私が会社を休職・退職した原因と背景 その(3)止

先々週から、私がキャリアにおけるどんな失敗をし、どうやってそこから復活したかを、お伝えしています(これまでの記事と、内容が重複する部分がありますが、ご容赦ください)。先週のコラムは、以下のように締めました。

残った手順は2(自己棚卸とストレングスファインダーをしておくですが、ここでどのように自己棚卸をするかが、肝要です。その後のステップの中身を左右します。その話は次回にまとめてします。

本稿では、その具体的にどのように自己棚卸をするかということを、解説します。

今、最も注目されている方法論

人生が危機に瀕した時、問題解決志向だけでは、行き詰まることがあります。なぜなら、その問題設定自体が適切であるとは限らないからです。自分自身に対して支配的なストーリーに捉われて、それが脳内でぐるぐる回るばかりで袋小路状態になっていることが往々にしてあります。

このような時に、ナラティヴセラピーという手法が役立つことがあります。”セラピー”と言うように、これは心理療法の一つですが、キャリアカウンセリングでも、今、最も注目されている方法論です。

ナラティヴセラピーとは?

イメージは、こんな感じです。

画像2


言語化すると、以下のような手順を踏みます。

1.小さなストーリー(マイクロナラティヴ)を通してキャリアを構成する
2.小さなストーリーを大きなストーリー(マクロナラティヴ)へと脱構築/再構成する
3.ストーリーの中に次のエピソードを構築する

しかしこれでは、全く訳がわからないと思いますので、少し長いですが、一番分かりやすそうな説明を、最新の書籍から引用します。

物語は、いくつかの出来事を意味ある形でつなぎ合わせることで作り出されます。私たちの人生には大から小まで無数の出来事、エピソードが存在しており、1つの物語でその全てを総括できるということはありません。…ある物語の影響力が支配的であるとき、他のエピソードや物語の可能性は視界から遠のいてしまい、目に入ったとしても十分に評価させてもらえない可能性があります。しかし、逆に言えば、別の出来事やエピソードがつなぎ合わさったとき、そこには別の物語が生まれる余地がいつも必ずあるのです。

別の言い方をしましょう。…
困難な状況が生まれ、今生きている物語が苦しいものとなったとき、その物語だけでは十分に自分の人生を生きることが難しくなります。…しかし、僕たちの人生上には、いつでもそれ以外の物語の可能性が無数に散らばっています。
(『ナラティヴ・セラピーのダイアログ: 他者と紡ぐ治療的会話,その〈言語〉を求めて』横山克貴、より)

私の場合は、「学歴エリート」というドミナント(支配的な)ストーリーから、「当事者経験のある福祉専門職」というオルタナティヴ(代替的な)ストーリーへの乗り換えが、起こりました。

”問題”を自分から切り離す

ここからは、前回までお伝えした私の実例を元に、具体的に見ていきます。
ナラティヴセラピーでは、例えば、以下のような自問をします。

・最初に問題に気づいたのは、いつですか?どのくらい前ですか?

・問題があなたの人生に入り込む以前について、何を覚えていますか?

・問題が最も力を持っていたのは、いつでしたか?もっとも弱かったのはいつでしたか?問題に直面して、自分の方が強いと感じたのはいつですか?

・6ヶ月前/3ヶ月前/1年前/4年前/3日前はどうでしたか?問題について何か気づいたことはありますか?そのとき、問題はあなた自身の何%を支配していましたか?

就活が思い通りにいかなかったことで、大学卒業前から薄々感づいてはいましたが、「”いい大学”を出ているにも関わらず、鳴かず飛ばずの人材である」というストーリーが最も力を持っていたのは、1年目の年末頃からでした。
1度目の休職で、そのストーリーという問題に直面化するはずでしたが、十分に治癒しないまま復職したので、2度目の休職に追い込まれました。この時には、問題状況よりも、それに対する自分自身の疑問の方が強いことを自覚していました。
病気ですから、キャリアのことが頭の中の全て、100%でした。これは1年目の年明け、つまり2度目の休職の6ヶ月前から徐々に形成されていました。

注意したいのは、「あのストーリー付けは、間違っていたんだ」「ストーリー付けから解放される必要があるんだ」という考えは、適切ではないということです。良し悪しではなく、ストーリーの位置付けは相対的なものです。

”脱構築”とセラピー

さらに進むと、”脱構築”というフェーズが、ナラティヴセラピーにはあります。こうなると、しめたものです。自分の内面(マインド)が書き換えられるからです。

・このストーリーのつじつまを合わせるためには、どのような前提がその背景にあるのだろうか?
・このストーリーは、まだ名前もついていないどんな前提を背景にして成り立っているのだろうか?
・人々の話し方やふるまい方を説明してくれそうなアイデアは、どんなものだろうか?
・問題の生命を支えている、当たりまえと思われている生き方やあり方は、何だろうか?

「当たりまえとされている」真実を分解し、検討することは、脱構築と呼ばれています。

「高学歴・高キャリア・高収入」という、”当たりまえ”、もしくは”普通”と思われている人生の前提は、うつ病で休職を余儀なくされることで、完全崩壊しました。そこから、精神保健のプロフェッショナルという、全く新しい人生ストーリーが構築され始めました。

ナラティヴセラピーを使う理由

普通の自己棚卸や人生の振り返りではなく、あえてナラティヴセラピーを使う理由は、このように対話や自問によって、”語り直し”ができるからです。自分のキャリアを語り直すことで、咀嚼された自己棚卸と、自己肯定感の向上が期待できます。
このような支援は、しばしば精神医療と対立しますが、私は皆さんの治療に関与することはないので(病理的なことに無関心なのではありません)、その部分で矛盾/対立することはありません。

物語を紡ぐことは、”即興劇”に例えられることがあります。しかしながら、あいにく私は、トランペット吹きの端くれではありますが、クラシックオンリーでして、即興演奏は全くできません。そこは、私の限界でもあります。


本稿は以上です。それではまた、次のコラムでお会いしましょう!

【主な参考文献】

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