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登山とオリエンテーリング

 これはオリエンテーリングAdvent Calendarの12日目の記事です。他の記事はこちらhttps://adventar.org/calendars/3434

 皆さん初めまして。東工大OLT40期の櫻井という者です。大した実績があるわけではないですが、楽しみに読ませてもらっているアドベントカレンダーに空白が生まれるのは寂しい、少しでも力になれたらと筆を執らせていただきます(ほんとはただ山について語りたいだけ)。オリエンティアの中には登山やトレランを始めた人がそこそこいるなという印象がありますが、私は登山からオリエンに入りました。登山では環境保護と安全のため、道を外れて歩くのは基本的にご法度です。そのため、オリエンで道なき山中に飛び出していくのには最初は抵抗が強かったものです。そんな私も今はすっかりオリエンにはまっていますが、登山も相変わらず好きでむしろそっちの熱も上がっています。この記事では高校の山岳部で取り組んでいた“競技登山”の説明と、登山はいいぞという話、トレーニングとしての登山の話をしようと思います。競技登山の説明は多分長いのでとばしてもらっても構いません。

競技登山とは

 まず登山の競技なぞあるのか、トレランのことか?という方がほとんどかと思いますが、いわゆる登山を競技化したものは存在します。以前は国体でも競技として存在したようですが、現在では高校総体、通称インターハイの種目に残るのみです。(注:ボルダリングなどを除く) 
 では具体的にどのように競うのか説明していきます。まず競技期間は3泊4日程度、テントを張って野営し、毎日山に登ります。4人1チームで参加し、持ち点100点からの減点方式で点数の高さを競うことになります。100点は以下の表のような内訳になっています。(注:これはインターハイでの配分であり、各都道県大会では異なることも多いと思います。)

はい、細かいですね。そして驚くべきことに筆記テストが含まれています。運動部の大会で筆記テストがある種目を私は他に知りません。しかし、これを見れば登山にかかわる“すべて”を総合的に競うことがわかっていただけると思います。ちなみに3種のテストと天気図作成をメンバーで分担し、私は天気図担当でした。
 ざっくり各項目を説明していきます。記憶違いなどあるかもしれませんがご了承ください。
体力
登山に堪える体力があるかを見ます。登山中前のメンバーから1m以上離れると減点。前のチームから5(?)m以上離れるとさらに大減点。疲れた顔をしていると減点されるといううわさも。
 歩行
安全に登山できる歩行技術があるかを見ます。足を滑らせるなどすれば減点。岩場でグローブをつけていないと減点。など
 装備
登山に必要な装備を持っているかを見ます。抜き打ちでこの装備を出せと言われる。事前に必要装備表は公開されている。
 設営・撤収
テントを10分以内に決められた枠内で安全に設営できるかを見ます。ポールが枠外で飛び出したら減点。ペグを打つ時に軍手をしていないと減点。テント内にザックをきれいに整列させないと減点。など。撤営はあまり見られなかったような気がする。
 炊事
計画通りに安全に十分な栄養価の食事を用意できるかを見ます。刃物やバーナーの扱いがまずかったら減点。レジャーシート等敷いたうえで作業しないと減点。など
 気象
山で的確な判断を下すための気象知識を問います。テストは観天望気についてなどだった気がしますが覚えてません…。天気図はラジオの気象通報を20分聞き、20分で仕上げ、翌日の天気を予測します。下の画像は昔書いた天気図です。

 自然観察
山の中で求められる観察技術、知識を問います。テストでは開催地周辺の地理、地誌、一般的な地形などに関する問題が出ます。読図は登山経路上に番号の書かれた札があるので、その場所を地図上に落とし込みます。誤差は半径1mmまで許容されます。
 記録・計画
事前に不足のない計画が立てられているか、登山中の出来事をしっかり記録できているかを見ます。計画書は事前に作ってきたものを提出します。行動計画、食糧計画、装備表、概念図などを書きます。記録書はチェックポイント間ごとに植生、天気、登山道の様子、メンバーの体調などを記録します。
 救急
けがをした時などの対応力を見ます。テストでは応急手当の方法や熱中症対策などについて聞かれます。医薬品は必要なものを持ってきているかを見ます。もちろん使用期限を過ぎていたら減点です。
 マナ―
登山者としてのマナーを守れているかを見ます。他の登山者に迷惑をかけたり、ポイ捨てをすると減点されると思いますが、ほぼ減点されているのを見たことがありません。

 以上のような方式で点数が付けられていきます。さて、ここまで読まれた方は前と1m以上離れたとか、どう減点するのかと思われたかもしれません。簡単な話、審判が見ています。登山経路中の結構な頻度で、藪の中や曲がり角の向こうで審判が見ています。ちなみに私は審判の目の前で足を滑らせ、バランスを取るために1回転し、「ちょっとバレエの練習をね」などとほざいたところで審判と目が合い死にたくなりました。山ではテンションを高くするのは大事なんですけどね…
 このように期間中いかに減点されないかに心を砕くのが競技登山と言えるでしょう。と、こう書くと何が楽しいんだと思われるかもしれませんが、それでもこれに挑んだのは腐ってもインターハイという名前の魔力だったのかもしれません。(楽しいとは言ってない) 
 競技人口はどの程度いるのか。ご想像の通り少ないです。各都道府県大会の優勝校が参加できるわけですが、都大会では出場20チーム程度で、優勝を狙っているのは5チーム程度だった気がします。競技登山をしているとはいえ、その取り組み具合は様々です。ただ全国では強豪校というのが存在して、インハイ上位にいつも入っています。おそらくきちんとした指導や伝承が行われているのでしょう。

競技登山で得たもの

 この高校での経験が今のオリエンに生きていることはいくつかあります。まずあげられるのは体力面でのアドバンテージです。長期の山行となれば装備重量は20㎏を越え、1日6時間、獲得標高も1000mに達するほど歩くこともあります。そのための体力を普段の部活動で鍛えており、私の出身部活では長距離のランニングはもちろん、重りを入れたザックを背負ってのランニングや階段昇降を行っていました。これはロング競技や、登りでの速度維持につながっていると感じています。次に不整地での安定した走行です。山では道とはいえ木の根や石、岩によって不安定な足場を、重い荷物を背負って歩くことになりますので、少しでも安定した場所に足を置くようになります。この経験が下りや倒木ハッチの中での足の運びに活きています。あとケガをしづらくなっているかもしれません。後はオリエンを始めた最初だけの利点となりますが、基本的な地図の見方がわかっていたことです。所詮常に登山道にいる前提での読図ですが、尾根と沢ぐらいはわかりますし、等高線のイメージも多少はできたと思います。しかしこれはMFクラスにおいては大きなアドバンテージであり、おいしい思いができました()。このように競技登山経験者をオリエンティアにできれば強くなる可能性は高いと思います。実際OLTのOBにも競技登山をしていてインカレで活躍した方達がいます。というわけで大学クラブの皆さん次の新歓では頑張りましょう!(競技登山経験者は絶対数が少ないですが…)

山はいいぞ

 さて森や山をフィールドとしたスポーツとしては、登山、トレラン、オリエンテーリングがあげられると思います。それぞれに魅力がありますが、それぞれの良いところを組み合わせることでより楽しむこともできると思っています。また、トレーニングという面でもいいフィードバックを互いに与えられると考えています。
 それぞれの魅力を個人的に書き出してみます。(注:山は走っていますがトレランの大会に出たことはないです)
オリエンの魅力
・高度なナビゲーション
・荷物を持たない
・整備されていない自然の中に飛び込む
・遭難の危険が(比較的)少ない
・短時間で終わる(参加しやすい)
トレランの魅力
・あまり考えずに走れる(爽快)
・荷物が軽い
・長い距離を短時間で移動できる
登山の魅力
・装備があれば長期間山にとどまれる
・高い山の山頂に立てる
・ゆっくり風景を楽しめる
こんな感じでしょうか。これらを組み合わせると次のような姿になるかなと思います。野営できる軽めの装備を持ち、バリエーションルートを読図しながら走れるところで走る登山。形としてはULトレッキングに近いと思いますが、オリエンを経験してしまった身としてはナビゲーションをもう少し取り入れたいなーという気持ちがあります。そんな気持ちに見事応えてくれている一つの例として、OMMという大会があります。

簡単に言うと二人組で1泊2日の野営装備を持って、1日20km程度のコースでオリエンをするものです。こちらの記事http://orien-advent.hatenablog.com/entry/2017/12/09/182434
とか参考になるかもしれません。(気軽に参考にできるものではない) オリエンティアも参加していて活躍しています。(むしろ圧勝している)
 個人的にはこんな感じのことをもっとやりたいと思っています。

融合的なトレーニング?

 もう少しオリエンと関連させて、トレーニングとしての登山を見ていこうと思います。基本的には競技登山から得たものと被るのですが、体力強化と不整地での走行安定を図れると考えています。長距離、長時間、多い獲得標高、場合によっては低酸素での登山が自明に体力をつけることは分かると思います。また程度の差はあれ登山では荷物を背負いますから、それが負荷となって筋力や体力の強化を効率良くします。さらに荷物を支えるために体幹もつきますし、軸のぶれない移動が身につくと思います。とはいえ、これらは平地でのトレーニングでも身に付きますし、テレインに入って走ったほうが不整地踏破力もつくかもしれません。正直に言って私が山が好きだから、オリエンではなく登山をすることを正当化したいだけかもしれません…
 では読図に関してはどうでしょう?登山の時に使う地図は基本的に国土地理院の1:25000の地形図になります。もちろんO-Mapのような藪や植生界の情報はなく、何より等高線間隔が10mです。理屈上±9.9mまでの変化は等高線に現れません。微地形の描写など望むべくもありません。そんな地図を読むことに何の意味があるのか。
 前述のOMMはその1:25000の地形図をベースにした地図でやることになります。私はそれに出場することで大局的な地形の把握が上達した気がしています。地図上では等高線の本数が少ないのでその1本1本の形の意味をよく考えるようになります。また実際の地形に対してはより大きな地面の形に目をやるようになります。

上の地図はOMMの物です。4ポはピークの西となっていて、地図上でもそう読めます。しかし実際のピークは東西二つに分かれていました。一番上の等高線の形を見るとひょうたん型にくびれているのがわかります。そのことからくびれの部分が鞍部になっていることが読み取れるわけです。
 1:25000の地図を手に山を歩く、特にバリエーションルートを行く場合は微地形にとらわれない読図能力を鍛えられるのではないかと思います。今年の第7回KOLC大会が開かれた筏場のようなテレインでは有利かもしれません。(地図から読み取ることが難しいですが)

実践

 以下は実際に山でバリエーションルートを歩いたときのGPSログです。

これは滋賀の武奈ヶ岳という場所です。これは読図というよりか体力強化の面が大きいですね。ざっくりアップ900m、2時間登り続けました…。尾根沿いを登っていくだけなので大したナビゲーションではないですが、広い尾根の傾斜変化や方角の変化で現確をしながら進みました。
 次は1:25000の地形図があまりあてにならなくて危険なこともあるという例です。

上は東京の雲取山周辺のものです。主稜線沿いの道から沢に下っていく道に乗るために下ったのですが、実際そこに登山道はなく下の登山地図の表記の位置にありました。その時は使われな過ぎて廃道になったのかと思って痕跡を頑張って探したのですが見つからず、尾根上を藪漕ぎする羽目になりました。ナビゲーションという点では道がないのは良い練習になったかもしれないですが…。これからは地形図にできるだけ情報を補完してから山に入りたいところです。

まとめ

 気が付けば5千字を超えていてびっくりしているところですが、いい加減締めようと思います。色々と登山はオリエンに役に立つなどと言ってきましたが、そんなことより登山やトレランは楽しいです。もちろん安全のために様々な装備をそろえなくてはいけないですが、野山を楽しむ1つの方法として手を出してみてはいかがでしょうか。本音のところを言ってしまうと一緒に山に行ける人が欲しいです()。コースタイムの半分くらいで一緒に行ってくれる方募集してます()。


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