キャリア支援系リワークプログラムの必要性と実際

前々回のコラムでは、うつ病休職からの職場復帰のプロセスでよくあるハードルと、それを解決するためのリハビリテーション(”リワーク・プログラム”)について触れました。それを受けて、前回のコラムでは、リワーク・プログラムでは具体的にどういうことをどのような目的でやるかを、かいつまんで見ていきました。それらは、

・治療系のリハビリ
・心理療法系のリハビリ
・仕事訓練系のリハビリ
・キャリア支援系のリハビリ

に分類することができるということでした。
本稿では、いよいよ、リワークプログラムにおける、キャリアサポートの実際について、見ていきます。
(なお、本稿では、”キャリアコンサルティング”・”キャリアコンサルタント”と”キャリアカウンセリング”・”キャリアカウンセラー”は、同義とします)

リワークにおける、キャリアサポートの実際

と言いましたが、拍子抜けする結論から言ってしまうと、キャリアサポートプログラムを全面に出しているリワーク施設は、ほぼないと言って良い状況です。私の知っている限り、平成医会さんくらいでしょうか。

メンタルヘルスとキャリアサポートの統合的支援の必要性が指摘され始めて5〜6年は経ちますが、「このプログラムで、経歴や働き方を振り返り、復職後に生かしましょう」くらいのニュアンスしかありません、正直な所。

その理由としてはいろいろ考えられますが、そもそも「キャリアコンサルタント」という国家資格の存在が、医療業界で全く認知されていません。もちろん、診療点数もつかないので、医療機関では普及しません。

キャリアカウンセラーは、リワークで何をしてくれるのか?

キャリアカウンセリングは、全米キャリア開発協会(NCDA, National Career Development Association)で、次のように定義されています。

個人がキャリアに関してもつ問題や葛藤の解決とともに、ライフキャリア上の役割と責任の明確化、キャリア計画、キャリア決定、その他のキャリア発達(開発)行動に関する問題解決を個人、または、グループカウンセリングによって支援することである

また、日本キャリア開発協会(JCDA, Japan Career Development Association)でも、次のように定義されています。

発達的視点に立って、成長と適応という個人の積極的側面に強調点を置き、個人が環境の中で効果的かつ自律的に機能できるように支援すること。自己概念の開発を通してキャリア形成を図ること。

大胆にもまとめてしまえば、キャリア面の問題解決と、その解決能力自体の向上を図ること、と言えます。単に目の前の問題解決で病状の緩和を図るだけではなく、問題解決能力そのものの向上を図ることで、疾病原因の再発防止を図ることが期待できるのです。

キャリアサポートの、リワークにおける効果

では、キャリアサポートのリワークプログラムにおける効果は、何でしょうか?私が通っていた、キャリアコンサルタントの養成施設では、以下のように説明されています。

もう一つ、習得しておくとより良い支援ができるのが、キャリアコンサルタントの方が身につけている「キャリアデザインの知識やスキル」です。リワークプログラムの参加者は復職だけでなく、職場に復帰した後の生活に対して強い不安を抱えている方が多いのが実状です。休職者が納得のいく形で復職するためには、長期的な仕事生活のあり方を自ら見出す力を育てることや、人生に新たな意味づけを行える支援も必要です。

うつ病になると決断力、注意力、判断力などが衰える傾向にあり、中長期的なプランも描きにくくなるといいます。キャリアデザインの専門知識やスキルがあれば、休職者の復職はもちろん、キャリア構築のサポートも行えるのです。休職者が職場復帰し、再休職せずに働き続けるためにも、キャリアを軸として、人生観、価値観、仕事観、家族観などをどのようにとらえ、イキイキとした人生を送っていくのか。そうした支援を行える人材もリワークの現場では求められています。(太字引用者)

このように、”キャリア”って何?という問いに大胆に答えると、

”人生そのもの”

です。人生そのものの問題に対し、赤の他人が解決の支援をするなど、おこがましいところですが、だからこそ、キャリアコンサルタントという、その道の専門職が必要なのです。

よくある葛藤への向き合い方

うつ病休職者の感情の根っこにある、

「この仕事、そもそも、自分に向いているのだろうか?」
「これまでの仕事の仕方で、再発することなく続けられるのだろうか?」
「この仕事を、他の人ではなく自分が担うことの、社会的意義は何だろうか?」
「ビジネスパーソンとしての、自分の社会的役割とは、一体、何だろうか?」

というキャリアの問題認識が解決しないと、うつ病休職のリスクは放置されたままです。同じ仕事マインドのまま、同じ職場で同じ仕事をしたら、再発するのは時間の問題です。

また、異動や昇進で、環境が変われば、同じような問題は再び出てきます。というか、ビジネスパーソンのキャリアとは、その問題解決の連続と言えます。いちいち躓いていたら、先に進めません。そこに、キャリアコンサルタントという専門職の存在意義があります。道に迷ったら、都度都度、一緒に考えてもらえば良いのです。

◇◇◇

以上、うつ病休職のリワーク・プログラムでは、キャリアサポートはほとんどされていないものの、その治療的・社会的意義は大きいことを見てきました。リワーク・プログラムにおいても、キャリアコンサルティングの役割は大きく期待できることが、本稿で伝われば幸いです。それではまた、次のコラムでお会いしましょう!


【参考資料】

再就職支援の取り組み ~その現状と課題~キャリア・カウンセラーの立場から~
浅野衣子(株式会社キャリア開発サポーターズ)

休業・職場復帰支援の過程におけるキャリアサポート―キャリアカウンセリングによる職場復帰支援―
宮城まり子(法政大学キャリアデザイン学部名誉教授)

中高年失業者の再就職支援の現場で感じること~キャリア面とメンタル面の統合的支援~
馬場洋介(株式会社リクルートキャリアコンサルティング キャリアカウンセラー)

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