向精神薬と精神科治療の科学性ー精神科の非常識・各論(2)

※注意※
本稿の内容によって発生する、いかなる不利益も、当方は責任は持ちません。

本稿では、「精神科の非常識」各論の2回目として、薬と治療について取り上げます。もし、私が当事者(家族を含む)の方に相談されたら、こう答えると思うという話です。

はじめにお断りしておきますが、これはとても難しい話です。特に薬の副作用については、自殺企図が含まれるものもあります(ただし、統計的有意性以上のメカニズムは不明です)。私は薬の専門家ではないので、ここでそれぞれの言論に対する自論を開陳することは避けたいと思います。ましてや、個別の服薬事例について良し悪しを述べることはできません。自己判断で断薬・減薬するのは非常に危険(どんな重篤な副作用が出るかわからない)なので、必ず医師の指導を仰いでください。

総論のおさらい+α

精神科の治療は、検査など客観的なデータに基づけるものではなく、精神科医が10人いれば10通りの診断がありうり、知識と経験に基づいた見立ての主観の幅が広いので、適切な見立てがなかなか難しいということでした。

お医者さんの中にも、「薬を(全く)使わない治療」を標榜するところもあります。「製薬大企業と国家権力が私利のために結託して、薬漬けの人を大量生産している!!」という方もいるくらいです(精神科に限った話ではなく、それについては深入りしませんが)。
精神科では、病気原因の診断として、”外因性”・”心因性”・”内因性”という言葉があります。”外因性”とは脳機能の損傷や障害、”心因性”とは要はストレス、”内因性”とは精神障害を起こしやすい素質のこと、をそれぞれ指します。内因性とは即ち、「正直、原因がよくわからない」というケースで、ままあるのです。ここが身体疾患と違うところです。

私は、以下のように説明しています。

手前味噌ながら、私のホームページでは、↓のように説明しています。

精神疾患の発症メカニズムは、“ストレス-脆弱性-対処技能モデル”、あるいは単に、“ストレス脆弱性モデル”と呼んだりしますが、これは、別名、ダム説とも言われます。ストレスという水が貯まりすぎて、自分の中にあるダムが決壊するのが、精神疾病の出現というわけです。ダムでもいいのですが、ここでは、コップに例えて考えてみましょう。

精神疾患は、花粉症やアトピーといったアレルギー体質のようなもので、身体というコップがストレスという水で一たび溢れてしまうと、溢れる前の自分には戻れません。今まで、意識したこともない内なるコップの存在を、否応なく意識せざるを得ないからです。問題がひとりでに解決することは、絶対にありません。

アレルギーの例えに戻ると、うつ病は、刺激→ストレス、アレルギー反応→抑うつと読みかえることができます。勿論、再発を防止することで“根治”に近づけることはできますが、自分を刺激(ストレス)の強い環境に置かない等のコントロールが常に必要になります。

あまり、科学的な説明とは言えませんね。反証可能性・因果関係・再現性があるかと言われると、なかなか怪しいです。

精神科治療の分類

病院の精神科に行くと薬をどっさり処方される、というイメージがあるかもしれませんが、服薬だけが治療ではありません。診察での患者への問いかけ方だけで、何冊も本が出版されているくらいです。医師にもよりますが、問診でも適当に聞いているわけではなく、患者との信頼関係構築から日常生活・症状や服薬習慣についてなど、患者の個別性ごとに対話の枠組みも意図的に組み立てられています。これは、”精神療法”とも呼ばれます。
待ち時間が短いところは、診察時間は5分程度というところもよくあります。そういうところでは、精神療法はなく、薬物療法のみであると言って良いかと思います。「医者の仕事は、薬を出すこと」という医師もいます(良し悪しの話ではありません)。逆に、患者の話を聞いてくれるところは、待ち時間が1時間単位です(私は最大で4時間待ったこともあります)。待つ方も大変ですが、待たせる方も大変です。どちらが良いかは、その人次第なので、一概には言えません。

どの薬をどう使うかというのも治療方針の大きなテーマになります(私も、担当医の異動で転院して、飲む薬の種類がごっそり変わったことがあります)。同じうつ病でも、徹底的休息が必要な急性期と、症状がある程度安定している慢性期では、当然、治療の中身も変わります。使う薬の種類だけではありません。日常の過ごし方・生活習慣に対する指導も含みます。例えば「気分が悪くなければ運動しましょう」とか、「寝る前のスマホは不眠につながるからやめましょう」とかですが、これも立派な治療です。

”精神療法”というのは、薬物療法以外の全ての治療法を指しますが、心理療法のことだと考えて良いと思います。心理療法とは、ざっくり言うと、患者の心や感情・考え方に働きかけることで、症状の低減を図るものです。パッと思い浮かぶように、色々なメソッドがあります。
最も有名なのは、日経の連載でもおなじみの大野裕さんが日本の第一人者である、”認知行動療法”でしょう。「物事に対する認知の仕方を偏りなくし、それを現実の行動につなげる心理療法」と説明されます。認知行動療法学会という学会があるくらいなので、それだけでとても奥深い専門性があるものですが、ものすごくざっくりメカニズムを述べると、自分の認知(物事の受け止め方)の極端さに気づき、それを修正することで、精神症状の発現や程度を減らそうというものです。これは、診療というよりは、心理カウンセリングや、”精神科デイケア”と呼ばれるリハビリプログラムなどでやることが多いです。

向精神薬のメカニズムと副作用・依存性

うつ病の発現について、よくいうメカニズムは、”セロトニン仮説”です(あくまで、”仮説”であることに留意されたい)。脳の中で情報を伝達する際に必要な神経伝達物質(セロトニン)が不足すると、うつ病が生じるのではないかという考えです。抗うつ薬の代表格である” SSRI”は、”選択的セロトニン再取り込み阻害薬”と呼ばれます。
精神科の薬の多くは、内科の薬のように、血液検査などで直接、効果を測定しているわけではありません。まさか、人間の頭蓋骨を開いて脳内物質の分泌を直接測定するわけではありません。同じストレス状況下でも、大丈夫だった人と、病気になってしまった人がいる理由を、直接は説明できないのです。ここが、身体疾患と比べて、科学性が薄くなるところです。

精神科の向精神薬は特に、副作用や依存症のリスクがあります。特に、”ベンゾジアゼピン系”(通称”ベンゾ系”)と呼ばれる薬は、効果がてきめんな反面、これらのリスクも高いとされています。
向精神薬の副作用は、冒頭に述べた自殺企図も中にはありますが、主なものは吐き気とか頭痛とか口が渇くとか朝起きられないとか、そういう身体症状です。不安やイライラなどの精神症状が出ることもあります。一方、依存症というのは、飲まないと離脱症状(減薬による病状悪化や別の副作用)が出る、もしくは薬物耐性ができて、同じ薬の量では効かなくなることを指します。

ここからは私見です。

私は、薬を「飲む/飲まない」「増やす/減らす」より、もっと大事なことがあるのではとも思います。
もし、病状と服薬量が安定しているのならば、わざわざ辛い離脱症状を我慢してまで薬をゼロにする必要があるのか、という考え方があります。一方、いくら症状が落ち着いていても、脳内に作用する麻薬みたいな薬は飲みたくない、という考え方もあります。
こればかりは、その人の人生観と担当医の治療観です。自分は服薬ゼロにしたいのに、主治医は薬を出し続けてくる、というケースもあります。そういう場合は、セカンドオピニオン(最善だと思える治療を患者と主治医の双方が判断するために別の医師の意見を聴くこと)という方法もあるでしょう。
一方で逆のケースは、医薬品・医療機器などの審査関連業務などを行う、”医薬品医療機器総合機構”が注意喚起するところの、”漫然とした継続投与による長期使用”に繋がってしまう危険性があります。とても難しいところです。

本稿は以上です。
繰り返しになりますが、服薬内容に関しては、必ず主治医の指導を仰いでください。それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

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