大晦日の夜【掌編小説】

大晦日の夜。

こたつに大人達が集まって年を越そうとしている。

まだ子供だった、兄、私、弟は、除夜の鐘を聞こうと意気込んでいたものの、早々に寝床で布団をかぶってしまった。

眠い目をこすりながら小便に立った私は、障子の向こうで親戚の誰かが父と母にこう言ったのを聞いた。

「子供の内で、誰が一番かわいいか?」

父は田舎のオヤジらしく「長男だ」と言った。

母は優しい声で「やはり末の子がかわいい」と言った。

私は用を足さずに引き返し、一月一日を寝小便と共に迎えた。

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