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クローズアップ現代で臓器移植の特集

この間、たまたまNHKを見ていたら、今年からまた夜7時半からの時間に戻った「クローズアップ現代」が始まった。

その日の特集は、夫婦間の臓器移植についてのものだった。

私はまさにドンピシャの当事者だ。
この特集で出てきた夫婦のように、昨年、妻から腎臓の移植を受けた。

妻とは血液型も異なる。
最初、主治医から説明を聞いた時はそんなことができるのかと思った。

でも、医療の進歩はすごい。
少し前までは不可能とされていたことが可能になる。

私は父親も人工透析を受けていたので、もしかしたらそうせざるを得ないのだろうと思っていた。
何となく悪いと言うのは聞いていたが、特に食事を激しく制限しろとかそんなことは言われていなかった。
塩分の摂りすぎに気をつけるようにとか当たり前のことを言われていただけで、体調にもそんなに変化はなく、あまり気にしていなかった。

ただ、透析を始めないといけないくらいに悪いという通告があまりにも突然だったので、その時は憤っていた。
もう少しその手前でいろいろ言ってくれれば、もっといろんなことに気をつけていたのに、と。

でも、そんなことを言っても仕方がない。
選択肢は3つあって、透析が2種類ともう1種類が腎臓移植だった。

最初は妻から腎臓の移植を受けるなんてありえないと思っていた。
自分が生きるために、人の体にメスを入れるなんて。

透析の2種類のうち、一つは週に3回、4時間ほどの透析を受けること。
もう一つは、毎日、夜間に腹膜透析という透析を行うこと。

私はまだ50代で仕事があるので、前者の方は、夕方から始めるとしてもかなり仕事に制約がかかる。
なかなか日をずらすわけにも行かないので、仕事の急なスケジュール変更に対応できない。
ならば、夜間の腹膜透析か、ということになるが、それもかなり長時間を確保しなければならず、あまり夜更かしもできない。

移植が一般的でなかった時代はもうそうするしかなかったので、私の父なんかはずっと週3回の透析をしてきた。
でもそれで負担がかかるのは私の母親の方だった。
確か父は退職後に透析を始めたと思うが、毎朝病院に送り届けて、昼過ぎに迎えに行く。
多分それを10年以上続けていただろう。

さらにはその間、血管にも負担がかかって別の手術も何度かした。
その時にもいろんなことがあり、母親はあまり表には出していなかったが、大変だっただろう。

ここ数年は、父親に認知症の症状も見られるようになってすごく怒りっぽくなっていたようだ。
徘徊をするわけではない。
自分が行った時は割としっかりしているのだが、母親と2人でいる時はかなりこだわりが強かったり、混乱したりしていたようだ。
結局、悩んだ末に入院させざるを得なかった。

私が移植について考えていたのは、ちょうど父親をどうするかと母親が悩んでいた時のことだった。

透析はとにかく死ぬまで続けなければならないし、周囲への負担も大きい。

その点、移植は食べ物の制限やマスクでの生活という制限はあるものの、比較的元の生活に近いところまで戻れるということだった。
コロナがなくても私はマスク生活をする必要があるのだが、今はコロナで皆マスクをしているので、気にされることもない。

結局、決め手になったのは、妻が移植しようかと言ってくれたことと、最終的な妻への負担のことを考えてのことだった。

透析を続けていくと、いずれいろいろな問題が出てくるし、負担もかけてしまう。
妻の体はメスを入れることなく元気ではあるけれど。
それなら、リスクゼロではないけれど、移植をした方がお互いの生活に負担がかからない可能性が高いと考えたからだ。
そして幸運だったのは、妻が健康だったことだ。
移植後も耐えられる健康状態であることが検査の結果分かったので、移植手術までこぎつけることができた。

私の例は手術前に透析開始まで至っていなかったやや珍しい例だ。
大抵の人は透析を開始していて、そこから移植手術となるそうだ。

そうは言っても、私も手術のために入院してからは3回ほど透析をした。
ずっとベッドに横になり、ただ上を向いているのはしんどい。
私は3回だけだったので、何とか耐えられたが、あれがずっと続くと思うとどうだろう。
私が入院したところはテレビを見ることもできるようになっていたが、どうだろう。

手術は全身麻酔をかけられるので、何が起こったのかはわからない。
7時間後ほどに目を覚ました時は集中治療室でいろんな管が付いた状態で、全く起きることもできず、ベッドに横になっていた。

そこで2泊するのだが、その間が一番きつかった。

部屋に入ってからは徐々に管が外れ、普通の状態に日に日に近付くことができた。

退院後、1か月ほど自宅で生活して、その後仕事に復帰し、現在に至っている。

手術後は、いろんなものを吸収しようと、本やドラマ、映画などをよく見るようになった。
記録として、このようなブログを書き続けるようになった。

妻との関係は別に手術前と変わらず良好だ。

せっかく元気に生きられる権利を幸運にももらえたのだから、いろんなものに触れて何かを残したいと思うようになった。

何を残せるかはわからない。
おっと、もう夜も遅い。
健康のために寝なければ。

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