その炎は、社会を動かし、現実を変えるかもしれない。

 僕は物語には、現実を変える力があると信じている。いや、物語がないと現実は簡単には変わらないと考えるくらい、物語の力を信じている。

 そして、『宇宙兄弟』は現実を変える力があると思っている。だったら、『宇宙兄弟』によって現実が変わる様子を気軽に待つのではなく、積極的に変えていこうではないか。

 コルクのメンバーの黒川がこの思想に賛同してくれて、ALSの患者さんたちと協力して、ALSの新薬開発研究に寄付をするための「せりか基金」を立ち上げた。

 ムッタがいる世界の中では、せりかが、ALSの新薬開発に重要な役割を果たす。

 僕のいる世界の中では、「せりか基金」が、ALSの新薬開発に重要な役割を果たす。そんなパラレルワールドを実現できたら、どれだけ楽しいだろう。

 「せりか基金」の詳細はこちらから。

 寄付はこちらから。

 アメリカでは、有名なNFLの選手がALSになり、自ら募金活動をしている。その様子を収めたドキュメンタリー『ギフト 僕がきみに残せるもの』は、今年の夏に公開予定なのだが、「せりか基金」の関係で、一足先に見せてもらった。すごく感動的な映画で、生きるということについて考えさせられた。また、公開が近づいたら、映画の詳しい感想を書こうと思う。

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