はたやノート
小説は若者のものですか?
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小説は若者のものですか?

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小説現代長編新人賞の講評を読んでいると、こんなコメントがありました。私はこれに反発いたしましたが、ひとつ考える余地はあると思いましたので、書いてみました。

中高年がロマンティックな、悪くいうなら、いつまでも子供でいたいことを夢想する小説を書くのはあまり評価されない。

最初にこれを読んだとき、「年齢差別なんじゃないの?」って思いましたね。中高年がロマンチックな小説を読み書きしているところを想像すれば、気持ち悪くなるかもしれません。でも、小説を読んでいる最中に作者の姿を想像するなんて、おかしいですよね。

最近、どの賞でも若い書き手が新人賞を受賞していますけれども、上記のコメントにあるような見方をすれば、中高年の書き手が不利になるのはいうまでもありません。若者を主人公にした小説を書くという企画段階で、中高年は若者と同じスタートラインに立てないのです。

若者が若者向けの小説を書けば有利になることは否定しません。確かに、学校の廊下がいまと昔とで違いますし、学習内容も大きく変化しているため、これは仕方がありません。年代が近いから分かる価値観もあるでしょう。けれども、それに引きずられすぎるのもどうかと思います。

若者と異なる価値観だから見える若者像があってもいいのではないでしょうか? 説教臭い作品は私も勘弁ですけれども、若者の“外れ値”にあるひとたちを描いた作品はだっていいはずです。いや、そうした“外れ値”の人々を描くことこそ小説の肝であると思います。そもそも最大公約数的な若者を主人公にする作品ばかりの現状に対しておかしいと誰かが気づくべきなんじゃないでしょうか?

また、中高年はいったい何を書けばいいのか? という問題も出てきます。中高年を主人公にした作品があまり世に出回っていない=マーケット的に魅力ではない状況下ではこれは死活問題です。小説に限らずテレビドラマなどにも通底する問題であるのですが、これを解決せずに、「中高年は若者向け小説を書くべからず≓中高年は中高年向け小説を書くべき」と主張する出版社の態度はあまりに冷たいんじゃないでしょうか?

小説だけを読んでほしいと思う中高年の書き手にとってはこれって結構つらいコメントだと思うんです。「おじさん構文」のような文章のスタイルの問題じゃなくて、文章を書くときのスタンスの問題ですから。直せといわれてもなかなか難しいでしょう。

私はサラリーマンですので、サラリーマンを主役にする小説は書けます。でも、それって、経済小説かおじさんの夢物語ぐらいにしかならないんですよね。そこの市場を開拓することに魅力があるとは思えないんです。

そんなに中高年が若者を主人公にする小説を嫌うのなら、編集者さんから中高年を主人公にした小説のアイデアを出してもらいたいですよね。

最後に、引用したコメントについて、もうひとこと。「いつまでも子供でいたいことを夢想する小説を書く」のは年齢を問わずよろしくないでしょう。そこにひとひねりあるなら別ですけど。

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せうせつを書いています。見ての通り、横浜F・マリノスを応援しています。関西人です。 新人賞に落ちた作品のあらすじとステートメントなどを載せるつもりです。(11月予定) それまでは、文学や芸術について書きます。