精神疾患に向いている会社って、ナニ?

「医療・福祉と就労について」の3回目です。「精神疾患の社会復帰に向いている仕事/会社/職場」という記事や動画を散見しますが、実際のところはどうなのでしょうか?

「うつ病 向いてる仕事」で検索すると…

障害者雇用についての記事が大半を占めます。障害者雇用は、体調に配慮してくれるなど、メリットももちろんありますが、お給料は最低賃金並みですし、昇進、ましてやキャリアアップは殆ど望めないので、「仕事は収入のため」「経験・情報・人脈を得て、次につなげるため」と割り切る必要があります。本稿では、一般就労の可能性について、検証します。
精神疾患の人に向いている職場としては、

・病気や障害に対して理解がある職場
・休みがとりやすい職場
・人間関係が良好な職場
・残業など労働時間が多くない職場

という記事が多いです(いや、そういう記事ばかりです)。
まぁ、そんな企業はまずありませんな。うつ病などの精神疾患は、パフォーマンスに波があり安定しないという、雇用されるにはかなり厳しいハンディが、事実としてあります。パフォーマンスの安定しない人を、わざわざ中途採用する会社がどこにあるでしょう?(障害者雇用は別です)

精神疾患にホワイトな企業がない理由

精神疾患にホワイトな企業のイメージがいかに甘いか、見ておきましょう。

病気や障害に対して理解がある職場

これは、どれほどリサーチして得たデータなのでしょうか。
確かに、社員の健康管理について先進的な企業はあります。しかしながら、それはいま自社にいる社員の扱いについての話であって、これから中途採用する人に対して同様の配慮をしてもらえるという話ではありません。「体調管理も社会人の責任の一つ」と言われますから、「疲れやすい」は、一般企業では通用しません。厳しいことを申し上げるようですが。

休みがとりやすい職場

不調な体調を整えるために有休を取りたいのに、いちいち休暇理由を聞かれるのは嫌ですよね。
しかしながら、「○○の理由でお休みをいただき、ご迷惑をおかけします」と職場の周りの人にいちいちフォローが必要な文化の企業は、少なくないと思います(むしろ、それがウェットな日本企業の美徳とされている嫌いがあります)。これは、事前のリサーチが必要です。ネットで口コミサイトを調べるくらいしかないと思います(さすがに、そこまで転職エージェントは把握できないです)。採用面接で、オブラートに包んで聞いてみるのも手ですが、もちろん、面接の最初からその話を持ち出すのは、面接攻略法としてNGです。

人間関係が良好な職場

こればかりは、入ってみないとわかりませんね。何をもって「良好な人間関係」と取るかは、人によって違うと思います。「うちは、和気あいあいとしたアットホームな雰囲気の職場です」なんて言っていても、実際には裏で人事が退職勧奨を連発しているところもあります。

残業など労働時間が多くない職場

これはわりと事前リサーチがしやすいです。例えば、新卒就活の時点でコンサル志望だった私は、最も花形の戦略コンサル(マッキンゼーとかボストンコンサルとか)は、初めから候補から外しました。戦コンは、激務で有名なところですので(まぁ、エントリーしても、秒殺されたと思いますが)。大学のキャリアアドバイザーには、メーカーを勧められました。ものづくりに興味がなかったので、スルーでしたが。会社ごとの残業時間は、会社四季報でわかります(コンサル系だと、N/A(無回答)のところが多いですが、まぁ、推して知るべしですね)。
ただ、気をつけたいのは、昨今の働き方改革で、見せかけの残業時間が減っていることです。これは実際には、同じ量のタスクを定時に収めるべく、馬車馬のように働かされるというケースがあるので、要注意です。

うつ病には事務職が向いているという幻想

労働時間に関連して言えることですが、納期の厳しくない、つまり、始まりと終わりのあるプロジェクト型ではなく、公務員やサービス業などルーティーン型の仕事の方が、確実に良いと言えます。1年365日、納期に追いまくられるのは、確実に精神を病みます。IT系の企業がインフラ系の企業より休職者が多いのは、偶然ではないと思います。

そこで、うつ病にお勧めの仕事の筆頭として挙げられるのが事務職ですが、とんでもない勘違いです。
事務職と聞くと、定型的な仕事をイメージされる方もいるかもわかりませんが、関わる人に対するあらゆる目配り気配りが求められる、究極のマルチタスク能力を要する職種です。コミュニケーション能力が問われるとか、マルチタスクを求められるとか、それが楽々できたら、そもそもうつ病にならんだろと思いませんか?

個人的な意見の蛇足ですが、ハローワークの求職相談はほとんど役に立ちません。「ハロワは、失業給付金を受け取りに行くところ」というのは、言い得て妙だと思います。
なお、自営業(独立起業)というウルトラCもありますが、会社勤め以上の地獄が待っていること請け合いなので、私はお勧めしません。

解決の方向性の提案

社会復帰がうまくいく、一つの可能性はあります。
それは、特有の分野で、周りの人より段違いに抜きん出たスキル(と経験)を持っていることです。それには、戦略的なキャリア形成が欠かせません(だから、障害領域にキャリコンが必要なのよ)。

それを身に付けるためにどうするか。
個人的な体験から言えることは、興味と使命感を持って楽しめる仕事なら、多少の超過労働は利くということです。確実に定時退社できるけど、つまらない会社と、月20〜30時間程度の残業はあるが、ワクワクする会社と、どちらが良いかと言えば、私は後者の方が続けやすいと考えています。
興味を持てない仕事だと、定時に上がることばかりを考えてしまうので、勤務時間中がとても苦痛です。一方、興味と使命感を持って楽しめる仕事だと、時間が経つのをあまり意識しないので、勤務時間中の不快度は低いです。そこから、自分のキャリアを積み上げていくというのが、安易な道ではありませんが、確実ではないかと思います。

最後に、社会復帰について最も留意すべきことは、焦らないことです。
症状が重いほど、「税金も払わない今の自分は、社会のお荷物で無価値な人間だ。早くそんな状況は脱しなければ」と考えてしまいがちですが、うつ病になったのは、ほぼ、あなたのせいではありません。最近は、「うつ病は、心の”がん”」と言われます。がんになって、その人を責める人はいないですよね。一番まずいのは、焦って再就職をして、自分に合わずに病気が再発するというパターンです。このコラムでも繰り返し述べていますが、再発するほど寛解率は下がるので、最も避けなければいけないことです。

本稿は以上です。それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

◇◇◇

#1 このコラムは、メール配信(メルマガ)でもお読みいただけます。
メルマガの登録はこちらからお願いします。

#2 コラムの感想や、取り上げて欲しいテーマのリクエストもお待ちしております。こちらからお寄せください。

◇◇◇

★ メインのお仕事↓↓についてのお問い合わせは、こちらまでお願いします。# 個人向けのサポートは、松竹梅ご用意しております。

★ その他、ご相談等は、こちらからお願いします。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ありがとうございます!励みになります!
13
精神科キャリアコンサルタント。復職を志す方、またそのご家族の方にお役立ちな、キャリア形成やメンタルヘルス・精神保健に関するコラムを、毎週お届けします。脱うつ転職活動で知っておきたい最新ニュースについても。 [サービス受付ページ]http://www.s-yam-gucci.jp