良いインタビューには、即興のボール投げが存在する。
……ふぅ。このnoteで言いたいことは上の一文が全てなのだが、最近インタビューについて考えを巡らせることが多かったので、もう少し書いてみる。
はじめに。僕がここでいうインタビューとは、メディアにおいて取材記事を書く上でのインタビューだ。ユーザーインタビューであったり、有名人へのヒーローインタビューを指しているわけではない。
良いインタビュー。裏返すと、悪いインタビューがあるということ。ライターを名乗っている人のなかでも、インタビューの良し悪しを言語化している人って意外と少ないんじゃないか。
ちなみに、僕はWebメディアの編集部で活動している。自然体な生き方を考えるメディア『ソラミド』という最高の場所なので、もしよかったら。
本題。インタビューについて考えてみる。そもそも「インタビュー=inter view」だ。「inter=相互に・互いに」「view=見る・眺める」という意味。つまりは、「インタビュー=相互に見ること」と言うことができる。
もちろん語源が全てではないのだけれど、ここに「良いインタビューとはなにか?」の問いのヒントが隠れている気がする。
良いインタビュー。それは、「相互性が生まれた時間」なのではないだろうか。
「相互性が生まれた時間」と堅い言葉で言ったけれど、柔らかく言うと「あなたがインタビューした意味のある時間」だと思う。
ふと気を抜くと、取材相手に対して、こちらの聞きたいことだけを、ないしは書きたいことだけを質問しがちだ。あたかも、取材相手が既に抱いている情報にだけ価値があるように。
用意してもらった情報を聞き出すだけなら、インタビューという形式をとらなくてもいいはずだ。こちらが聞きたい事項を文書にまとめて、相手に送り、テキストで答えてもらえばいい。それで、情報は獲得できる。
けれど、インタビューという形式をとったならば。相手のお時間をいただいて、対面(オンライン含む)で話す場をセッティングしたのならば。テキストで済む以上のものを持ち帰らないと、それは良いインタビューとは言えないだろう。
じゃあ、どうすればテキストのやりとり以上のものを持ち帰ることができるのか。
僕が意識しているのは2点。
①脱線を歓迎する
インタビューしている時点で、「こういうことを伝えたい」や「これを聞きたい」というものがあると思う。企画を作った段階で、ある程度のストーリーラインが頭の中にあるはずだ。
僕は、そこから脱線し始めたときこそが、良いインタビューの始まりだと思っている。
既に存在する仮説どおりの話を聞いたとて、それは僕がインタビューした意味がない。仮説どおりということは、こちらの想像以上のものがないということ。相手が用意したもの以上のことを獲得できなかったことと同義だ。
仮説からの脱線を恐れすぎると、取材相手を型にはめ込んでしまうことにもなり得る。恣意的に情報を歪めるのは、インタビューとして、というよりはメディアのスタンスとして避けるべきだろう。
じゃあ、脱線をどう生み出すか。そのための意識が②だ。
②自分の考え・感想を伝える
インタビューと聞くと、質問役に徹することをイメージしがちだ。けれど、ただ質問を重ねるだけだと、想定外は生まれにくい。ただただレールの上を走っていき、想像どおりの景色を見て終わってしまうだろう。
そうならないために、こちらから即興的なボールを投げてみるのだ。
相手の話を受けて、自分のなかに生まれたものを相手に投げてみる。そんなチャレンジが、想定外という脱線を生んでくれるはずだ。
もちろん、ただ即興のボールを投げても意味がない。相手が話した内容をちゃんと咀嚼し、自分なりの考えを持ち、強度を持ったボールを投げ返さないと、キャッチボールにはならない。デッドボールになるか、明後日の方向に飛んでいくのが関の山だろう。
けれど、この即興のボールこそが「あなたがインタビューをした意味」を生み出す。なぜなら、相手の話を受けて、あなたの頭に浮かんだ考えや感覚は、唯一無二のものだからだ。そして、その唯一無二のものを投げ返したときに、相手の頭に浮かぶものも唯一性を有する。
そんな唯一性の往還を重ねることこそ、「相互性が生まれる時間」のはずだ。
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先日インタビューをしたとき、お相手から「対話しているみたいな感覚でした!」というお言葉をいただいた。
そうか、良いインタビューって対話的なのかもしれない。
ただ語ってもらうのではなく、ふたりで創り上げていく。そんな感覚がある。
尊敬しているライターさんから、「良い取材って、取材が終わった後にどうまとめるか全然わかんないような取材だよ」と言われたこともある。
どうまとめるかスッキリしている取材って、想定通りにしか進まなかったということ。
いかに、あなたが取材をしている意味を生み出すか。良いインタビューには、その観点が必要なのだろう。
もちろん、即興のボールを投げそびれてしまい、レールの上をガタゴトと進むだけのインタビューをしてしまうときもあるのだけれど。
インタビューの時間は、できるだけ、相互性が生まれた時間にしたいと思う。
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