精神科の常識は、世間の非常識。人権侵害は日常風景。例えば…

精神科には、強制入院の仕組みがあります。精神保健指定医と呼ばれる認定医であれば、”措置入院”と言って、本人の同意なしに精神科病院に強制入院させることができます。もちろん、条件は付いていて、
「自傷他害の恐れがあること」
「都道府県知事の決定があること」
「2人以上の精神保健指定医の診察があること」
などが必要です。

はっきり言って、人権侵害以外の何物でもありません(それが、普通の感覚でしょう)。しかしながら、その人や周りの人の生命・安全を守るためには、そうせざるをえない場合が、現実としてあります。
よく例に出されるのが、統合失調症(昔でいう、精神分裂病)の方に陽性症状が出てしまい、ひどい幻覚・妄想から、刃物を振り回している、といった状況です。
このような場合、本人の同意を得ることは無理です。親族がいれば、親族の同意で入院させることもできます(こちらは、”医療保護入院”と言います)。
また、もっと状況が差し迫った場合は、”緊急措置入院”と言って、72時間に限って、1人の精神保健指定医の診察で強制入院をさせることもできます。

人権侵害と指摘されるのは、強制入院だけではありません。
入院しても、身体拘束や隔離をすることができます。
例えば、重度の認知症の場合、夜間にベッドから離れることが生命の危険に直結する場合があります。議論はありますが、現実問題として、ベッドへの身体拘束をすることがあります。
また、不安症状が強い場合などは、”保護室”(という名の隔離室)に入れることもあります。こちらは、患者さん自らが希望して、そうなることもあります。私は、そのレベルでの不安症状を起こしたことがないので、実感としては、正直わかりません。

もちろん、医療側も、これらは適切なレベルで行わなければならないという認識は常に持っているので、院内に、”行動制限最小化委員会”を設け、非・医療職(精神保健福祉士(ソーシャルワーカー)などの福祉職など)による第三者チェックが行われています。これらの人たちは、”病院の弁護士”などと言われることもあります。

更に言えば、イタリアのように、精神科病院そのものを無くしてしまった国もあります。地域社会・コミュニティが患者の受け皿になる仕組みが十分整っているから、可能なのです。日本のように、地域社会がだんだん衰退していっている国だと、正直、難しいものがあります。参考資料を貼っておきます。

一方で、日本では、”社会的入院”と言われるケースが、少なからずあります。精神障害の方が、地域で暮らすことが不可能な場合(もちろん、引き取ってくれる親族もいない)、入院が必要なレベルではないにも関わらず、任意入院することが、ままあります。

よく、「精神障害者は、健常者よりも犯罪率が低い」ということが挙げられます。強制入院の制度が、社会的にどこまで合理的なのかは、議論の余地があるようです。ただ、残念ながら、殺人などの重大犯罪になると、有意な差異が出てしまうようです。


さて、事前説明はこれくらいにして、本稿でこの問題を取り上げたのは、以下のような記事が出たからです。

この記事を書いたのは、読売新聞の”医療ルネサンス”を執筆し、『精神医療ダークサイド』などの書籍も出されている、佐藤光展さんです。精神科界隈では名の知れた方です。

さて、その記事を見ていきましょう。

患者たちの反撃が始まる──。過剰な投薬や強制入院、身体拘束などで、当然のように人権を侵害されてきた精神疾患の患者たちが、人として当たり前の権利や自由を守るために、自ら立ち上がろうとしているのだ。…ピアサポーター主体の同種の組織は前例がなく、全国への波及効果が期待される。

私の知る範囲でも、このような取り組みは聞いたことがないですね。

投薬については、難しいところです。私は医師ではないので、細かい実状はわかりません。ただ、統合失調症などになると、びっくりするぐらいたくさんの種類の薬を、毎食後に飲まなければなりません。分包しないと、服薬漏れがあるくらいです。それだけ飲んでいると、減薬も相当慎重に行わないと、離脱作用が大きく出てしまいます。

どういう医療が、その患者さんに対して適切かどうかは、非常に難しいところです。患者さんの数だけ、答えがあると言っていいかも知れません。

さて、内容に入っていくと、

・精神医療で傷ついた人々が立ち上がる
・人権侵害を信じてもらえず…
・精神科は「収容所」ではない
・病院とも良好な関係を築く

これらの小見出しを見ると、プロフェッショナルの私などは、大体どういうことが書かれているか、想像することができます。

1】不当な行動制限がされている。それをしかるべき外部に通報しても、状況は変わらない。
2】役所に言っても、「病院側が決めたことですから…」と取り合ってもらえない
3】家族関係の問題などは、ケースワーカー/ソーシャルワーカーさんにきちんと調整・支援してほしい。
4】医療側は、本来、患者の敵ではない

概ね、そんなところでしょうか。

1】について。精神科病院では、不当な行動制限を外部機関に相談するための公衆電話の設置が義務付けられています。それをやっても駄目だったということは、その外部機関が機能していないということです。

2】について。事なかれ主義のお役所対応ですね。担当者・担当部署の意識向上が必要です。

3】について。こういう治療以外の問題は、医療側(病院)が解決することではありません。役所や相談支援機関などのケースワーカー・ソーシャルワーカーの領分です。

4】当たり前ですが、精神科に限らず、医師は患者の味方であるはずです。患者の意に沿わない医療がなされているとすれば、それはその医師や医療機関の資質の問題と、その患者との相性の問題でしょう。

そして、実際には、これらの問題が複合的に絡み合っているでしょう。それを解決するのが、我々ソーシャルワーカーの使命であるはずなのですが…。

来年1月26日にはプレイベントとして、「医療者に身体拘束の苦しみを味わってもらう体験会」を計画している。 

私は、所用があるので参加できませんが、ご関心のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。

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精神科キャリアカウンセラー。メンタル疾患からの復職を目指す方の、キャリア構築支援をしています。精神保健福祉士、国家資格キャリアコンサルタント・CDA、WLBコンサルタントなどのライセンスを保持。ホームページ→http://s-yam-gucci.jp
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