気がついたら、春
季節がカレンダーを見ているかのように、3月になったら一気に暖かくなった。
急な変化と花粉の量についていけない僕は、今日も着て行く服装で迷う。
そんな僕を嘲笑うように、外から聞こえてくるのは軽快な鳥の鳴き声。
楽しそうな春の音に誘われて、軽い上着を羽織り出かけた。
公園には咲き始めの桜の木。
暖かい陽射しの下には毛繕いをしている猫。
木の枝にはいつもより少し明るい声で鳴く鳥。
まるで春に合わせて、一斉に歌い出したようだ。
もちろん、こうして春を撮りに来た僕も心の中で歌っている。春の歌。
青空を背景に撮る桜の写真には春がいっぱいだ。
冬とは違う明るい光。
逆光すら楽しくて、軽快になるシャッターのリズム。
同じような写真を撮りすぎると後で選ぶのが大変になるのはわかっているけど、目の前の景色が綺麗でつい何枚も撮ってしまう。花や空の表情は少しの角度や光の加減でガラッと変わるから仕方がないのだ。と自分に対して言い訳を言う。
すれ違う人も花を見上げている。
きっと同じように春の気配に誘われて出てきたのかもしれない。
なぜだろう、おじいちゃんやおばあちゃんには声をかけやすい。
「桜咲きましたね」
と言うと
「綺麗だね〜」
と返ってくる返事。
それだけの会話だけど、それがとても楽しい。きっと僕は感動を共有できる人が欲しかったのかもしれない。
気がついたら、春。
足早に過ぎ去って行く季節の中で、身の回りの変化を楽しみながら。
これから満開になるまで、また今年の春を撮りに行こう。
そしてまたあのおじいちゃんおばあちゃんに会えたら挨拶をしよう。
「満開になりましたね」
と話しかけたら、前と同じように
「綺麗だね〜」
と返事をしてくれるかな。
Photos by Lumix S5II + Lumix S20-60mm F3.5-5.6
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