なぜ、お客様の病気の治療に、私はコミットしないのか?

今回から数回にわたって、医療・福祉と就労のことについて、書きたいと思います。これらについて、あまりにも世間の理解が乏しいからです。
初回のテーマは、

「なぜ、病気の治療に私はコミットしないのか?」

です。
まぁ、そもそも、精神疾患は”個別性”と言って、症状は千差万別・人それぞれなので、「こうしたら病気は治ります」という一般論が言えるワケがないのですが、治療と就労のフェーズを区別しなければいけません。主治医の先生から許可が出るまで、転職活動には手を付けないことを、私は受注の要件としています。なぜか?

理由1。
私は病気を治す医師ではなく、生活をサポートするケースワーカーです。私のご提供しているサービスは、リハビリテーションではありませんので、治療については一切担保いたしません。

理由2。
転職活動は、むちゃくちゃエネルギーを使います。 意思決定と緊張の連続です。これらは、うつ病の治療の障害と再発のリスク要因になります。転職活動で病気が悪化したら、元も子もありません。

治療が一段落する時点まで、転職活動はすべきではない。

「徐々に就労していくことによってこそ、症状もよくなるのでは?」という考え方もあります。治療の意味では、それは一理あります。療養生活でほとんど外出もしなかった人が、いきなり、通勤や残業も含めたフルタイムで働くには、体力・精神力両面で厳しいからです。
しかしながら、どの会社も経営が大変な時頃、1人前のパフォーマンスを発揮することが難しい人を、時短勤務や隔日勤務扱いなどでわざわざ採用する余裕のある企業は、ないと言って良いです(障害者雇用は別です)。
もし、就労を治療の一過程として行いたいのであれば、障害者就労支援施設(通称・B型作業所など)で、体を慣らしていくことが望ましいでしょう。ただし、収入目当てでは、全く期待できないことは、理解しておく必要があります。月給1万円に満たないです(”日給”ではありません!!)。軽作業の多い、アルバイトという選択肢もあると思いますが、肉体労働が多いので、転職活動と同様、心身への負荷は大きいことは、覚悟しておく必要があります。

いろいろな考え方があることは私も承知しておりますが、私は、治療が一段落する時点まで、転職活動はしないことをお伝えしています。症状が頻発しているのに症状は落ち着いていると言うと、面接官に嘘をついたことになってしまいます。勤務中に症状が悪化して業務に支障が出た場合に、”経歴詐称で解雇”ということも、最悪ありうるのです(このようなことが一般に言われるのは、実例があったからだと考えられます)。

なぜ、病気の治療に私はコミットしないのか?

記事冒頭に申し上げた通り、医療と福祉は別物だからです。医療は病気の治療です。福祉は生活の支援です。全く違います。もちろん、両者は密接な関係があります。例えば、私は、”精神保健福祉士”ですが、精神保健福祉士は、医療機関(病院)で働く人が、有資格者全体の半分に及びます。作業所など福祉の現場でも、精神科医の先生との連携があるところが多いです。しかしながら、それは相互に行き来しているのであって、両者が一体となっているのではないのです。餅は餅屋なのです。

もう少し具体的に言いましょう。医療の臨床では、就労支援などの福祉に関しては、患者の医療的な見地で可/不可の判断をするだけです。極端な言い方をすれば、就労可/不可の診断書を書くだけです。就労の斡旋や仲介をすることはありません(まぁ、その診断書を書くことは、精神科医の大きな業務負担になっているのですが)。
一方、福祉の現場でも、治療の判断をすることはありません。医療機関と連携していても、医療サイドからの診断を受け取るだけです。治療行為は医師にしかできないからです。

まとめると、私の転活支援はあくまで福祉のフェーズであって、医療のフェーズにまでは及ばず、当然、そこでの行為(治療)に関与することもありません。したがって、私のこのコラム連載も、「病気の治し方が書いてあるブログ」には、なるようなはずがありません。

通院治療していることは、転職活動で伝えるべきか?

ここからは実際のケースに即して言わなければならず、守秘義務に当たるので詳しくは書きませんが、「採用側に嘘をつかない範囲で、企業ごとに、自己責任で伝える範囲を判断する」というのが、模範解答になるでしょうか。
うつ病に”完治”はなく、病み上がりなら再発リスクと常に隣り合わせだからといって、

「私は慢性うつ病です。症状固定しており完治することはなく、常に病状悪化のリスクがあり、勤務中も含め、一生、薬を服用し続ける必要があります」

なんて言ったら、余程、企業側に魅力的な秀でたスキルがない限り、一般就労なんて、まずできません。

では、なぜ、私が一般就労のサポートにこだわるのか?ということになりますが、うつ病を持っていても、私は、一般就労ができる道が切り開かれるべきだと考えているからです(障害者就労が一般就労より劣っている、ということではありません)。最近流行りの言葉で言えば、”ダイバーシティ”のある社会の実現、でしょうか。

病気・障害とダイバーシティ論について

「障害のある/なし、に関係ない社会を実現したい」という綺麗ごとを述べるつもりは、私には毛頭ありません。両者の間には、厳然たる断絶が存在します。それを乗り越えて、お互いの考えや感覚を理解するのは、並大抵のことではできません。精神疾病に限らず、凡そ病気というものは、なってみないと本当の大変さはわからないものです。

”多様性”とは、一つの事象に対し、いろいろな立場からの見方が尊重されることでしょう。私もうつ病を経験して、社会の見え方がまるで変わりました。今日のビジネス社会は、フルタイム残業つきでずっと健康で働き続けられる人材でないとジョインできないのだという厳しさを、骨身に染みるほど痛感しました。ダイバーシティでイノベーションが起こせる、というのんびりしたことを言うつもりはありませんが、人材不足のこれからの時代には、その発想は変革を迫られるのだと思います。私の仕事がその変革の一助となれば、対人支援職として、これに勝る喜びはありません。

本稿は以上です。それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

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