”新型ひきこもり”当事者の社会参加を理解する要点とその緒探し

みなさま、昨晩のNHKスペシャルはご覧になりましたでしょうか。

*番組アーカイブは、12月6日(日)午後9:49まで見ることができます。

何日か前から、孤独死の記事も出ていたので、気になっていたところでした。

孤独死の問題を考えると、必然的にひきこもりの問題も考えなければなりません。両者は同一ではありませんが、重なるところは大きいからです。

9割が新型なのではなく、真正の9倍、新型がいるのだ

ひきこもりのイメージというと、部屋から一歩も出ずに、家族とのコミュニケーションすら断ち、家族が寝静まった夜中になって、台所で用意された食事を取るという生活をイメージすると思います。ただ、厚労省の定義はもう少し広く、

様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的に6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念

を、「引きこもり」としています。内閣府の実態調査(平成31年)によると、

6か月以上就業・就学をしていない若者たちで
1】普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する(3.1%)
2】普段は家にいるが、近所のコンビニなどには出かける(2.3%)
3】自室からは出るが、家からは出ない(0.3%)
4】自室からほとんど出ない(0.1%)
(調査母集団:全国の市区町村に居住する満 40 歳から満 64 歳の者)

つまり、広義のひきこもり(「外出できるひきこもり」)は、自宅から出ない、狭義ひきこもりの9倍近く、いることになります。
しかしながら、「外出できるひきこもり」とは、”ひきこもり”ではなく、社会就労恐怖症候群とでも言った方が良いのではと、私はかねてから考えています。このような、外出できるひきこもりのことを、以下この記事では、”新型ひきこもり”と呼ぶことにします(他に良い言い方が、今のところ浮かばない)。

つまずいたポイントはどこだ?

ここで私は、言葉の言い回しを弄びたいのではありません。純正ひきこもりと新型ひきこもりは、必要とされる支援のレベルが異なるからです。定義を間違えると、支援の方向性を間違えてしまいます。新型ひきこもりの人に対し、「お前は、”ひきこもり”だ」とラベルを貼っても、「自分は(ひきこもりとは)違う!」とプライドを傷つけるだけです。

先ほどの内閣府調査によると、初めて引きこもりの状態になったのは、20代で27.7%にのぼり、10代からは2.1%に過ぎませんでした。こういう人はどこで躓いたのかというと、教育過程終了後、すなわち、就労の段階で躓いたということになります。就労段階で躓いたということは、それ以外の生活面では支障をきたしていなかったということです。そういう人に対し、真正ひきこもりの方向けの生活支援をしても、その人のニーズに噛み合いません。

「とりあえず動いてみろ」は、最悪のアドバイス

袋小路になって動けなくなってしまっている人に対し、「とりあえず動いてみろ」と助言するのは、最悪です。この国のビジネスパーソンは、”行動”という言葉が大好きですが、躓いている人に対し、自分の感覚的な成功体験だけで精神論に持ち込んでも、何も解決しません。

人生は自転車を漕ぐのに喩えられたりしますが、自転車を漕いでいる最中は、大して労力はいりません。しかしながら、”初速”をつけるのは、その何倍も大変です。しかも、初速の付け方が分かっていれば、自転車を漕ぐのに思い悩んだりはしません。
「とりあえず」って、具体的に、どこに向かって何をどうすることですか?新型ひきこもりの当事者の目線で、将来像が見えた上での発言ですか?八方塞がりだと感じているからこそ、自宅にひきこもる生活になってしまっているのです。その方向性を指し示さないのに、「とりあえず動いてみろ」というのは、無責任極まりないのではないでしょうか?

支援のゴールは一般就労とは限らない

就職の段階で躓いたということは、それ以外の社会的人間関係の構築能力には問題が(あまり)なかったということです。以前に書いたかもしれませんが、”仕事人”というのは特殊な役者能力の一つで、種としての人間が本源的に持っているものではありません。涵養しなければ身に付かないものであり、誰しもが、役者としての適性がある保証はありません。養育環境にも大きく依存するでしょう。

「働かざる者食うべからず」

御説ごもっとも。
しかしながら、社会福祉の立場で言えば、居場所がどこかにあり、それに当事者本人が不満を持っていなければ、それで良いのです。就労というのは生き方の一つに過ぎません。

「趣味の用事の時だけ外出できる」というのは、とても好ましいことです。だって、人生を打ち込めるような趣味があるのですから。それは、ひきこもりのメンタリティーとは、心のベクトルが真逆です。自分自身ではなく、趣味の対象という外側に向いているのですから。
ここから、社会参加することもできるでしょう。直接お金には結びつかないかもしれませんが、どこかの誰かのニーズに応えられているかもしれません。

*状況に緊急性がある場合は、ひきこもり地域支援センターなどに相談されることをお奨めします(”ひきこもり地域支援センター+地名”で検索すると、最寄りの機関が出てきます)。ひきこもり地域支援センターは、引きこもりに特化した相談窓口であり、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士などが相談内容を基に適切な支援機関につなげてくれます。


本稿は以上です。それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

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