よくある社会復帰相談に対する鉄板回答(3)〜慢性化編(前)〜

よくある社会復帰相談に対する鉄板回答(3)〜慢性化編(前)〜

前々回から、うつ病からの社会復帰において、よくある疑問とその”鉄板回答”について取り上げています。

精神疾患は”個別性”と言って、その人が病気になった要因は、そのケースに依り千差万別なので、その人の個別具体性に寄り添ってサポートしなければいけないというのが、基本的な考え方です。
しかしながら、実際の支援現場では、こと、働く人のメンタルヘルスに関して言えば、状況は驚くほどよく似ているというのが実感です。それに対する対処法も鉄板事項になることが多いようです。

3回目の本稿では、慢性うつ病の方の社会復帰について、次稿と併せて、前・後編に分けて取り上げます。

慢性うつ病とは?

厳密な医学的定義は差し置いて簡潔に述べると、年単位にわたって治療をしているのに治らない(つまり慢性化している)うつ病のことを言います。寛解と再発を繰り返してしまっている場合も、これに含みます。私のコラムでも何度も繰り返しているように、うつ病は再発を繰り返すほど、再発する確率が上がり、治りにくくなります。

最初に申し上げておくと、慢性うつ病は、とても難しい問題です。双極性障害(躁うつ病)の誤診であったり、服薬/投薬不十分の可能性もありますが、原因がはっきりしていないからこそ、慢性化してしまっているとも言えます。治療が難しいのですから、治療の次のステップである社会復帰はさらに難しいです。このことを覚悟しておく(受け入れる)必要があります。しかしながら、その「受け入れる」ということは、容易なことではありません。自分が「普通の人」よりハンディがあることは、誰でも認めたくないものです。

「慢性うつ病は必ず治る」という本も出ていますが、今もってしても、評価が難しい著作です(ちなみに、この本のトップレビューを書いているのは、私です)。

「うつに勝つのではなく「ともに生きる」」

「うつ病をなおす」という考え方は、実は私は持っていません。うつ病はコントロールするもので、むしろ花粉症やアトピーといったアレルギー体質のようなものに近いと考えています。

前回までと同様、ストレス耐性のキャパシティをコップ、もしくはダムに例えますと、ストレスという水で一度溢れると、溢れる前の自分には戻れません(その意味では、「一生、治らない」)。刺激→ストレス、アレルギー反応→抑うつ、と対応して考えると腑に落ちます。

もちろん、“体質改善”による再発防止で、実質的な“根治”に近づけることはできます。”寛解”という状態がこれに当たります。しかしながら、自分を刺激(ストレス)の強い環境に置かないという、コップもしくはダムの”モニタリング”が常に必要になります。それは、コップあるいはダムの存在すら認識していなかった以前の自分とは、明らかに異なるのです。

このように発想を広げると、うつ病は「治す」というのではなく、「これからも付き合っていく」と考えた方が良いのではないでしょうか。

この項の見出しは、以下著作からの引用です(うつについても、発達障害の二次障害として、取り上げられています)。

当分の間は、治療と仕事の両立が必要

軽度のうつ病なら、「しっかり治してから、働け」が、鉄板解答です。私の提供している再就職支援サービスでも、主治医からの転活開始の許可をサービス要件としています。中途半端に回復した状態で動き始めてしまうと、少々の労務ストレスでも、耐性が低くなっているので再発する可能性が非常に高いからです。片端で戦場に行くようなものです。

しかしながら、慢性うつ病だと、そんなことは言っていられません。経済的困窮やキャリアの空白期間が生じることはもちろんのこと、いつ来るかもわからない完治を待ち続けながら治療を続けるのは、それ自体が不安の要素になってしまいます。少なくとも、当分の間は、治療と仕事の両立が必要です。じゃあ、そんなことできるのか、という話になります。

いきなりのフルタイムは避けるべき

率直に申し上げて、慢性うつ病の状態だと、フルタイムで勤務するのは不可能です。体力も精神力も持ちません。転職活動をめでたく乗り切って入社したとしても、勤務初日でどっと疲れてしまい、数日で出社不能になってしまうのが、目に見えています。新しい環境は、誰にとってもストレスです。慢性うつ病だと、ストレス耐性は極度に低下している状態ですから、側から思う以上に、勤務中で連続するストレスがボディーフローとして襲いかかってくることになります。KOされるのは、残念ながら時間の問題です。

そしてそれが、更なる失敗体験になってしまい、回復がより遠のいてしまうという悪循環になってしまいます。回復には、「この状態ならもうやっていける」という自信が必要です。失敗体験を更に増やしてしまうことは、自信の積み重ねとは真逆の行為になってしまいます。

従って、まずは、非正規雇用や時短アルバイトなどで心身の両面を慣らしてから、一般就労を目指すというステップを踏むことが安全ということになります。と言っても、これらも決して楽な仕事ではありません。コンビニのバイトひとつを取ってしても、かなりのマルチタスクを求められるからです(正直、私には無理だと思います)。それが苦手だからこそ、労務ストレスを過大に感じてきたはずです。最初の仕事探しも、相当に慎重に選ばなければ、元の木阿弥になってしまいます。

しかし、この考えは重大なことを考慮していません。それについては、次回に回したいと思います。
本稿は以上です。
それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

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