職場復帰訓練でやるリハビリの内容とその意義

前回のコラムでは、職場復帰のプロセスでよくあるハードルと、それを解決するためのリハビリテーション(”リワーク・プログラム”)について触れました。本稿では、それでは、リワーク・プログラムでは具体的にどういうことをどのような目的でやるかを、かいつまんで見ていきたいと思います。

リワーク・プログラムの内容は、医療機関・施設によって千差万別ですが、私が知っているものを挙げると、以下のようになります。

リワーク・プログラムの例

大雑把に、以下のように分類できます(分類は、私独自の私見です)。

【治療系】
•疾病理解
•グループカウンセリング
•オープンダイアローグ
•認知行動療法
•運動療法

【心理療法系】
•心理教育
•セルフコントロール
•ストレスコーピング
•リラクゼーション(含むマインドフルネス)
•SST(社会技能訓練)
•セルフエスティーム

【仕事訓練系】
•ビジネスコミュニケーション
•新聞要約
•パソコン作業
•グループワーク
•ファシリテーション
•プレゼン演習

【キャリア支援系】
•休職/離職原因の検証
•自己棚卸し
•ジョブ・クラフティング
•キャリア・デザイン
•キャリアカウンセリング

全てに触れるのは効率的ではないので、本稿では、分類ごとに、いくつかに絞って解説したいと思います。

治療系のリハビリ

文字通り、病気治療の一貫として、医師以外の医療機関スタッフが行うセラピー(非薬物療法)のことです。専門的なことをいうと、治療の一貫として、診療点数がつくものもあります。

”認知行動療法”については、私のコラムでもたびたび触れていますが、「認知(ものの受け取り方や考え方)に働きかけて気持ちを楽にする心理療法」などと定義されています。ものすごくざっくり言うと、物事に対する感じ方・考え方が非合理なパターンになっていた場合に、それをニュートラルに戻す訓練のことです。心理系のリハビリにも位置付けられます。

また、”オープンダイアローグ”とは、「患者や家族から連絡をもらって24時間以内に訪問し、繰り返しの対話を通して症状緩和を目指す療法のこと」です。「医師の指導を仰ぐなどの上下関係はなく、専門家も家族や友人も同じ立場で発言し、耳を傾ける」ことが、特徴です。日本では、斎藤環先生の本が有名ですね。

心理療法系のリハビリ

主に、臨床心理士の方がやるリハビリです。
感情や考え方のくせをコントロールしたり、外部からの刺激(ストレス)に対応できるように訓練したり、自己肯定感の向上を図ったりするものです。

”SST”(Social Skills Training, 社会技能訓練)とは、これも奥が深いものですが、簡単に言うと、社会(会社、地域など)でのコミュニケーションの仕方を、模擬訓練するものです。医療機関によっては、仕事での”報連相”の仕方を練習するところもあるようです。

仕事訓練系のリハビリ

まさしく、仕事の擬似訓練を通して、仕事復帰に備えるリハビリです。リハビリが進んで、いよいよ仕事復帰する段階で、事前にトレーニングをすることで、スムーズな社会復帰を図るものです。

ここでは、仕事に対する向き合い方を今一度確立することも、目的の一つです。私見ですが、語弊があるかも知れませんが、仕事の”手の抜き方”をつかむことも大事です。同じ仕事のやり方(頑張り方)で、同じ職場に戻ったら、再発するのは目に見えているからです。

新聞要約は、広く行われているものですが、書類作成の擬似訓練です。施設によっては、復職後どうやって再発を防止するかを、グループワークも含めて、他のリハビリ参加者やスタッフの前でプレゼンテーションするものもあります。

キャリア支援系のリハビリ

ここからが、キャリアコンサルタントである、私の本領発揮です。
近年、メンタルの問題の背後には、キャリア形成の問題が潜んでいることが指摘され始めました。逆に、キャリア形成支援の現場でも、メンタルヘルスへの配慮を要するケースが増えてきました。

なぜ休職に至ったかの原因は、職場ストレスなど直接的なものだけに限らず、より広い視点で、キャリア形成の過程に見出すことは、非常に重要です。その根っこの部分に不安や不満を抱えたままだと、多少の適応工夫をしても、再発リスクが高いままになってしまいます。

キャリアコンサルタントの国家資格ができてから、年月がまだ浅いので、これらのメニューを実施しているところは、僅かです。キャリアカウンセリングを医療機関でやっている例は、寡聞にして、ほとんど知りませんし、具体的に何をやっているのかも、表には出て来ていないです。
また、キャリアコンサルタントの養成課程でも、メンタルヘルスについては、ちょこっと触れるくらいで、精神保健福祉士(国家資格)の私から言わせると、それは視点が浅いのではないだろうかというのが、率直な印象です。

キャリア面での課題を克服した復職例

上記の説明だけでは、今一つピントこないと思うので、私の具体例を出したいと思います。

ソフトウェア会社の休職中、やっていたプログラミングの仕事は、上手くいかないストレスばかりで全く自分に合っていないし、就活時にイメージしていたITコンサルタントのイメージは全く的外れだったことも認識していたので、当然のことながら、自分のキャリアプランを再考しなければならないと考えていました。

とにかく仕事での成功体験が必要だと思っていた私は、人事からの間接部門への転籍打診を引き受けることにしました。それと並行して、精神科ソーシャルワーカーへのキャリアチェンジを決めました。具体的には、会社を年度末で退職し、専門学校に1年間通学することを決めました。
進路が決まって復職・転籍してからは、体調不良による欠勤はありませんでした。「自分でも、仕事を進められるじゃん!」と自信がついたのは、この時が最初でした。興味・関心・適性のないことを1日8時間以上やるのは、相当苦痛だったのだなと、得心したのを、よく覚えています。

◇◇◇

以上見てきた通り、リワークプログラムは多種多様ですが、実際には、治療系・心理療法系がほとんどです。キャリア支援系のリハビリも重要であることを、再度強調しておきます。

本稿は以上です。それではまた、次のコラムでお会いしましょう!


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