精神医療の基礎知識ー精神科の非常識・総論

今回から、「精神科の非常識」と題したシリーズを始めます。全4回の予定です。本稿では、「総論」として、精神科についての基礎知識を、”入院形態”・”治療と薬”・”産業メンタルヘルス”という、3つの切り口から整理します。

※注意※
本稿の内容によって発生する、いかなる不利益も、当方は責任は持ちません。

入院形態

精神医療特有の問題点として指摘されるものの一つに、入院形態の特殊性があります。うつ病で入院というケースは、あまりありません。精神科で入院する場合は、統合失調症の割合が大きいです。精神科の入院には種類があり、”任意入院”・”医療保護入院”・”措置入院”・”緊急措置入院”・”応急入院”の5つに分けられます。

”任意”入院という言葉があるということは、それ以外の入院形態は、任意ではない、即ち患者本人の意に反して強制入院させる仕組みだということです。これは、患者に”自傷他害の恐れ”があるときや、”急速を要するとき”に、認められています。具体的なシーンで言えば、統合失調症による強い幻視・幻聴で、刃物を振り回してしまっていたり(そういうことはそう頻繁にはありませんが)、認知症が進行して本人の安全が確保できない場合などがあります。

それが、他の4つです。もちろん人権侵害以外の何物でもありませんから、強制入院させるには厳格な要件があります。具体的に、例えば”措置入院”は、”精神保健指定医”という、厚労大臣の認定を受けた医師、それも複数の医師の診察と都道府県知事の決定が要件となっています。その診察要件が満たされなければ、入院期間に制限がある”緊急措置入院”や”応急入院”になります。このあたりの制約条件の違いによって、強制入院形態に種類があるのです。

”医療保護入院”は、家族の同意があれば、精神保健指定医1人の診断で、強制入院を継続させることができます。本来的には、明らかに治療が必要なのにも関わらず、意思疎通困難などで受診が難しいケースなどに用いるものです。
ただ、これは制度の抜け穴と言いましょうか、家族の同意というのが、病気ではなく家族関係のトラブルに起因するものであるケースがあることも、実例として指摘されています。また、精神保健指定医1人の判断で良いため、強制入院が長期化している実例も、人権問題として問題視されています。このあたりのことは、次回、詳しく触れます。

治療と薬

ここでの要点を先に言ってしまうと、「精神科の薬は薬物と同じであり、薬物に頼った医療は、患者を生涯薬漬けにすることであり、治療とは言えない」という意見があるのです。私はその立場ではないですが、そう思っても無理がないこともあります。これについて、医師免許を持っているわけでもない私が断定的な主張をすることはできませんが、ここでは、臨床での一般な見方であろうことを述べたいと思います。

確かに、精神科の薬には、依存のリスクが高いものもありますし、副作用が大きく出る場合もあります(これについては、稿を改めて触れます)。自殺との因果関係は明確ではありませんが(そもそも、自殺のメカニズム自体が明らかではありませんし)、重大な副作用として挙げられることもあります。

精神科の治療は、検査など客観的なデータに基づけるものではありません。精神科医が10人いれば10通りの診断がありうるので、これを以て、「精神科の治療はインチキだ」という意見もあります。ただ、適切な治療は、知識と経験に基づいた医師の見立てを要するものであり、それが医師の主観によることは、身体疾患など他の病気と同じだと私は考えています。ただ、その主観の幅が広く、適切な見立てがなかなか難しいのです。

「昔は精神科なんてなかったのだから、そもそも精神医療なんて不要なのだ」という意見もあります。精神科の薬が出てきたのは、20世紀後半になってからのことですが、それ以前は、症状の激しい統合失調症の人には、頭から水をぶっかけたり、座敷牢にぶち込んだりしていたのです。つまり、表に出てこなかっただけであり、一定割合の有病者はいたのです。

現在の精神科ブームについては、行き過ぎている部分もあると思いますが、例えば産業メンタルヘルスの分野で言えば、ビジネスゲームを戦うメンタルの能力は、人間の本能にはそもそも備わっていないのです。従って、”ゲーム”が激しくなるにつれて、そこで健康ではない状態が発生するのは、おかしくはないと私は考えています。

産業メンタルヘルス

精神科特有の領域として、近年、その役割が大きくなっているものに、産業精神保健分野があります。企業と医療をつなげるのは、医療機関だけではなく、”EAP”(Employee Assistance Program, 従業員援助プログラム)を冠する企業の役割も大きくなっています。社員の健康管理について、ストレスチェック・カウンセリング(電話・メール・対面)・医療勧奨(不調者に医療受診を促す)・メンタルヘルスの教育研修・人事や管理者へのコンサルテーション(対処法の助言・サポート)・復職支援プログラムなど、必要な対応が多岐に及び、いち企業の手には負えなくなっていることから、これらを外注しており、大企業で導入しているケースが見られます。

医療・福祉領域でも、それほど認知度の高いものではまだありません(精神保健福祉士の養成課程や国家試験でも、取り扱うことはまだありません)。最近は、”メンタルヘルス・マネジメント”の資格が注目されているので、こちらは聞いたことがあるかも知れません。民間資格ですが、今後、業界ステータスになるのではと私は見ています。

心の健康管理の流れとしては、”1次予防”(未然防止と健康増進)・”2次予防”(早期発見と対処)・”3次予防”(治療と職場復帰、再発防止)を、労働者個人の”セルフケア”のみならず、職場管理者の”ラインケア”や、企業経営の仕組み造りまで、整備しようというものです。対象と段階によって、必要なアクションが異なります。これらの単語は、知っている方も多いかも知れません。

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以上、”入院形態”・”治療と薬”・”産業メンタルヘルス”という、精神科特有のトピックについて、概観してきました。次回以降は、これらの各論を詳しく見ていきます。

本稿は以上です。
それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

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