※ネタバレ注意!※「コロナが問う福祉政策」を読む(日経朝刊 やさしい経済学)

ビジネスパーソンなら、日経の”経済教室”は毎朝チェックしておきたいですね。
本稿では、今、当欄 ”やさしい経済学”で連載中の、「コロナが問う福祉政策」を取り上げます。
連載の浦川邦夫先生は、格差問題や貧困問題がご専門です。私の主な関心は障害者福祉なので、やや専門がズレますが、日経の”やさしい経済学”を別のスペシャリストが読み解くという機会はあまりないと思うので、ご参考にしていただければと思います。

記事を読む前に

”医療・福祉政策”と言っても幅が広いですが、コロナで言えば、医療体制の整備が医療政策で、経済的窮困に対する手当てが福祉政策、ということになります。実際には、両者は不可分の関係にありますが、学術理念的に言えば、このように区分できるでしょう(もっと学問的な定義はありますが、これ以上は省略します)。

医療と福祉の違いを、明確にしておきます。
ひと言で言うと、治療は医療の領分であり、生活・就労支援などは福祉の領分です。実際には、福祉職でも受診前の受理面談など医療のサポートはしますし、医療職(医師)でも就労に即して診断書を書いたりしますから、両者は相互に関わり合っています。「自分は福祉職(ソーシャルワーカー)だから、治療のことは知らん」では、社会のニーズに応えているとは言えません。

では、連載内容を見ていきましょう。

コロナが問う福祉政策(1) 疫病の襲来と平時の備え

まず、過去の疫病に対してわが国がどのような政策対応をとってきたのかを、改めて振り返ります。

日本は、「世界に誇る」と言われる、国民皆保険・皆年金制度を持っています。例えばアメリカでは、日本の健康保険に相当するものはありません。”オバマケア”(米国のオバマ前大統領が推進した医療保険制度改革法)が頓挫しているのが、その最たる例です。貧困層ほど無年金で、医療機関にかかるのみならず、救急車1台を呼ぶのにも躊躇う現実があります。

コロナが問う福祉政策(2) 雇用者の間の「格差」

20年10月の完全失業者は約215万人(原数値)ですが、雇用保険基本手当の受給者実人員は約50万人で、カバー率は25%以下です。…失業状態にあっても雇用保険を受給していない人の多くは、そもそも受給資格がないというケースです。このため契約社員の約2割、パートタイム労働者の約4割、臨時労働者の約8割が対象となっていません。失業リスクが高い雇用形態にもかかわらず、雇用保険のセーフティーネットから外れているのです。こうした現状に向き合う必要があります。

制度設計時に、そもそも、非正規雇用形態のみで生計を立てるという生活モデルは、想定していませんでした。”フリーター”なる言葉は、最近出てきたものです。言葉がなかったというのは、そういう概念が社会の側になかったことを意味します。近年、フリーターでも加入できる社会保険が出てきています。一番、ちゃんとした解説記事は、これ↓↓でしょうか。

働くときの基礎知識 - 全国社会保険労務士会連合会

この記事↓↓なども、フリーターの方は一読の必要があるでしょう。

コロナが問う福祉政策(3) 医療供給体制と健康寿命

医療需要が急拡大している地域で、医療資源(人材、設備、施設など)を迅速に増やすには、国の財政支援とともに、医療機関の役割分担と連携が欠かせません。現場の切実な情報を伝えるメディアの役割も重要です。

ニュースワイドショーが悪いとは一概には言えないと思いますが、必要でない不安を煽ってしまっているのも事実です。WHOのパンフレットでも、メディアから距離を置くことが推奨されています。

不安を煽るようなメディアを見る時間を減らして、心配や焦りも減らしましょう。(和訳:千葉大学病院精神神経科 新津富央先生、原文

書斎のデスクにテレビを引くほどのテレビ好きの私も、毎日コロナ一色の報道にうんざりし、テレビを見るのをほとんどやめてしまいました。まさに、生活習慣が変わってしまいました。元に戻ることはないかもしれません。

コロナが問う福祉政策(4) 生活困窮者への対応策

厚生労働省によると、(住居確保給付金の)20年4~9月の累計支給件数は10万3918件と、半年間で19年度の支給件数の約26倍になっています。感染拡大の影響の長期化で、これらの制度の利用期限を越えても生活再建が立ち行かない人が多数発生することが懸念されています。特に、生活の基礎となる住宅については、さらなる政策対応の強化が重要です。

厚生労働省も、「生活困窮者自立支援における新型コロナウイルス感染症の影響と対応について」という資料を、12月17日付けで出しているので、より詳細な内容は、そちらを見るのが良いと思います。

(内容)
・ 緊急小口資金等の特例貸付
・ 住居確保給付金の支給
・ 住まい対策の推進
・ 自立相談支援機関の機能強化
・ 緊急小口資金等の特例貸付と自立相談支援機関・生活保護制度との連携
・ 年末年始の対応

コロナが問う福祉政策(5) 生活保護の資産保有条件

(12/31追記)
この回は生活保護についてでした。

子育て世帯には金融資産の少ない世帯が多く、資産要件(※貯蓄・持ち家・乗用車の保有制限など)の緩和が、要保護世帯数の増加に与える影響が比較的小さいことを示しています。生活保護制度の目的の一つである自立の促進に向け、資産保有の条件について政策検討の余地があることを示唆しています。…
若年・壮年の子育て世帯には、就労は可能でも、その所得が低水準で追加的な金銭的支援を必要とする世帯が存在します。保護基準の資産要件を緩和しつつ、同時に家計の消費・貯蓄計画に関する有用な知識・情報を提供して、保護の早期脱却を促す方策の強化が求められます。

コロナが問う福祉政策(6) 緊急事態下での医療

(12/31追記)
この回はトリアージについてでした。トリアージについては誤解も少なくないようですが、その本質は命の選別であり、綺麗事とは対極にある方法論です。

医療資源の配分については(1)致死的な疾病の救命に関する治療を優先する(Rule of rescue)(2)一定の年齢に達した高齢者は治療の優先度を低くする(Fair innings rule)(3)重症度の高い人々の治療を優先する(Egalitarian rule)(4)生存における質と量を考慮した指標「QALY(質調整生存年)」で優先順位を判断する(Principle of proportional shortfall)――などのルールが考案されています。

コロナが問う福祉政策(7) ベーシックインカムの可能性

(12/31追記)
最終回は、ベーシックインカムでした。なるほど、そう来たか、という感じです。BIについては、まだまだこれからの議論ですね。

BIは「職業上の地位、職歴、求職の意思、婚姻上の地位とは無関係に、全ての人々に無条件で支払われる所得」です。…
BIの本格的な導入には、様々な壁があります。第一に、自分が納めた税金を財源に働いていない人に所得保障するのはフリーライダー(ただ乗り)容認となり、感情的に許せないとの批判です。市場経済で所得を得ることに価値を見いだす人々の感情が、BI導入では問題となります。
第二に、支給額にもよりますが多額の財源が必要となることです。筆者の試算では、生活保護基準と同額のBIを全ての国内居住者に給付するためには、人々の労働供給に与える影響を中立としたケースでも40%程度の所得税率(定率)に相当する財源が必要です。


アフターコロナに際しては、リスクマネジメント的に、以下の記述が肝要です。有事になってからでは、対応が遅いのです。

緊急時の対応に向けた医療・介護体制がもたらす社会的価値を平時から積極的に評価し、平時の医療・介護に一定の余力を持たせる仕組みを整備しておくことも必要です。((3)「医療供給体制と健康寿命」より)

以上、読み解くお役に立てれば、幸いです。
年内は連載が続くでしょうから、続きにも期待しましょう(余力があったら、明日以降追記するかも→追記しました(12/31))。

以下は蛇足です。

菅政権の誕生で、総理が口にした「自助・共助・公助」という言葉が話題になり、「自助に頼るのは政府の責任放棄だ、けしからん」と言った論調が見られます。しかしながら、これ自体は社会保障の教科書の一番最初のチャプターに出てくる、基本的な概念です。共助は社会保険、公助は生活保護が例です。何も真新しい議論ではなく、このような論調は勉強不足の謗りを免れません(本稿で、政治の良し悪しを議論するつもりはありません。念のため)。


本稿は以上です。本年のコラム更新は本日が最後です。新年は、1月4日(月)に更新予定です。今年も、お読みいただきありがとうございました。みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。来年は1日も早く、コロナが収束しますように…。

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