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「不便から作る」サッカーの価値〜キャプテンとコミュニケーションと役割〜


体育「サッカー」の授業で、子どもたちは何を学ぶのでしょうか?


サッカーのルールですか?

試合で使えるドリブルやパスの技術ですか?

サッカーでできることは何ですか?

サッカーの価値は何ですか?



サッカーの授業9時間を通して最後の感想に「またサッカーをやりたい。」と書いた子がいました。

やる気のなかった子が、「またやりたい」と変化したのは、なぜなのか。そこにサッカーの「価値」があると思います。



サッカーの「特性」を活かし、「不便な要素」を取り入れることで「価値」を跳躍。

最後にはサッカーが楽しい!を感じることができた子どもたちが待っていました。

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今年度、体育科「サッカー」の授業の実践を振り返った話です。最後まで読んでもらえると嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いいたします。


①キャプテンは投票。スタートは、わくわくさせる。


サッカーやフットサルなどのチームスポーツにはキャプテンが存在します。チームの中で、キャプテンは大切な役割を担っていますし、子どもたちひとりひとりが成長するにはその存在は、とても重要です。

「みんな。キャプテンってどんな人だと思う?」「どんな人にキャプテンになってもらいたい?」

キャプテンを決める前に子どもたちに聞いてみます。

「サッカーが上手!」

「チームをまとめる!」

「優しい!」

イメージを声に出していきます。

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「たくさん出たね。そうかぁ、みんなはこんな人にキャプテンをやってもらいたいんだね。」

「キャプテン像」をクラス「全員」で共有します。


「この人にキャプテンになってもらいたい!この人がキャプテンにふさわしい!という人の名前を6人書きましょう。」


発表は、必ず2.3日後にします。

その間「先生、発表まだですか?」「キャプテン誰に決まったのですか?」と毎日たくさんの子が聞いてきます。発表までの間を少しあけておき、子どもたちの気持ちを高めていきます。子どもたちは「わくわく」「ドキドキ」を感じていきます。


「キャプテンは26票で、○○になりましたーっ!」と声高々に言うと、拍手拍手。自然と拍手が起こり、盛り上がります。キャプテンに選ばれた6人は、少し照れくさそうに。周りの子どもたちは温かい気持ちを。教室がサッカー楽しそう!という雰囲気になります。

その後、チーム編成です。チームは私が決めます。名前を書いた6人の内の誰かのチームに入っているように、ひとりひとりを振り分けていきます。子どもたちは全員必ず「この人がふさわしい」と選んだキャプテンが自分と同じチームにいる状態になります。

キャプテン像として選んだ人がチームにいると、チーム活動スタート時に、ひとりひとりが気持ちも安定してスムーズに物事が運んでいきます。


チームのメンバーが決まれば、私からの思いを伝えます。

①全員で協力しよう

②全員が活躍しよう

この2つ。

チームの目指すところを真剣に語ります。


チーム名とゼッケンの色を決めて、いよいよチーム活動のスタートです。

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リーグ戦とトーナメント戦の優勝を目指して、チーム一丸。練習や試合が始まりました。






②不便だからコミュニケーションが生まれ協力する。


体育「サッカー」では、活動ルールを示しました。

①【移動はチーム全員で行うこと】

②【ボールは、かごから取り出す時と直す時以外は必ず足で扱うこと】

③【ランニング→準備運動→コート準備→練習→試合→振り返り の順番で活動すること】

④【ルール変更について。ルール変更の申し出がある場合は、その都度キャプテンがチームメンバーから意見を拾い上げる。キャプテン会議で話し合って決定し、チームにキャプテンから伝えること】

以上4点です。




①【移動はチーム全員で行うこと】

体育服に着替えてから運動場に移動をする時には、チームメンバー全員揃って移動をします。男子女子、別々で着替えています。着替えの遅い子もいます。先に運動場に行ってはいけません。トイレに行く子もいます。トイレも待ちます。必ず全員で移動してもらうのです。

人を待つ。人を待たせる。ことを体感するのです。この不便なルールで、「ありがとう。」「ごめん、ごめん。」とコミュニケーションが生まれ、「相手のために」という気持ちが育まれていきます。




②【ボールは、かごから取り出す時と直す時以外は必ず足で扱うこと】

クラスには、サッカーを習っている子。サッカーが好きな子。運動が好きな子。運動が苦手な子。運動が嫌いな子。サッカーが嫌いな子。いろいろな子がいます。サッカーが得意な子は、ボール扱いに慣れてますが、サッカーが苦手な子や運動が得意ではない子は、「ボールが言うことを聞いてくれない」となっています。

「集合〜。」と声かけ全員を集めると、30人ほどの子どもたちが、ボールを蹴りながら私の周りに集まります。集まる時は、チームで円になって座ります。何かあればすぐに話し合えるためです。

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ボールが苦手な子は、なかなか集合場所までたどり着きません。時には、転がっているボールを上手く足で止めることができずに、チームの場所を通り過ぎてしまうことも。

「時間を使い、相手を待つ」ことを経験します。

足だけでボールを扱うことは、もちろんボール扱いに慣れてほしいという思いもありますが、「相手のために」という気持ちを育てる意図もあるのです。


③【ランニング→準備運動→コート準備→練習→試合→振り返り の順番で活動すること】

1時間の授業の流れは、同じにします。ルーティンができると、キャプテンを中心に子どもたちだけで活動し主体的になっていきます。

試合をする前に「今日の対戦相手の確認」

振り返りの時に「今日の授業で感じたこと」


私が話すのは、この2つぐらいで、後は子どもたちの活動を観てずっと、認めて、褒めて、一緒に喜ぶだけです。

「みんなで揃って準備運動しているなぁ。」 「コートを協力して作ってるんだね。えらい!」「なるほど、○○の練習をしているんだね。」「ボールをよく追いかけていて、いいぞいいぞ!」                  「ナイスゴール!やったぁ!」


<チーム練習中>

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<試合中>

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④【ルール変更について。ルール変更の申し出がある場合は、その都度キャプテンがチームメンバーから意見を拾い上げる。キャプテン会議で話し合って決定し、チームにキャプテンから伝えること】

今回の体育のサッカーのルールは以下の通りです。

○1チーム、4人か5人。            ○試合時間は前半6分、後半6分の合計12分。  ○試合の始めと終わりは整列し挨拶をする。  ○ボールがタッチラインからコートの外に出たら、スローイン。スローインはタッチラインのどこから投げてもよい。投げ方は自由。     ○ゴールラインを出たら、必ずゴールキックになる。キーパーは味方にボールを投げてもいいし、地面に置いて蹴ってもよい。         ○ゴールはハードルゴールを2つ並べる(最初はカラーコーンを2つ置いていました)                           ハードルバーの下の隙間を通れば1点。



リーグ戦の前に、練習試合を行います。目的は、ルールの確認です。サッカーを全くやったことのない子にとっては、ルールを覚えるのがまず大変です。デモンストレーションを見せたり、試合の中で止めたりしながら確認していきます。


今回の体育では、1度だけルール変更がありました。それはゴールです。最初ゴールは、カラーコーンを2つ使っていました。コーンとコーンの間を通ればゴールです。


練習試合をしていた時に、コーンの高さぐらいで、ボールがゴールしたのです。

シュートを打ったチームは「入った!得点だ!」と意見し、もう片方のチームは「ボールはコーンより高かった!だから、入ってない!」と主張しました。



練習試合が終わりキャプテン会議が始まります。3分ほどでしょうか。キャプテンたち6人で出した答えは、ハードルを2つ並べるでした。6人は、自分のチームに戻り、新しくなったルールを伝えます。

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私たち先生側がルールを決めてしまうのは簡単ですが、それではもったいない。子どもたちが「課題を見つけ」全員で投票した信頼おけるキャプテンが「話し合い決定」した内容を「伝える」

ルールをみんなで作っていき、そのルールを守っていくことを学んでいきました。


③役割がある


サッカーが苦手と感じている子や嫌いだなぁと思っている子どもたちが、チームの中で「活躍したぞ」「役に立った」「意味があったな」と体験することが大事だと思っています。

運動場に出る前にトイレに行くのを待ってくれたり、ボールを蹴りながら集合する場所になかなかたどり着けないのを待ってくれたりする。そして、お礼を言ったり言われたり。繰り返すことで、協力しようとする気持ちが育っていきます。

待たせる子は、チームのメンバーが自分を待っている姿を見ることで「このチームに存在していて意味がある」と体験する。

コートを準備する時にハードルを運んで、チームのメンバーに「ありがとう!」とお礼を言われて「役に立った」と思える。

試合中スローインで、ゴール前にボールを投げ入れる。ゴールが生まれたら「ナイス〜!」とチームメンバーから称賛されて「活躍した」と喜べる。

「待たせる」役割。            「お礼を言われる」役割。         「称賛される」役割。

チームには、サッカーが得意な子も、苦手な子も、好きな子も、嫌いな子もいます。運動が得意な子も、苦手な子も、好きな子も、嫌いな子もいます。

チームの中で、「自分の役割」を感じることができれば、誰もが自分にとってチームは大切なものになり、自分はチームの中に「存在して意味がある」ものに変化します。

「サッカーをやる気がない」を「またサッカーがやりたい」と変化させるには、コミュニケーションが生まれて役割を感じる環境にすることが、大切です。

体育「サッカー」で見つけた価値は、「人の気持ちを動かせる」ということ。動かすには、人と人との繋がりが大切で、「コミュニケーション」と「役割」で成り立っていること。でした。

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〜終わりに〜


世界中で1番人気があるスポーツ「サッカー」  私もサッカーで気持ちを変えられた人の1人です。そして、今もサッカーから刺激をたくさんもらっています。

協力する。助け合う。相手を受け入れる。相手を思いやる。目標を持つ。目標を目指す。努力する。成功する。失敗する。勝って喜ぶ。負けを受け入れる。

体育「サッカー」で学ぶことは、スポーツの本質ばかりでした。子どもたちを通して、スポーツの価値を改めて感じることができました。

今度も、子どもたちと一緒に成長していきます。



最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。















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