ETV特集を見たジャーナリストの感想への反応を、複眼的に読み解いた結果
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ETV特集を見たジャーナリストの感想への反応を、複眼的に読み解いた結果

先月7月31日(土)午後23時~午前0時に、NHK・Eテレの「ETV特集」で「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」という番組が放送されました。当方も、放送直後に解題を出しました。衝撃的なシーンもあり、私の周りでも話題になりました。

この番組に対しては、水島宏明さんというジャーナリストの方が、レビュー記事を書いています。

Yahooにも掲載され、多くのコメントが寄せられました。Yahooの記事は時間が経つと消されてしまうので、どのような見方があったか、7つのコメントを本稿で残しておきたいと思います。

私は、衝撃的なシーンに表面的に引きずられている印象を持ちましたが、予備知識のない方が見れば、こういう反応になるのも致し方ないのかなと思います。これには、「作り手が自分本意の観点で病院批判と取られてもおかしくない内容になっている」という批判コメントもありました。

「綺麗事言うな」という、支援当事者からの意見

うーん、この筆者は、精神科のことを今まであまり知らなかったのかなというのは、割と業界人の共通した感想であるようです。

コメント①
精神科の実態分かって記事書いてる?

仕切りが無いとか言うけど、一見普通そうに見えて疎通が取れる人でも突発的に暴れて危険だったり、希死念慮や自殺未遂のある人だったり。精神科はカーテンや仕切りが無いのが基本です。
長期隔離患者でも、多分何度も時間出室や見守り出室を試みたがうまくいかなかった経緯がある。だって自ら怪我する行為をしたり他患者を襲う人をホールに出せないでしょう。
長期入院患者が居るのも当然。
家族は見たく無いし、地域だって迎え入れたく無い。仮に退院できても地域から病院へのクレームの嵐。受け入れる支援グループやグループホームもキャパもない。ADLが落ちて老健施設をあたっても、長いこと本人と向き合わなかった家人は費用が高いと検討もしなくて電話も取ってくれない。
この病院が酷いのか、記事がわざと悪意的に操作して書いてるのかは分かりませんが、従事する者としては悲しくなりますね
記事配信当日のコメント、太字引用者)

受け入れる地域の側に、精神障害に対する理解がきちんとないと、受け皿なんて作れないんですよ。私も地域の福祉施設で働いたことがありますが、病院からそちらに移れるケースは、ほんの一部でしかありません。それも、再び病院に戻るケースもある。グループホームを増やせば良いと、どなたかが言ってましたが、現場を見てから言って欲しいです

コメント②
綺麗事だけの記事。実際に精神科で働いてから言ってください。
他の人も書いてますが、言ってることが全く通じない患者ばかりです。暴力もあるし、結構力が強く、高齢者は頑固な人ばかりで医師の言うことは聞いても看護師の言うことは聞かない人が多いです。個室を国が作ってくれればプライバシーが守れるかもしれませんが、働かない患者にそこまでお金がかけれれますか?精神疾患の患者はほとんどが生活保護に申請してお金をもらっているか、傷害保険をもらってます。国の税金です。働く気なんか全くないです。自分のロッカーの整理を2週間に一回するようになっていますが、雑巾を渡しても、投げ捨てて「生まれてこの方掃除なんかしたことない。死んでもやらん」って言う患者もいます。
正直コロナの患者が出た時のことは考えたくないですね。
記事配信2日後のコメント、太字引用者)
コメント③
精神科7年目の看護師です。
殴られたら蹴られたり、暴言や恐喝なんて日常茶飯事で、家族からはなぜ治らないんだ、ヤブ医者、仕事もろくにできない無能な看護師と罵られ、給料は一般科よりも低い。男性患者から体を触られそうになることもある。正直やってられないけど、拘束時間が短くて医療行為が少なく時間に余裕があることが魅力でしょうか。

知ったかぶりの綺麗事はやめてください。現場は想像以上に殺伐としています。一般社会では犯罪となるようなことが当たり前に起こる病棟です。
まぁ、自分で選んで精神科にいることも事実ですがね。
記事配信2日後のコメント、太字引用者)

自己認知に関わる病気の特性上、通常の「医師・看護師と患者」という力関係が、精神科では必ずしも成り立たないのです。ただ、これはケースバイケースなので、そこは思い込みをしないで頂きたいと思います。

共感の多かったコメントについて

そういう視点を踏まえて、Yahooの記事や、それに対するコメントを見ると、また違った見方が生まれてくると思います。

コメント④
道徳の啓蒙活動や博愛心だけでは限界がある。適正な人員配置がしてあればそれだけ看護も充実してくる。深夜勤務を2人で回している病院もある。こんなことはあり得ない。
医療費を安く済ませようとする国の責任。
記事配信当日のコメント

これが最も共感されたコメントですが、人員の問題だけではないのです。先のコメントにあったように、精神科固有の患者対応という問題があります。

コメント⑤
綺麗事だけでは済まない問題。
患者の事を考えればこのような非人道的な病院は告発されるべきものでしょう。
しかし何か問題があって入院していたのだろうから、行き先がなく家族の元に帰ったときその家族が今度は潰れてしまう。
一人暮らしの場合住宅の横に精神に病のある人が引っ越してきたら?それが攻撃性のある人だったら?
このような特殊性のある病院は国が管轄し、きちんと受け皿を作って欲しい。患者にも人権はあり、人として尊厳ある生活が約束されるように。
記事配信当日のコメント

こちらも共感が多かったコメントですが、これ、要するに、一般社会から隔離しろということで、旧来の精神医療の発想を一歩も出ていません。
こういう意見に賛同が多いと、まだまだ精神科医療の実態が知られているとは言えません。その状況で、退院促進や地域定着支援なんてできやしません。

行動制限はゼロにはできない

じゃあ、日本の精神医療を良くするためには、どうすれば良いのかという話ですが、ヨーロッパを先端事例とする意見は確かに多いです。

コメント⑥
統合失調症や双極性障がい、認知症などの精神疾患に差別や偏見を持っていた人は、来世自分も同じ病になって、そこで当事者の気持ちを知るのかもしれない。他の差別や偏見でもそのようかもしれない。ヨーロッパのほうでは既に、精神疾患は地域で診る、地域で受け入れるのが主流になっている。

現在のWHO(世界保健機関)や医療福祉の考え方でも、病を抱えた人だけが障がいではなくて、病を抱えられた人に対して適切な理解や対応ができない人や社会も障がいだと教えています。現在のWHOでは、「障がいは主として社会によって作られた問題とみなす」と考えられています。

日本の精神科医療も、ようやくオープンダイアローグなどが着目されてきていますが、病院に閉じ込めておかなくても、患者さんがもっと良い状態でいられる方法が確かにあります。ヨーロッパのいくつかの国では、それが既に実証されています。皆で学んでいきたいです。
記事配信翌日のコメント、太字引用者)

治療そのものではなく、それの人権問題をチェックする立場の有資格者から言わせてもらうと、まぁ仰ること確かにごもっともではあるのですが、前回の記事でも触れた通り、現実問題として、急性期病床(閉鎖病棟)を全廃するのは難しいです。また、今の日本社会が、かなり重い精神障害の方を包摂できるような機能を備えているかというと、それも否定せざるを得ません。
その解決策を担うのは、ソーシャルワーカー/ケースワーカー(精神保健福祉士)の役割なのですが、ケースワーカーって、病院内では力がないんですよね。何せ、病院にいるのに治療行為ができないから。

コメント⑦
コロナのクラスターも発生し、経営難から病床を削減し診療報酬の高い急性期病棟に特化するため、建て替え工事を行っている精神科病院に勤務するPSW(注:ケースワーカー)です。
この記事を拝見し、上層部の言いなりになるがまま、転院等の調整をしている自分の力のなさと恥ずかしさを強く感じました。
それでも少しでも患者様の人生が良い方に進んで頂けるよう考える事をやめずに業務にあたっていますが、残業申請をできない風潮の職場でこれ以上長時間勤務をすると自分の心が壊れてしまいそうです。

患者様へ十分な支援、治療が出来ない病院とは色々な事情や背景により、職員自身も弱ってしまい他職員を気遣う事もできない病院なんだと思います。
記事配信当日のコメント、太字引用者)

まさしく、事情や背景は病院ごとに色々で、それに対して個別に手当てをしていかないと、マンパワーだけ増やしても、解決にはならないのです。

本稿は以上です。
来週は、諸事情により(夏休みではありません)コラムの更新はお休みさせていただきます。次回の更新は、8月24日(火)を予定しております。
それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

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