復職コンサルタントが判定する、仕事復帰に必要な生活ポイントの攻略法
前々回のコラムでは、うつ病の基礎知識について、前回のコラムでは、うつ病が寛解した後の、病気退職者の社会復帰手順について、それぞれ説明しました。しかしながら、この二つの間にはギャップがあります。どのように健康が回復したら「仕事復帰できる」と言えるか、という点です。本稿では、どんな問題を潰せば復職可能になるのかを、見ていきたいと思います。
”職場復帰の判断基準の例”
まず、一番大事なのは、「再休職しない」ということです。うつ病の再発率は50%、再々発率は70%、再々々発率は90%と言われています。再休職してしまうと、復職は更に困難になります。
厚生労働省は、企業が休職者の復職準備性を確認する際の、”職場復帰の判断基準の例”を出しています。企業と契約している、従業員支援プログラム(Employee Assistance Program, "EAP")のコンサルタントは、このようなものを基準に、職場復帰の可否を見立てています。
・労働者が十分な意欲を示している
・通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
・決まった勤務日・時間に就労が継続して可能である
・業務に必要な作業ができる
・作業による疲労が翌日までに十分回復する
・適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
・業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している
(厚生労働省)
これらができるようになるには、以下の要素が必要です。
・生活リズムの確立
・就労のための基礎体力
・集中力
・職場復帰への意欲
・病状への理解
・休職に至った経緯についての振り返り
よくある、ハードル
これらの要素を阻害する状況としては、以下のようなものが挙げられます。
1】朝、一定時刻に起きられない
睡眠に課題があります。多くは、不眠によるものです。薬の副作用の場合もありますが、睡眠薬を適切に使うことで(オーバードーズしない)、睡眠リズムを整えます。24時になる前に、入眠できるのが望ましいです。
昼寝をしてしまうのも、これの延長です。熟睡感がないため、昼間に眠くなってしまいます。個体差はありますが、通常は望ましくありません。
2】外出した日は、くたびれてしまう
これは、外部の刺激にまだ弱い状態を示しています。就労できる基礎体力には至っていないということです。対人接触がある外出訓練をする必要があります。
3】本や新聞の内容が頭に入らない
これは、仕事をするには致命的で、まだ復職できる状態(病状)ではないことを示します。屈辱的な状況にも思えますが、少ない文量から徐々に増やして、克服する必要があります。いきなり分厚い本を読もうとしても、まず挫折します。
4】満員電車で気持ち悪くなる
これが解消できないと、会社勤めは難しいです。体質によるものもあるので、一概に克服すべきとは言えませんが、通勤訓練(模擬出社)をして慣れるしかありません。
他にも、個人によって様々な状況があります。
このあたりを解消するために、医療機関では、通院リハビリプログラム(”デイケア”と言います)をやっているところが多いです。一定の時間帯に通所して、規定の集団プログラムを受けます。プログラムの内容は、疾病の理解からレクリエーションまで、様々です。職場復帰に特化した、”リワーク・プログラム”というものがあるところもあります。
自分でできることとしては、やはり運動(ウォーキング)が推奨されることが多いです。目安は、15分と言う人から、1日1万歩と言う人まで、幅がありますが、無理なく多少の汗を流せる運動量が適正でしょう。続けられることが一番大事です。
「復職しても、また病気が再発して、再休職になってしまうのではないのだろうか?」
その疑問は、復職支援の本質です。EAP(上記)のコンサルタントが、職場復帰の可否判断の基準として、「同じような状況になっても不調にならないための再発予防策」を掲げることも多いです。
復職は、元職場への復帰が原則です。同じ働き方で、同じ部署に戻ったら、いくら休養して一時的に回復しても、再発するのは時間の問題と言えます。これを克服するには、仕事に対するマインドを変革する必要があります。
業界標準の統一フォーマットがあるわけではありませんが、↓の書籍に載っているものは、よくできていると思います。
★マイサマリー★
〜自分の傾向〜
1】体調を崩したきっかけ
2】調子を崩しかけている兆候例
3】仕事のモチベーションを高めるもの
〜再発防止策〜
1】予防策
2】対処策
〜周囲への協力依頼〜
これは、復職だけでなく、離職後再就職の時にも、セルフコントロールができていることを、自信と説得力を持って企業側に伝えるツールになります。採用面接官が健康状態について突っ込んで聞いてきた場合、「完全治癒しており、問題ない」と言い張るよりも、ずっと効果的です。
特に、「体調を崩したきっかけ」については、私の提供するサービスでも、ナラティヴ・セラピーというカウンセリング技法で、より深堀りします。直接のきっかけだけではなく、これまでの人生を物語構成することで、真因を掘り当てることが狙いです(ただし、”トラウマ”への直面化は、慎重に行う必要があります)。
自分自身を振り返り、事前準備しよう
一番取り組みやすいやり方は、自分史をチャート図にすることです。縦軸が幸福度、横軸が時間です。例えば、何年か前に描いた私の例は、こんな感じ↓↓です。
どういう状況の時に、自分は満足度・幸福感が高かった/低かったのか、それをどのようにしてキープした/乗り越えたのか、という行動履歴を、体力・精神力回復の土台にします。「あの時、ああできたから、今回はこうできると思う」と考えられるようになれば、しめたものです。答えは、あなたの中にあります。
以前は、2時間〜5時間の時短勤務(リハビリ勤務)ができることが、治療の1stゴールでしたが、近年の傾向として、時短勤務制度は廃止にする企業が多いです。「会社はリハビリ施設ではない。きちんと働けるようになってから戻ってきて欲しい」ということです。主治医に適切なアドバイスを仰ぎながら、リワークなどの活用も含め、自分で、一つ一つ課題を潰していく必要があります。
本稿は以上です。それではまた、次のコラムでお会いしましょう!
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