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cakes一連の件についてのお詫び

一連のcakesの問題に関して、関係するみなさま、クリエイターの方々に対して、大変申し訳なく思っています。深くお詫び申し上げます。


お詫びと言いながら、まず、お願いにもなって大変心苦しいのですが、どうか弊社の社員についてのご批判はご容赦いただければ幸いです。

育成の仕組みであったり、こういう事態でも適切な判断をできる体制をつくれていない私に、すべての責任があります。


現在、cakesに寄稿いただいているクリエイターのみなさん、そしてnoteをお使いのみなさんにも、会社の姿勢が問われている状況だと思います。

会社の代表として、いまなにを考えているのかを、少し長くなってしまうかもしれませんが、書きました。読んでいただければ幸いです。

ちょうど20年前に出版社に就職して以来、私はずっと編集者をしてきました。

なぜ編集者になったのかというと、自分自身がコンテンツに救われた経験をもっていたからです。

体も弱く、友達も少なく、周囲になじまない田舎の少年だったぼくは、本や雑誌の中のゲームやコンピュータの世界に、文字通り救われました。

自分と同じだ。話があう人がいる! そんな記事をみつけた時に、疎外感があった自分の環境の中で、僕は、ひとりじゃないんだ、と思えた瞬間をよく覚えています。

のちにこの仕事をするようになって、クリエイター側にも似た側面があることを知りました。声をあげて自分の立場を表明し、世に問う。うまく伝われば、仲間ができて、居場所が生まれます。

編集者というのは、「本をつくる仕事」のように思われがちですが、私は、クリエイターの想いを、世の中に届ける手伝いをする仕事だと思っています。

本はあくまでも想いを伝えるための手段です。だから、つくる過程だけではなく、どうやって読んでもらうのか、どうやって売るのか、映像への展開はどうするのか、など幅広い段階に関わります。クリエイターの想いを広く届けるために伴走する。それが編集者だと思っています。


私は、そんな編集者になりたいと思い、出版社で雑誌や本を作ってきました。その後、ネット時代が進むにつれて、クリエイターのみなさんが自由に発信して、共感するファンと出会え、ちゃんと生計を立てられるような仕組みが必要だと強く思うようになりました。

ネットのテクノロジーとクリエイティブの力を使えば、メジャーなひとだけでなく、どんなひとでも発信できて、仲間がつくれる、まったくあたらしいサービスが可能になるはずだ。

そんなことを考えて、9年前に起業しました。


そして、まずcakesが生まれました。

実は、私は、cakesを「メディアのプラットフォーム」にしようと思っていました。

ですから、最初から複数の出版社やウェブメディア、そして数は少ないですがプロの著者さんなどにも編集画面の権限をお渡しして、参加してもらっています。

当時はめずらしいサブスクリプションの仕組みも最初から備えていて、有料購読売上の6割を、読まれた量に応じてクリエイターに配分する仕組みをつくりました。

プラットフォームとして、当初はcakes編集部のコンテンツの割合が大きくても、メディアやクリエイターの参加者が増えるに連れて、編集部の割合は減っていって、数年以内には個人の参加もできるようにして、ネット全体の創作のインフラにしよう。

あらゆる種類のコンテンツがそろって、適切なリコメンドをして、すべてのひとにフィットしたコンテンツが表示されるようにしよう。課金もできるから、自分が好きなことを熱量込めて書けば、仲間が見つかって、継続して創作ができるようになる。

そんな目論見を持っていました。

ここまで読んでお気づきのひともいるかもしれませんが、つまりこれは、noteのことです。

まだnoteもその途上ではありますが、私達がnoteで理想としているイメージは、そういう、インフラ施設のようなものです。


cakesをはじめて1年後、追加の開発をはじめました。しかし、いろいろ検討した結果、やっぱり別サービスとしてつくったほうがいいことがわかり、それで2014年にリリースしたのが、現在のnoteです。

それに伴い、cakesは、cakes編集部のコンテンツの割合が6割くらい、出版社や著者のコンテンツが4割くらいになり、みんなが表現する場であるプラットフォームから、よりメディア寄りに立ち位置をシフトしました。

この状態になった時、みなさんもご承知の通り、大きな課題がありました。

メディアのような存在になっていったのに、既存のメディアのような厳格なチェック機構がなかったことです。

cakesは当初、プラットフォームとしてつくられたため、出版社やウェブ媒体の提供するコンテンツについては、細かく内容をチェックするといったことはしていませんでした。

cakes編集部の最初の数年は、私が編集長でした。メディアの創刊時の考え方としては異例なのですが、私は扱うべきテーマを「決めない」ことにしました。通常、雑誌などの創刊時は、テーマと読者を厳密に決めます。

でも私は、せっかくネットでやるのだから、ページ数に制限はないわけで、ジャンルはなんでもOKにしようと考えました。それこそが私達が目指す、多様性を重視する姿勢だと考えていたのと、後にnoteのような、誰でも自由に参加できる場所=「プラットフォーム」にするつもりだったためです。

ただし、やってはいけないことを、ひとつだけ決めました。それは「悪口禁止」です。前向きでおもしろいものだけを載せよう、と決めたのです。

インターネットは、仕組み上、悪口があふれがちです。悪口というのは、かんたんに言えて、(残念なことですが)おもしろくて、結果、ページビューも増えるので、ネットのエンジンでもある広告と、非常に相性がいいのです。cakesは課金して購読してくれる読者のための場所なので、それは禁止にしました。そうすれば、既存のインターネットと、まったく別の世界できるだろうと考えました。

数年後、noteの運営に集中するために、私は編集長を他のメンバーに引き継ぎました。

この時点でcakesの実態は、メディアプラットフォームから、通常のメディア寄りにシフトしていました。それなのに、十分なチェック機構を備えた、より責任あるメディアの方向に体制をシフトしなかったことが、いまの問題を引き起こしています。

これは、私に経営者としての判断力があれば、避けられたことです。
そして次々と炎上していること、対処に時間がかかっていること、本当に申し訳なく思っております。

さまざまなご意見、ありがたく拝見しています。

こんな状態なのに、信じて使い続けてくださっているみなさんにも、深くお礼を申し上げます。言葉では表すことができないくらい感謝しています。

「だれもが創作をはじめて、続けられるようにする」

これは、note社のミッションです。
思っていることを書けば、それが届くべき人に届く。
考えていることを発信するだけで、
仲間ができたり、仕事につながることもある。

その基盤になるプラットフォームを作る。
創業して9年。やろうとしていることはずっと変わっていません。
そして、これからも変わることはありません。

見守っていただければ幸いです。がんばります。


加藤貞顕

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