見出し画像

【頷き過ぎて、首がちぎれそう】⇒「福祉人材のパラダイムシフト」(日本社会福祉学会)

福祉人材のパラダイムシフト」という論文が、日本社会福祉学会のページにアップされている。著者は、ヤフー出身という福祉業界では異色の経歴を持つ、株式会社アイム代表・佐藤典雅氏である。いかに福祉業界の人材が閉鎖的・硬直的で世間離れしているか、痛感させられる内容だ。今朝閲覧したが、頷き過ぎて、週初めの朝から、首がちぎれそうである。

さっそく、論文本文をチェックしていきたい。

「面接者の9割以上が手書きの履歴書を持参される。」

アイムでは面接申込はオンライン経由であるが、電子ファイルで履歴書を送ってくるのは福祉外の面接者のみである。福祉人材に手書きの理由を効くと「熱意が伝わるから」だという。これは仕事のスタンスにも現れており、現実的な効果よりも精神論を重んじる傾向にある。

もう、『失敗の本質』を読んでいる気分である(ていうか、この超名著の存在すら、福祉業界では知らない人がほとんどかと思われる)。
応募者の立場から言うと、PC作成の履歴書を出すことが怖いのである。なぜなら、手書きでないという理由だけで落とされる可能性があるからである。

「私、パソコンだけは触れません」という比率が高かった。実際に家に PC すらないケースが多く、利用者との重要なコミュニケーション ツールであるスマホやタブレットに苦手意識を持っている方の多さには頭を抱えた。以前の福祉事業所での様子を聞いてみると、ずっと手書きの書類を重視して効率性は問われなかったようだ。

この業界のPC環境のお粗末さは、想像を絶する。私の勤務していた院内では、PC管理を外注していたにも関わらず、無線LAN環境下でもウイルスソフトすらインストールされていなかった。それを指摘したら、「担当者に一任しているから」。ITリテラシーのなさは、本当にひどい。利用者情報が漏れたら、どうするのだ?

「オペレーションを硬直化させてしまうマインド」

利用者のニーズよりも自分の価値観・運営側の理屈を押し付けようとする傾向が見られる。例えば就労支援で作業中音楽を聞いてはいけない、という謎のルール。グループホームでは食事開始の時間だけでなく、退席の時間まで決められている。こんなことを自分の家でやられて喜ぶ人はいないだろう。管理という名目でサービス提供側の都合を押し付けることにより、福祉運営が硬直化した状態となっている。
(太字引用者)

まぁ、一般企業でも、ベンチャーでもない限り、業務中のイヤホンなんて論外だろう。大学院生時代には、iPodで交響曲を聴きながら作業をしていた方が、むしろ仕事のペースが上がったものである。大企業でないからこそ、柔軟な勤務ルールが導入しやすいはずだが、そうはならないのが、福祉業界の硬直ぶりを象徴している。

この業界はハンコ漬けである。

アイムで準備している書類には関係者が住所や名前を書く回数にも注意を払っている。契約書や管理表に記入する箇所を1箇所でも減らすように努力している。また記録の二重入力は単純に効率化を阻害し間違えのリスクを増大させるため、保護者との連絡帳、日誌、 行政へ提出する実績の一本化に努めている。

この業界はハンコ漬けである。私が専門学校を卒業する時に、卒業記念品としてハンコをもらったくらいである。誰が書いた記録か明確にするためにいちいちハンコをつける。記録の二重入力なんて、ザラである。管理する部門が違うので、文書ごとに同じ内容を記入する(もちろん、手書き)のである。それで日々の業務時間の大半が潰れる。

全ての利用者の住所はクラウドで管理されており、送迎車に設置してある端末で道順を覚えることなく送迎ができるようになっている。またスマホで日々利用者との写真を撮り、ブログやインスタグラムで家族に公開。アイムでは IT を積極的に導入し、福祉サービスのレベル向上を目指している。

ここまでイノベーティブではなかったが、「施設内書類をクラウドで共有すれば、いちいち車で移動しなくても良くね?」という企画書を出したら、人事から電話がかかってきて「もっと協調性を!!」とか意味不明なことを言われたこともある。企画書自体は、上司の指示・許可を得ていたにも関わらず、である。

「何はともあれ、傾聴」という考えが阻害している。

(利用者と)ダラダラと長電話になる傾向が散見されたため、仕事も保護者からくる電話も効率的に議論を進め結論を出せるよう、15 分ルールを定めている。あらかじめ時間を縛ることで「課題の要点」「解決策の提案」を効率的に考える思考が身につく。特に利用者ご家族との長い電話は互いの気力・士気を奪うばかりでなく、複雑化していくことが多かった。

これは、「何はともあれ、傾聴」という考えが阻害している。”傾聴”というこのマジックワードは、”効率的な情報のやりとり”という発想とは、水と油の関係である。相手の話をまとめようとしたりすれば、「利用者に寄り添っていない!」と怒られる。
私の実習経験については、何度か書いているが、能動的に会話しようものなら、「あなたは、最も基本の”傾聴”ができていない」と言われる(それも、こちらから面談を申し入れるまで、放置されていた。今は怒りを通り越して、呆れるばかりである)。

福祉で使わせていただいている報酬はもともと国民の税金である。福祉事業者に必要なのは、その大切な税金の有効活用だと考えている。正しく利益を出し、正しく再投資し、質の高い福祉サービスを継続していく。この当たり前な感覚が福祉業界には不足している と感じている。

それが、「医療・福祉は、”サービス”ではない。”支援”だ」とか頓珍漢なことを言う人もいるくらいだから、一般人が聞いて呆れる。少しでもビジネス用語を用いようなものなら、村八分である。

(3)スタッフの自己肯定感向上施策
①オシャレ(ネイル、ピアス、金髪など)推奨
スタッフが輝いていれば
利用者も明るくなる。
②美容室手当
それはまわりまわって
利用者の笑顔を大きくすることにも
繋がっていっている。
③趣味を持ち込む
スタッフが希望する道具、玩具、設備
などに出費を惜しまない。
④ハロウィーン手当
仮装のために一人五千円の手当を出している。

素敵な試み!これくらい楽しんで仕事をしないと、利用者も楽しくならない。福祉は、本来、楽しいものでなければならない。ガチガチにルールで縛って、楽しいワケが無い。

論文は、こう締め括られている。

(6)福祉は「資格」ではなく「人」に付随する
福祉に入ってくる次世代の人材を既存の福祉ルールにあてはめるのではなく、今ある課題や制約を取り除きながら、環境を整える努力が私たちの側にも必要である。時代が大きく変化しているなか、福祉業界も行政も共に変化する必要がある。福祉を再設計しなければ、今後の福祉人材を再設計することはできない。福祉人材に今必要なのは「視点の変化」つまりパラダイムシフトである。
(太字引用者)

私も一般企業から福祉の世界に入った、ビジネス経験者である。ここで取り上げられた試みは、とても素晴らしく、共感できるものである。私は、正直、新卒で福祉業界に入るのは危ないとすら思っているが、他業界から福祉業界に入る人の割合は大きくはない。

本稿を読んで思い当たることが少しでもある人は、全文を読んでいただきたい。医療・福祉関係者必読の論文である。

【論文目次】
1.アイムが直面した福祉人材への違和感
2.福祉業界の発展を阻む固定観念
(1)一方的な「想い」を押し出す
(2)IT が苦手
(3)地味を美徳とする気質
(4)オペレーションを硬直化させてしまうマインド
(5)人材活性化を加速しづらい制度
3.福祉人材が育つアイム流の運営スタイル
(1)人事の基準を資格者にしない
(2)優秀な人材確保のための「業務スリム化&効率化施策」
 ①手書き書類禁止
 ②書類や会議を増やすのは禁止。減らす提案は歓迎。
 ③署名や押印欄のスリム化
 ④ガラ携とキャリアメール禁止
 ⑤電話15分ルール
(3)スタッフの自己肯定感向上施策
 ①オシャレ(ネイル、ピアス、金髪など)推奨
 ②美容室手当
 ③趣味を持ち込む
 ④ハロウィーン手当
(4)人材起用に既成概念を持たない
 ①スタッフの半分が保護者
 ②主婦に権限を与える
 ③パートからいきなり会社社長に抜擢
 ④スタッフの独立を推奨し支援
(5)福祉人材を活性化できる仕組みを行政に期待している
 ①管理者よりマネージャーという肩書が適している
 ②実務経験のデータ管理を行政が行えば人材活性化は促進される
 ③目的に合わせて資格要件を再定義したほうがいいのではないか
(6)福祉は「資格」ではなく「人」に付随する

それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

◇◇◇

【メインのお仕事については、こちらです】

【その他、ご相談等は、こちらからお願いいたします】

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ありがとうございます!励みになります!
11
精神科キャリアコンサルタント。精神保健福祉士、国家資格キャリアコンサルタント・CDA、認定オンラインカウンセラーなどのライセンスを元に、メンタル疾患からの復職を目指す方の、キャリア構築支援をしています。 サービス受付ページ→http://www.s-yam-gucci.jp
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。