ケンカじゃない方法で、よりよい関係をつくるためのコミュニケーションについて

できればケンカをしたくない。

ケンカはコミュニケーションだという文化もあるかもしれないけど、わたしは、コミュニケーションのゴールが「人を言い負かしたい」とか「自分が正しいと認めさせたい」という勝負の土俵には一瞬たりとも上がりたくない。なので、そういう人がケンカを売ってきたときは無言でダッシュで逃げる。

だけど、仲良くしたい相手やこれからも関係性が長く続く相手とも、意見が食いちがったり考えが伝わらなかったりする事態はどうしても起こってしまう。そういう相手とは、よりよい関係をつくるために、なるべく誤解を生まずにイヤな思いをしないコミュニケーションをとりたいと思う。


関係性をよりよくしたいという思いは同じなのに意見が異なるとき、ケンカをしないで上手にコミュニケーションをとるためにどうしたらいいか、今までの経験からわかったことをちょっと書いておこう。


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コミュニケーション上で意見のすれちがいが起きたとき、ついどちらが正しいのかを議論しがちだけど、そもそもお互いが「自分が正しい」と思っているからすれちがうので、その議論は平行線になる(もしくは悪化する)ことが多い。

話し合う際に机上に出す論点は、どちらが正しいかどうかではなくて、お互いに大事にしているものが何かを出し合うのがいいと思う。

「オレが正しい」「いやわたしが正しい」という正義の土俵から降りて、「これが大事」という美学を見せ合うと「違い」がわかる。相手が何を大事にしているかを理解すると「あーそれが大事ならすれちがうねー」とひとまず原因がわかる。



わたしは常々「正義は敵をつくる」と思っていて、「正しさ」は「それ以外」を悪としてしまう。悪気があろうとなかろうと、そういうものだと思っている。

だから、なにが正しいかについて話し合うと、結論を出すには分断するしかなくなってしまう。それに対して「美学」はそれぞれひとりひとつの宝箱のようなもので、否定しにくいし、自分の大事にしているものを見せることで相手を批判するだけではすまされないので、発言に責任が生まれる。

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たとえば、仕事をするときに、自分のペースでゆっくりでも確実に進めてミスをしないことが大事だという人と、どれだけ効率よく早く仕事を終わらせるかが大事な人が一緒に働いていると、大事なものがまったくちがうのでぶつかってしまう。

お互いが「あの人はまちがっている」と思っていると、相手の考えを変えようとしたり、存在を否定したりしてしまう。

以前、会社でスタッフのマネジメントをしているときにしていた方法は、まず「あの人は〜だ」「会社の○○だから問題だ」という考えを「わたしは〜だ」「わたしは〜したい」と主語を「わたし」に言い換えて話して(場合によっては書いて)もらう。

そうすることで「誰かへのグチ」が「自分の意見」に変わる。そうすると、それが自分の価値観を守るためだけではなくて「仕事をうまくやっていくための意見」なのかどうか冷静に見ることができる。

チームに5人いたら5人が「自分の意見」を出し合って、大事にしていることがちがうことを知るのがスタートで、仕事は自分ひとりが大事にしていることを守るため、自己表現のためにするものではないと知ったうえで、ゴールは「よりよく仕事をするため」として、「チーム」に人格をつけるように「このチームが大事にすること」を決めていく。


チームのために自分が大事とするものを守るか諦めるかのどちらかということではなくて、「わたしたちは“ちがう”よね」という前提に立ち戻って、「わたしたちは“ちがう”から、チームで活かしあえる」「わたしたちは“ちがう”けど、チームの価値観を一緒につくりあげる」「わたしたちは“ちがう”から、想像し合う努力をしよう」という考え方を共有したい。

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できればケンカをしたくない人のコミュニケーションのコツは、「正しさで戦わないこと」「大事にしているものを知ること」なのだろうな。

大事にしているものを傷つける人からは離れたほうがいいと心から思うけど、そのためには自分が何を大事にしているのかを知る必要がある。

わたしの場合、負けん気がなくて、負けず嫌いの人に勝負を挑まれるのが苦手だし、ゴキゲンを奪われるのがいやなので、言い負かそうとするケンカから逃げようとした結果「ケンカじゃない方法で、よりよい関係性をつくるためのコミュニケーションをしたい」と考えるようになったのだと思う。



同じようにケンカをしたくない人やチームのマネジメントに、なにか参考になればと思って書いてみたよ。ではまた。

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