最低限押さえて欲しい、うつの基礎知識

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

うつ病に関して、専門職にとっては「そんなの当たり前だろ?」と思うことも、その知識は意外に社会に浸透していないものです。年頭に当たって、本稿では、その一部を解説します。

「うつは心のガン」

「うつは心の風邪みたいなもの。誰にでもなりうる可能性がある」という説明をよく聞きますが、そんなに生易しいものではありません。人によっては何年にも亘って、辛い気分の落ち込みや鉛のように身体が重い症状が続く、とても辛いものです。ましてや、「うつは甘えだ」なんていうのは論外です。労務ストレスでうつになるのを見たりすると、「最近の若者は打たれ弱い」なんて言いたくなるのかも知れませんが、発症率は15⼈に1⼈くらいと⾔われています。「メンタルが弱いから」なるのではないのです。あなたの隣の席の人が発症しても、決して珍しいことではないのです。

これから、自分はどうなってしまうんだろう?
状態がちょっと良くなって復職しても、また毎日の仕事のストレスで、うつに戻ってしまうのではないか?自分の面倒を見てくれる人がいなくなったら、人生終わりじゃないだろうか?
毎日、そんな不安と怖さが頭の中をぐるぐる回るばかり。病状はなかなか良くならず、焦りばかりが先行する_

外から見たら、寝てばかりのように見えても、その人の中では脳内が高速回転しているのです。だから、いつもぐったりしているのです。

完治と寛解の違い

精神疾患では、“完治”という言葉はまず使いません。“寛解”という言葉を使います。つまり、状況が悪くなったら、再発するリスクが高いのです(うつ病の再発率は50%、再々発率は70%、再々々発率は90%と言われています)。したがって、うつ病を始めとする精神疾患は、「治す」ものではなく、「コントロールする」「付き合う」ものであると、私は考えています。丁寧な診察をする先生ほど、「治る」という言い方にはとても慎重です。

寛解とは?
治療をつづけながら、病気の症状がほぼ消失した状態です。 このまま(治療をやめ)治る可能性もありますが、再発する可能性もあります。再発しないように、治療の継続や定期的な検査が必要です。
完治とは?
治療を終えても、病気の症状が消失した状態です。

寛解はゴールではなくスタートとすら言えます。そこからいかに寛解をキープできるかが、肝心です。

診断の仕方

精神科の診断では、DSM-5という、アメリカ精神医学会が出版している、精神疾患の診断基準・診断分類を用います。(専門的な部分になりますので、今一つ興味がない方は、ここは読み飛ばしていただいて結構です。)

A: 以下の症状のうち5つ (またはそれ以上) が同一の2週間に存在し、病前の機能からの変化を起している; これらの症状のうち少なくとも1つは、1 抑うつ気分または 2 興味または喜びの喪失である。 注: 明らかに身体疾患による症状は含まない。

1. その人自身の明言 (例えば、悲しみまたは、空虚感を感じる) か、他者の観察 (例えば、涙を流しているように見える) によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。注: 小児や青年ではいらいらした気分もありうる。
2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退 (その人の言明、または観察によって示される)。
3. 食事療法中ではない著しい体重減少、あるいは体重増加 (例えば、1ヶ月に5%以上の体重変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加。 (注: 小児の場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ)
4. ほとんど毎日の不眠または睡眠過多。
5. ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止 (ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではなく、他者によって観察可能なもの)。
6. ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退。
7. 無価値観、または過剰あるいは不適切な罪責感 (妄想的であることもある) がほとんど毎日存在(単に自分をとがめる気持ちや、病気になったことに対する罪の意識ではない)。
8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日存在 (その人自身の言明、あるいは他者による観察による)。
9. 死についての反復思考 (死の恐怖だけではない)、特別な計画はない反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画。

B: 症状は臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C: エピソードが物質や他の医学的状態による精神的な影響が原因とされない。

身体疾患と比較して考えれば、これを臨床で使うのは熟練を要するということは、容易に想像がつきます。実際、DSMの”科学性”を否定するもあります。

精神疾患の発症メカニズム

うつの原因は、正直、「よくわからない」のです。脳内物質の影響が言われていますが、それは発症時に起こる”現象”であって、”原因”の説明ではありません。遺伝性も指摘されていますが、詳しいことはわかっていません。ただ、発症メカニズムのモデルとされているものはあります。

これは、“ストレス-脆弱性-対処技能モデル”、あるいは単に、“ストレス脆弱性モデル”と呼んだりしますが、これは、別名、ダム説とも言われます。ストレスという水が貯まりすぎて、自分の中にあるダムが決壊するのが、精神疾病の出現というわけです。ダムでもいいのですが、私は、コップに例えて説明しています。

精神疾患は、花粉症やアトピーといったアレルギー体質のようなもので、身体というコップがストレスという水で一たび溢れてしまうと、溢れる前の自分には戻れません。今まで、意識したこともない内なるコップの存在を、否応なく意識せざるを得ないからです。
うつ病は、刺激→ストレス、アレルギー反応→抑うつと読みかえると、理解がしやすいと思います。勿論、再発を防止することで“根治”に近づけることはできますが、自分を刺激(ストレス)の強い環境に置かない等のコントロールが常に必要になります。

治療方法概説

まず、精神疾病の治療は、薬物療法と精神療法に分かれます。
薬物療法というのは、その名の通り、服薬によって、治療を進めるものです。服用するのは、抗不安薬とか向精神薬とかです。文字通り、不安を沈めたり、気持ちをジャッキアップしたりする効能があります。一般的には、半年〜1年単位のスパンで飲み続けるものです。飲んだらすぐ症状が治るようなものではありません。口の中が渇いたり、身体がそわそわしたり、などなど副作用も人それぞれなので、自分に合った薬を見つけるのは、ドクターの経験・勘と、トライアンドエラーの部分が正直あります。また、症状が良くなったからと言って、自己判断で中断してはいけません。段階的に慎重に減薬していく必要があります。

一方、精神療法というのは、患者の意識や感情に働きかけて、回復を目指すものです。定義としては、薬物療法以外の全ての治療法を指します。
最も有名なのは、”認知行動療法”です。日経新聞の「こころの健康学」を連載している、大野裕先生が日本での第一人者です。専門的には、「認知(ものの受け取り方や考え方)に働きかけて気持ちを楽にしたり、行動をコントロールしたりする治療方法」などと定義されています。「認知のかたより」「考え方のくせ」という言葉は、聞いたことがあるかも知れませんね。

「うつの治し方が書いてあるブログですか?」って、え?

以上の基礎知識を踏まえれば、医師でもない私が、自らの経験値だけで、「〜〜すれば、うつは必ず治る」なんて無責任なことは言うことはできないことがご理解いただけるでしょう。精神保健分野でよく言われるのは、「患者の”個別性”に寄り添う」ということですが、これは裏を返すと、病状も予後も患者の数だけあり、千差万別ということです。

同様に、ご家族に求められる接し方も、ケースバイケースです。例えば、以下を参考にされてみてください。

治療のゴールは、”コップ”を空にすることではありません。人生には程よいストレス(コップに貯まる水)が必要であると言われています。いかに、日頃からコップの水位をモニタリングし、再発を防ぐかが肝心です。再発を繰り返すと、コップ自体が割れやすくなってしまうと言われています。繰り返しになりますが、寛解した後は、再発しないように留意することがとても重要なのです。


本稿は以上ですが、追記の可能性があります。
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それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

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