よくある社会復帰相談に対する鉄板回答(4)止〜慢性化編(後)〜

よくある社会復帰相談に対する鉄板回答(4)止〜慢性化編(後)〜

前々々回から、うつ病からの社会復帰において、よくある疑問とその”鉄板回答”について取り上げています。

実際の支援現場では、こと、働く人のメンタルヘルスに関して言えば、状況は驚くほどよく似ているというのが実感です。それに対する対処法も鉄板事項になることが多いようです。4回目の本稿では、慢性うつ病の方の社会復帰についての後編をお届けします。

前回も申し上げた通り、慢性うつ病は、とても難しい問題です。治療が難しいのですから、治療の次のステップである社会復帰はさらに難しいです。まずは、非正規雇用や時短アルバイトなどで心身の両面を慣らしてから、一般就労を目指すというステップを踏むことが安全ということになります。しかし、この考えは重大なことを考慮していません。その”重大なこと”について、本稿では取り上げたいと思います。

『あなたのプライドを無視している』

その”重大なこと”というのは、『あなたのプライドを無視している』ということです。プライドが高い人にとっては、このこと自体が重大なことです。受験勉強も頑張って、「良い大学」に入り「良い会社」で働いてきたのに、学生でもないのにこの歳で時短バイトなんて、冗談じゃないと思うでしょう。

いくつかのメンタルクリニックのホームページでコピペされている文章をそのまま貼ると、

うつ病にかかりやすいのは、環境の変化への適応が苦手な方が多いです。

・プライドが高い
・人に頼まれると断れない=責任感が強い
・周囲からの評価が気になる
・仕事熱心、凝り性
・几帳面、完璧主義
・頑固、生真面目
・正義感、責任感が強い

こうも並べられると、ほとんど当てはまる私などはいたたまれない気持ちになりますが、この一丁目一番地である「プライドが高い」というあなたの性格のせいで、損をしているということになります。世の中、適当に仕事をしている人はごまんといます。この文章がコピペされているということは、即ち、うつ病を克服する上での鉄板事項であるということを意味します。

そもそも、その生き方は無理がないですか?

しかしながら、こんなにガチガチの性格だと、社会生活一般はともかくとして、仕事だととてもしんどくなってはしまわないでしょうか。

下図のように、「プライドが高い性格は、精神疾患の温床だ」という意見もあるくらいです。

プライドが高くなることでどんなリスクがあるのか?

「プライドが高い」というのは、あまり良いこととはされていないようです。「プライド高い 直す」で検索候補が出てくるくらいです。これは、プライドが高いことは、矯正しなければいけない悪いことだ、と一般に認識されているということになります。ただ、それが自己心理学的に良いのか悪いのかはという議論は、ここではしません。今までこんなに頑張ってきたんだから、それが報われるはずだ、もっと幸せが手に入らなければおかしい、という気持ちはよくわかります。しかしながら、それが生き方全体に及ぶ問題となると、本末転倒なことになってしまいます。

一般にうつ病、特に慢性うつ病とは、
①その人の生き方に対する警告である
②それが慢性化すればするほど、その人の生き方の修正を必要とする
③それは”もっと、もっと”と自分を追いつめる生き方からの転換を要請している
北西憲二、2013

これは必ずしもメジャーな診断ではありませんが、こういう見方があるということは頭の片隅に置いて良いでしょう。

鉄板回答「今、ここから始めるしかない」

例えば、難関資格を取得することで”一発逆転”をするという考えは、高いプライドの前には魅力的に映ります。しかし、そう甘くはないというのが現実です。「今、ここから始めるしかない」のが現状です。今すぐに状況をいっぺんに好転するような妙手はないと、認識することがスタート地点になります。現在、あなたが置かれている位置はとても厳しいものです。それなりの年齢にも関わらず、社会活動ができていないということに対しては、私達が属する世間の眼は想像以上に厳しいものです。そこでは、”一発逆転”の成果などあまり評価はしてもらえず、小さなできることを積み重ねるしかないのです。

私はプライドを捨てるべきなどと、大層なことを申し上げるつもりは毛頭ございません。ただ、今しばらくは、脇に置いてみましょう。今の健康状態でできることから始めてみましょう。そこでの経験は、あなたの”プライド”にも必ず役に立つはずです。”経験”やそこから得られる”情報”は、自分独りだけで完結する、思考がぐるぐるする循環からは決して得られるものではないからです。”底辺バイト”は、経験・情報・人脈を得ることができると言います。

別に、コンビニバイトでなければならない必要性はありません。内職でも副業でも良いと思います。大事なのは、今のあなたの健康状態でも余裕でこなせることに取り組むことです。ステップアップに必要な1段階だと割り切りましょう。そこから、今のあなたが、日々の生活で、何に対してどれだけのエネルギーを使えるかというバランス感覚が得られるからです。今の状況でも、足るを知ることはできるのです。これがわかると、新しいチャレンジングなことや、あなたのプライドに合った大きなことにも、徐々に挑戦できるようになります。大切なのは、焦らずステップを踏むことです。そこをすっ飛ばして、いっぺんに解決しようとするから、うまくいかないのです。

本稿は以上です。全4回にわたって、「よくある社会復帰相談に対する鉄板回答」を申し上げてきましたがいかがでしたでしょうか?
それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

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