ヨシカワサチコ。

大阪出身。奈良在住。実体験を元に短編小説/エッセイの類を、趣味程度に書いたりしています。

ヨシカワサチコ。

大阪出身。奈良在住。実体験を元に短編小説/エッセイの類を、趣味程度に書いたりしています。

マガジン

  • 短編小説 〜あの日にかえりたい〜

    長い人生の中では「あの日にかえりたい」と思う日が誰にもきっとあるでしょう。その時、自身を慰めてくれるもののひとつとして、この小説が機能すれば嬉しい。

  • 短編小説〜あの日にかえりたい〜【番外編】

    【本編】〜あの日にかえりたい〜を読んでいただいた方々へ。より楽しんでいただければ…と後に加筆しました。当時の記憶を呼び覚まし、イメージの中で 描きました。 ◇サヨと秀人が再会する1年前のお話。 ◇秀人からサヨへの感情の変化の経緯。 ※短編小説 〜あの日にかえりたい〜本編をご覧になってない方には、内容がわかりづくなっています。まずは本編をご覧になってくださいね。

  • 短編小説〜あの日かえりたい〜【特別編】

    【七夕の夜の再会を、秀人目線で描いてみました】 ※短編小説 〜あの日にかえりたい〜本編をご覧になってない方には、内容がわかりづくなっています。まずは本編をご覧になってくださいね。

  • 小さな自叙伝。

    2020夏至までにやる!と決めて、やっていた 『1日に1年ずつ、自分の人生を振り返る、ワーク』を元に、ゆるゆると書きはじめました。

最近の記事

02.もうひとつの、失われてしまった風景

私の実家の辺りはかつて こじんまりとした 商店街でした。 アーケードはなかったのですが、花電気のような物が道路の両側の電柱にくっついていて 北から南にながーく、商店が立ち並んでいました。 ちょうど私が物心のついた頃の記憶では 実家の右隣がカウンターだけの小さなお寿司屋さんで、左隣は本屋さん、 またその隣に酒屋さん、印刷工場、天ぷら屋さん、 ヘアーカットのお店に、精肉屋さん。 (ここのコロッケが美味しかった!) 精肉屋さんの倉庫には、毎週トラック売りの花屋さんが来ていて

    • 01.私の生まれ育った場所。

      私の地元は、大阪の "だんぢり祭り"で有名な 「岸和田市」の下野町(しものちょう) というところで、 江戸時代、紀州のお殿様が参勤交代で江戸に向かう際に通ったと言われている、 「紀州街道沿い」に実家があります。 江戸時代のその自邸は 岸和田藩の勘定方で、 目の前を大名行列が通っていくのを よう見送っとったらしいで、と 小さい頃、近所のおじさんから聞いたような… 微かな記憶があります。 お婆ちゃんの娘時代 その紀州街道の3本筋向こうはもう大阪湾で よく走って海を見

      • 〜あの日にかえりたい〜【特別編】 眠れぬ、七夕の夜。

        ※短編小説 〜あの日にかえりたい〜本編をご覧になってない方には、内容がわかりづくなっています。まずは本編をご覧になってくださいね。 ・・・ サヨさんが東京に来る、と聞いたのはちょうど 一週間前だった。 由美の提案に、卓さんが乗り、吉行まいこが大喜びで、段取りをしたという。 もう会わない、と思っていた俺は 内心、焦っていた。 でも、逃げるわけにもいかない。 "秀人に会うのも久しぶりだから、楽しみ!って、サヨが言ってたよ"と 由美が伝えにきて その横で 卓が

        • 【番外編・その❻】本音。(2011.11.2/秀人)

          その直後。 オフィスの入り口付近がざわざわっとした気がして、窓から路上を見やっていると、数分後にはエレベーターのランプが点灯し、 おはよー!と、他の社員たちが出勤してきたので 話が続けられなくなってしまった。 大阪土産をみんなにシェアしつつ、少し談笑した後に、有休をとっている亜矢と俺の2人は お邪魔虫扱いされ、オフィスを出る。 亜矢が、夜のパーティの準備のための買い出しにこれから行くというので それなら車だすよ、と提案した。 ネタにする魚介 数種類に、塩や酢などの

        02.もうひとつの、失われてしまった風景

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        • 短編小説 〜あの日にかえりたい〜
          6本
        • 短編小説〜あの日にかえりたい〜【番外編】
          6本
        • 短編小説〜あの日かえりたい〜【特別編】
          1本
        • 小さな自叙伝。
          0本

        記事

          【番外編・その❺】秀人の帰京。(2011.11.2/亜矢)

          "秀人さん…!" 東京駅西口改札を出たところで、愛しの先輩を見つけた亜矢は、 ついつい、はしゃいだ声で彼を呼ぶ。 "大阪出張、お疲れ様でした。 …なんだか、眠そうですね?" 顔を覗き込むと、秀人は乱れた前髪を軽くたくし上げて、そう?と言う。 "大阪ではあんまり寝れてなかったんよなー…。 東京が長くなってくると、 なんか、こっち帰ってきた方が落ち着くわー… こっちがHOMEって感じする" 東京都出身で、東京から出たことがない亜矢にとってそれは、とても嬉しい告白だ

          【番外編・その❺】秀人の帰京。(2011.11.2/亜矢)

          【番外編・その❹】決意の新幹線。 (2011.11.2/秀人)

          滞りなく、大阪での任務が終了した。 この先、こちらに来る機会はあまりなくなるだろう。 サヨさんとももう、会うことはないかもしれない。 昨日の朝方。 "亜矢ちゃんが駅まで迎えに行くから、明日は始発で帰ってこい"と 卓さんからの謎のお達しがあった。 社員寮の荷物を片付けてから、大阪最終日は ぱぁーっとハシゴ酒でもしようか、と思っていたが、なかなかそうもいかないらしい。 今回の出張中に読もうと持参した本が結局のところ読めずじまいなので、せめて新幹線の中で読み切ろうとス

          【番外編・その❹】決意の新幹線。 (2011.11.2/秀人)

          【番外編・その❸】恋する乙女。(2011年10月末日/卓)

          "卓さん、すみませーん、遅れちゃった" 22歳の関口亜矢が、小走りで近づいてくる。 新入社員だが、なかなか機転のきくところがあって、責任感も強い。 頼んだ仕事は、時間がかかろうと着実に良いものを仕上げてきてくれるので、企画資料の作成等も、最近は彼女にばかりお願いしている。 いいよ!だいじょぶよ〜、と言いながら 差し出された書類の束を、受け取った。 "ありがとうねん" "いいえ。お役に立てて光栄です" にこ、っと微笑んだ亜矢が そっと耳打ちをする。 "あの、秀人さ

          【番外編・その❸】恋する乙女。(2011年10月末日/卓)

          【番外編・その❷】思い出の地、大阪。(2011年10月/秀人)

          台風が来ているらしく、やけに湿度が高い。 秀人は、季節外のあまりの暑さにスーツのジャケットを脱ぎ捨て オフィス椅子に肩を預けてウトウトとしていた。 大阪の社員寮は、東京とは違って徒歩圏内ではない為、いちいち帰るのも面倒で、ここ数日はずっとオフィスに寝泊まりしている。 だけど、熟睡出来ない感はやっぱり否めない。 眠気をおさめるために飲むブラックの珈琲は 日に日に杯数が増えている。 仕事終わりに一階のコンビニで買う缶ビールの本数も。 やれやれ。そのうち腹が出てくるぞ、と

          【番外編・その❷】思い出の地、大阪。(2011年10月/秀人)

          【番外編・その❶】 再会の1年前。東京にて。 (2011年 7月)/卓)

          ※短編小説 〜あの日にかえりたい〜本編をご覧になってない方には、内容がわかりづくなっています。まずは本編をご覧になってくださいね。 ・・・ "うぇーい。お疲れ" プシュっと小気味いい音をさせてタブを開け 清水卓は、秀人の缶に自分の缶を突き合わせた。 カスっと鈍い音が鳴る。 "お疲れっす。あ、ビールの差し入れ ありがとうございます" 乾杯された缶ビールの口を開封しないまま、軽く持ち上げて、秀人は軽く会釈する。 "おー。優しい先輩に感謝しろよ。 …2ヶ月ぶりくらいか。

          【番外編・その❶】 再会の1年前。東京にて。 (2011年 7月)/卓)

          「あの日にかえりたい」 という小説について。

          毎年、七夕が来ると ついつい感慨深くて 過去の恋愛に浸ってしまう。 2012年の七夕の日のことを、私はいつまでも忘れられない。 「あの日にかえりたい」とは、実体験を元に 過去に執筆した短編小説である。 自分でも惚れ惚れするくらい、当時の恍惚とした気持ちが表現されていたので 勿体無くって 投稿サイトがなくなる前に 書き写しておきたくなった。 いつまでも引きずっているのか、と言われれば 否定はできない。 だけど、何年かに一度、七夕の日に思い出すくらいで、いつ

          「あの日にかえりたい」 という小説について。

          あの日にかえりたい~最終章~

          ボサノヴァの 心地よい響きにまざって しっとりと歌いあげる ユーミンの声がする。 この歌は、カラオケでもよく歌うのに こんなに歌詞が心に響くのは、 今、このタイミングで この歌を 聞いてしまったからだろう。 ♪ 泣きながら ちぎった写真を 手のひらに つなげてみるの 悩みなき 昨日のほほえみ わけもなく にくらしいのよ 青春の うしろ姿を 人はみな 忘れてしまう あの頃の わたしに戻って あなたに会いたい 暮れかかる 都会の空を 思い出は さすらって行くの

          あの日にかえりたい~最終章~

          あの日にかえりたい~第四章 思い出

          もう克服したと思っていた。 もういなくなったと思っていた。 弱くて情けない私がまだ、いた。 誰かが支えてくれないと 歩けないような。 めちゃくちゃなことを言って 大泣きしたあとに 抱きしめて貰わないと 気が済まない、 駄々っ子みたいだった。 生きていく力が 100%中 30%をきったと思った。 昨日の夜は、もう何も 先のことを考えられなかった。 しみちゃんと話ができて よかった。 それまで、 相当強がってた気がするし。 弱いのは私だけじゃなかったって わかっ

          あの日にかえりたい~第四章 思い出

          あの日にかえりたい~第三章 現実逃避の街

          "もういいやん、過去の話は" 昨日の夜、 秀人がそう言った。 呑み屋をでてから 2人で夜道を歩いて デートみたいに喋った 最後の最後に。 昨夜はまるで 寝付けなかった。 大好きだった街が、 一瞬にして暗転したって感じ。 当時の私は この場所にはもう戻って来られないと思って、 この街を出たのに もう一度ここにくることを 心の何処かで決めていた。 2年半も恋い焦がれて、 東京は 憧れの場所になっていた。 でも、この街には 辛い思い出も沢山残っていたんだ。

          あの日にかえりたい~第三章 現実逃避の街

          あの日にかえりたい~第二章 恋の終わり~

          もう何年も前から、 こうすることを決めていた。 もう一度 彼に会いにこようって。 そして、自分の気持ちをちゃんと、 彼に言わなきゃいけないって。 でも、近頃わからなくなった。 私は本当に 彼が好きなんだろうか。 離れすぎたんだろう。 顔もよく思い出せなくて、 そんな自分に なんだか、 気分が落ち込んでしまった。 私は、 彼が好きだってことを 支えにして今まで生きてきたんだ。 だから、 そこの信念がブレたら 途端に路頭に迷ってしまう。 私は確かめなきゃいけ

          あの日にかえりたい~第二章 恋の終わり~

          あの日にかえりたい~第一章 再会~

          あんなに好きだったひとを 忘れていく。 あんなに大切だったのに 気持ちが離れていく私がいる。 悲しい。 さみしい。 受け入れがたい。 "なんで、あんなに 好きだったんだろう"なんて 今更振り返っても、 わかるはずなんてない。 そんなことは、 多分、当時の私にだって わからなかったはずなのだ。 理由なんて、特になくて ただ、好きだった。 悔やまれるのは 時の流れだけ。 あんなにお互い好きだったのに どうしてか、 彼には彼の風向きがあって 私の方には吹いて

          あの日にかえりたい~第一章 再会~