カミングアウト出来るのは“強い”のか?
年末年始、ひょんなことからsoarさんのカミングアウトに関するイベントレポートを読んでいました。
本文でも触れられているよう、カミングアウトとは「自分の性的指向や性自認に関することを誰かに伝えること」をもともと指します。
けれど、今では「自分にとって大切な言いにくいことを誰かに伝えること」という意味合いで広く使われている。
僕はLGBTQではないので前者のカミングアウトはしたことがないけれど、後者のカミングアウトならしたことがあります。そして、それを巡ってモヤモヤしたことも。
些細な違和感だと思い忘れていましたが、soarさんの記事を読んで、当時のモヤモヤが再度胸に湧いてきました。
それは、「周りにカミングアウトしていて、お前は強い」と言われたことです。
僕が周りにしたカミングアウトは、精神疾患を患い仕事をお休みしたこと。家族はもちろんですが、当時のパートナーや友人にも伝えました。
ありがたいことに、みんな話を聞いてくれ、僕を受け止めてくれた。本当に嬉しかったです。
そして、お世話になった先輩にも近況報告を兼ね、病状などを伝えました。
そこで言われたのが、「周りに言えているのすごいな」という言葉。
この発言が出たのは、先輩も休職した経験がおありだったから。先輩は休職したことや病気のことも、なるべく周りには言わずに過ごしている、とお話してくれました。
だからこそ、「俺は弱いから周りに言えないんだよね。それに比べてお前は強い。周りにちゃんと伝えて、前を向こうとしていて、すごいよ」と言ってくれました。
当時は単純に嬉しく思い、ありがとうございます、とお礼を言っただけでした。自分のことで精一杯でしたからね。
でも、今はこう伝えられれば良かった、と思います。
いや、周りに言っていない先輩も強いですからね。
周りにカミングアウトできるのは強い。カミングアウトできないのは弱い。
本当にそうでしょうか。
僕は1人で抱え込めなかったからこそ、周りの人に伝えていたんだと思います。誰かと分かち合わないと、誰かに認めてもらえないと、自分の所在が分からなくなっていたんです。
そう。僕は、弱かったからこそ、周りの大切な人達にカミングアウトしていたんです。
それに対して先輩は、1人でじっと耐えて、快復して今は仕事をなさっています。すごい。なんて強い人なんだと、心からそう思います。
休職中の期間を、じっと1人で耐える。これは強い人にしか出来ない。
そう考えると、カミングアウトすること即ち、“強い”ではないはずです。
結局のところ、カミングアウトする/しないに、優劣なんてないんだと思います。
「大切な人には、全てをさらけ出すのが美徳」という価値観がありますよね。言いにくいことを全て伝えて、はじめて心から分かり合える。もちろん、そういう側面もあると思います。
けれど、大切な人に話すと決めた勇気と同じくらい、1人で抱えていこうと決めた覚悟も尊ばれるものだと思うんです。
どちらも、しんどいんです。どちらも、大切な人のことを思っての行動なんです。
カミングアウトするもしないも、どちらかを強制されることではない。
各々の価値観によって、選択するもの。優劣をつけるものではない。
だからこそ、今度先輩とお会いしたときには、ちゃんと伝えようと思います。
「先輩も強いんですよ」と。
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