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Walk together No2.

窓を開けると、まだ寒い朝の風を感じた。

ちょっと寒いなと思うと、後ろから抱き締められた。

蒼汰「寒いね」
〇〇「、、っ、うん」

蒼汰「東京でも会いたいな」
〇〇「、、、考えとく 笑」

抱き締められたまま後ろを振り返って、目が合ったら互いに吹き出して笑う。

蒼汰「うん。て言うまで、離したくないんだけど笑」
少しだけ強くギュッとチカラが入る。
〇〇「痛いよ。笑」
蒼汰「あ、ごめん。。。」

緩くなった腕を振りほどき、窓を閉めた。

〇〇「そろそろ行かなきゃじゃない?」
蒼汰「本当だ」
「この本、やっぱ要らないわ。置いてってもいい?後で取りに来るから。」
〇〇「うん。いーよ」

蒼汰「先に部屋出るけど、エレベーター前で待ってるね。一緒に、乗って降りよう」
〇〇「うん。わかった。」
蒼汰「エレベーター降りたらロビーで待ってて」
そう言って先に部屋から出ていった。

少しタイミングをずらして部屋から出るとエレベーター前で待ってる蒼ちゃんと一緒に乗り、ロビーのソファーに座った。


蒼汰LINE「エントランスの車止めで待ってる。黒のワンボックスね。」
了解スタンプを押してエントランスに出ると、運転席と助手席に座る2人の姿が目に入ってきた。

後部座席の扉が開き乗り込むと
裕貴「〇〇ちゃんおはよー♪」
〇〇「裕貴くんおはよー♪ 朝から元気だねー笑」
裕貴「せっかくのオフ楽しまなきゃねー」
〇〇「そうだね。よろしくね」
裕貴「蒼汰は少し拗ねてまーーーす笑」
蒼汰「拗ねてないわ笑」
〇〇「そうなの?笑」
何となく理由はわかったけど、聞かないでいた。

裕貴「じゃぁ出発しますかっLET'S〜〜〜?」
裕貴、蒼汰、〇〇「GOぉぉぉー!!!」

まんまと裕貴くんのテンションに乗せられ車が発進した。

車内では裕貴くんセレクトの音楽が流れ、裕貴くんの歌声にたまに蒼ちゃんも乗っかって終始盛り上がってた。
楽しく後ろから眺めていると、蒼ちゃんが大丈夫?と何度か振り返り気にかけてくれた。

小1時間で骨董市に到着。
お寺の敷地内で骨董市が開催されて出店も数は多くないけど並んでいた。
平日のお昼前でまだ人出は少なく、年齢層もかなり上だったので、2人とも人目を気にせず歩いている様だった。


桜も5、6分咲きといったところ。桜を見るとやっぱり日本人で良かったなぁと心が穏やかに綻ぶ。
隣では優しく微笑みながら桜を見ている蒼ちゃんがいた。しかし絵になるなと、思わずふふっと笑ってしまった。
蒼汰「ん?何?笑」
〇〇「いや笑」と、首をふる。

折角だからぶらぶらと骨董市を回ってみることにした。
蒼ちゃんはずっと私の隣にいて、人とすれ違う時にはスッと肩を引き寄せて歩かせてくれる。

蒼汰「明後日に東京もどるんだっけ?」
〇〇「うん。そう。」
蒼汰「明日の夜、2人で出掛けない?」
〇〇「ん。」


一通り見て回った頃、何か食べようかと裕貴くんが出店を覗き始めてた。20代半ば男の子達はまだよく食べる。フランクフルト、げそ焼き、唐揚げ、焼きそば。ちょっとずつ食べながら歩き回る。

蒼汰「ん。」
口の前に出す
条件反射でパクリと食べると

蒼汰「美味しいよねー」とニカっと笑う。
最初こそ、裕貴くんの視線を気にしてたけど、そのうち私もそうするようになっていた。


お腹がそこそこ満たされたのか
裕貴「蒼汰ー。射的しようぜ!」
蒼汰「勝負ね!」
裕貴「負ける気がしねー!」
蒼汰「こっちこそ!」
〇〇「小学生と同じだね笑」
急に子どもっぽくなる2人に、ザワッとしていた気持ちが少し薄らいだ。

裕貴「蒼汰ずるいわー。腕の長さ違うもん笑」
蒼汰「んふふ」
裕貴「あー悔しいわー。でもいいよ。蒼汰の言う事何か1つ聞いてあげるよ笑」
蒼汰「じゃあ帰りは〇〇と後部座席な」
裕貴「おまっ。分かったよ。」
「それ勝たなくてもそうしてただろ?笑」
蒼汰「うん笑」

朝の拗ねてる。は、やはりコレだっかと分かった。

夕方近くになると、小中学生たちが出店目当てに増えてきた。
裕貴「やっぱりヒーローが並んで歩いてると目立つな笑 ちびっ子達からの目線がヤバイ感じするぞ」
蒼汰「そうだね笑 そろそろ行かなきゃだな」

蒼汰「〇〇ごめんね。ちょっと早足でお願い。」
〇〇「うん。走る?」
蒼汰「走ったら余計に目立っちゃうから
こういう時はね走ったらダメなんだよー」
裕貴「真顔で足だけ早く動かすの。
わかる?見て!こうやって。」と言うと
真顔で競歩みたく歩いて見せた。
〇〇「何それ笑」
蒼汰「目立つ目立つ笑」


駐車場に着くと
裕貴「〇〇ちゃん、味噌煮込みうどん食べた?」
〇〇「食べてないや。」
裕貴「美味しい店知ってるから食べて帰ろ?」と言い直ぐにお店に電話していた。
蒼汰「俺には聞かないんだ笑」とクスクス笑ってる蒼ちゃんを見てほっこりした。

美味しく頂き、お腹が満たされ店を後にした。

約束通り、後部座席の私の隣に蒼ちゃんが座った。

裕貴「さぁ帰りましょっか。」
〇〇「うん。帰りの運転もありがとうね。」
裕貴「全然だよ。2人はお客さんだからね。責任もってお送りしますから!」と言い発進した。


発進して直ぐに小さく欠伸をした。分からないようにしたつもりだったけど、
トントンと蒼ちゃんが自分の肩を叩いた。

蒼汰「いいよ」
〇〇「ふふ。」

さっきのお店でビールも頂いてたから、いい感じでフワッと酔っていて。
蒼ちゃんの肩に頭を乗せる。

〇〇「いい匂いがする」
蒼汰「そう?」
〇〇「寝ちゃいそう、、」
蒼汰「いいよ、おやすみ」

肩に乗せた私の頭に蒼ちゃんの頬が優しく触れて挟まる。


あぁ、いい匂い。と思いながら、薄れゆく記憶の向こうで「何してんだ。年甲斐もなく。相手26だぞ」と頭を外そうとして、強く蒼ちゃんが自分の頬で押さえる。

蒼汰「どうせまた、26なのにって思ってるんでしょ。」
図星すぎて否定できない。

〇〇「いや笑」
蒼汰「余計な事は考えないで」

心臓が、、、

〇〇「、、、ふっ、かっこいいね笑」
蒼汰「ふざけてる?」
〇〇「今のはちょっと本気」

少し間があって、蒼ちゃん側の手に大きくて綺麗な手が覆われる。
蒼汰「指、ほそ」
〇〇「そ?」

温かい手で覆われて、車に揺られ、蒼ちゃんの肩は心地よくて、いい匂いで、つい眠ってしまった。

蒼汰「もうすぐ着くよ」

肩で寝てしまってたから、耳元で囁かれた。
びくっと飛び起きる。

〇〇「あ、本当に寝ちゃってた、、、ごめん。」
蒼汰「至福でした笑」

〇〇「寝てないの?」
蒼汰「寝れないよ笑」
〇〇「ごめん、、、」
蒼汰「じゃあお詫びに、これ許してくれない?」

差し出されたスマホの画面を見ると、
自撮りする蒼ちゃんと、蒼ちゃんの肩で眠る私。

〇〇「ちょっっっっ!」
蒼汰「可愛いんだもん」
〇〇「可愛いって、、、10以上、上よ?」
蒼汰「でも可愛いいの。なんて言うの?それ以外」

〇〇「俳優さんて、すごいね、、、」
蒼汰「俳優の時は台詞以外で言わないよ、、、あんまり。」

〇〇「そうなんだ、、、東京帰ったら、テレビとか見て見る笑」

蒼汰「俺は?何を見ればいいの?」

小さな声で切なそうに呟く。
え。言葉に詰まってると、車がホテルの地下駐車場に着いた。

裕貴「はい。お疲れー。到着ー!」
裕貴「わぁっごめん!マネージャーから着信
めっちゃはいってるわ。先に行ってて!
後で追いかけるから。」
〇〇「そんな悪いよ。もうここで。」
蒼汰「うん。そうだよもうここで。」
「裕貴、今日は色々とありがとうな」
〇〇「誘ってくれてありがとうね。楽しかったよ」
裕貴「ほんと?ごめんね。こちらこそ楽しかった!
   〇〇ちゃんいつでも連絡してね!」
蒼汰「あ。なにっ。ダメだぞ笑」
裕貴「笑 〇〇ちゃん明日はどこか行くの?」
〇〇「うん。友達が名古屋を案内してくれる」
裕貴「いいね!明日も楽しんでね。
じゃあね!またね!」


裕貴くんの車を見送って、ゆっくりと歩き出す。

蒼汰「俺のこと忘れないでって、何か買えば良かったな〇〇に」ポツリと呟いた。
〇〇「忘れないよ」

蒼汰「そういえば、ホテルの中にヴィトンとかエルメスとか入ってたね。」
〇〇「そんなの絶対もらえない笑」

蒼汰「また、歳のこと言うつもりでしょー、、、
   どうにもならないこと言わないでよ」

笑ってない口調に顔を見上げると
本当に悲しそうな顔をしていた。
〇〇「ごめん」
蒼汰「いや、ごめん」

少し周りを気にして、、、
歩きながら不意にキスされた。


驚いて足が止まる。

蒼汰「俺、、、子どもじゃないよ」

人通りが少ないホテルの地下駐車場。
夜の肌寒い風と
突然の出来事に止まりかけた心臓。

何も言わない私に

蒼汰「、、、ごめん」

蒼ちゃんが堪らず謝った。
蒼汰「急にごめん。こういうとこが年下だって
   思われるんだろうな笑」
〇〇「、、、ううん」
年下には、もう全然思えてなかった。

言えないけど。

エレベーターホールに着くと、
スマホに目を落とした蒼ちゃん。
蒼汰「ごめん。マネの部屋に呼び出し。
   明日の打ち合わせだって」


エレベーターに乗り込むと
蒼汰「部屋まで送れなくてごめんね。
何事もなかったように言う。
〇〇「んーん。明日は東京でしょ?
ちゃんとお仕事してね。おやすみ」
私も精一杯の平常心を装う。

先に私が降りて蒼ちゃんを見送る。
蒼ちゃんが電話の、仕草をしていた。
小さく頷き、扉が閉まると大きく息を吐いた。

シャワーを浴びながら私ヤバイなと、色々考える。熱いシャワーを浴びて冷静になろうと必死になる。

シャワーから上がって、ソファーに座り冷たい水を飲む。
ふとローテーブルに見慣れない雑誌が目に入った。

あ。今朝、蒼ちゃんが置いていったのか。

裏返された雑誌を表にすると、私ぐらいがターゲットのファッション雑誌だった。


ぱらぱらとめくって見る。蒼ちゃんのスペシャルインタビュー特集が組まれたいた。
細身のブラックスーツで妖艶な表情の蒼ちゃんが数ページに渡りポーズを決めていた。

カッコいい。

目についた記事を読むと、大事なものを守りたいとか、どちらの選択肢を選ぶかではなく、その選択が正解になるように頑張るとか、色々書いてあった。

へー、、、

大人っぽい写真に、鼓動が早くなってしまったのが悔しくて、もとにあった場所に裏返して置いた。

ベットに入っても、あの不意打ちを思い出しては
寝返りを打つ。

どーしよ。

後で取りに来る、とか電話の仕草をしてたけど、、、
そう思いながらベットに沈む感覚に襲われる。

電気を付けたまま寝てしまい、夜中に目を覚ますと0時を回ってLINEが入ってた。

蒼汰LINE「寝てるよね。
     打ち合わせ今終わった。おやすみ」
蒼汰LINE「明日気をつけてね」
どうしようか悩んで朝にしようと、また眠りにつく。

〇〇LINE「おはよう、ごめん、
     寝ちゃってた。頑張ってね」
朝起きてすぐLINEする。


直ぐに
蒼汰LINE「おはよう。〇〇も気をつけてね」と写真が添付されていた。

新幹線の窓からの景色らしい写真と、焦げ茶色の台本カバーらしいものが写っていた。
あ、遠い人。、、、ちょっと思う。

お昼過ぎの待ち合わせまで、朝ごはんをカフェで食べ、少し街をぶらぶらしてみる。

商業施設がオープンしたので雑貨店に開店と同時に入った。
スノードームが手作り出来る雑貨店。
バラエティ豊かなオリジナルのスノードームがたくさん置いてある。

1つずつ夢中で手にとって見ていた。
ふと我に帰り、蒼ちゃんが何か買いたかった、と言っていた事を思い出した。

桜の花びらが舞うスノードーム 。
桜の頃に出会った思い出としてだからコレがいいかな。

私の手のひらに、ちょこんと乗るほどの大きさのそれを2つ買った。
1つはプレゼント用に包んでもらう。

蒼ちゃんの家に飾ってくれるといいな。
一年で1度でいいから、思い出してくれるかな。

友達との待ち合わせ場所に急ぐ。
待ち合わせ場所の広場には友達の姿はまだなく、少しして来た彼女と街を歩きだした。

同じ店の紙袋を2つ持つ私に、
「彼氏にプレゼント?〇〇いい顔してるねー笑」

彼女とは元々、取引先の担当者で仕事への向き合い方やスタイルが合い、仕事以外の話しもする仲だった。
担当が変わったタイミングで友達としてプライベートで付き合うようになった。
出張で名古屋に来ていてる事を伝えると、名古屋を案内してくれると言ってくれていた。

〇〇「彼氏じゃないんだけど、、、どうしよ」
彩葉(いろは)「どうしよも何も答えは出てるような
顔してるよ笑」

彩葉のダイレクトな物言いに、納得するしかなかった。


彩葉オススメのショップやカフェ巡りをしながら
夕方になり広場を通りかかると、ステージが組まれイベントをしていた。

人混みの隙間から見ていると
映画の大ヒット御礼イベントらしく
レッドカーペットを蒼ちゃんが颯爽と歩いていた。

午前中は東京でイベントして夕方からはここでイベントだったんだ。。。

はぁっと息を飲み、目が奪われた。

大人っぽい表情で夕暮れの街並みを背にポーズをとる蒼ちゃんは、私より10以上 下には見えない、色気を纏う、大人の男だった。


衣装は薄いグレーの3Pスーツ。ギンガムチェックのシャツにブラックタイ。可愛らしい衣装で爽やかさも格別だった。
彩葉「福士くんて、爽やかなのに色気も凄いね」
うん、と小さく答えて目を逸らす。

ちょっと不安げな声のトーンを聞き逃さず
彩葉「渡すんでしょ。彼に。」
私が持つ紙袋を指差して優しく微笑んだ。
〇〇「やめようかな。
   私と彼とじゃ釣り合わない、、、」
泣き言をいう私の目を見て
彩葉「彼は〇〇を好きなんでしょ?
   なら釣り合うかどうかは、彼に任せたら?
   〇〇が踏み込めない理由が何か分からない
   けど、似合ってるんじゃない?笑」
〇〇「え?誰かもわからないのに?笑」
そう言って2人で笑いあった。

そろそろ戻る時間になった。
次は東京を案内するから連絡してね!と言うと
直ぐにまた連絡するね!じゃあね!と別れた。

ホテルに1度戻り蒼ちゃんにLINEする。

〇〇LINE「仕事終わったらLINEして?
     もうホテルに戻ってるから」
30分ほどしてお店のURLが届いた。

蒼汰LINE「19時ここ、来れる?」

ホテルから歩くと少しかかるかな。
タクシーに乗って行くことにして、唯一のワンピースにビジュがついたサンダルを履いて、髪も少し巻いてルーズめのアップにする。

帰りは寒くなるかもとジャケットを羽織る。

黒いワンピースに大きめのピアスをして小さいバックを持つ。赤いリップをして、ちょっと気合い入りすぎかな、、、と恥ずかしくなる。

遅れちゃう、、、と昼間買った紙袋を持って部屋を出てホテルの前でタクシーに乗る。運転手さんにお店のURLを見せて出発する。


お店に着いて席に案内される。

川沿いのテラス席。淡い灯りが大人の雰囲気。
その川沿いの奥の席に蒼ちゃんが座っていた。

黒いギンガムチェックシャツに薄いグレーのジャケット羽織り、軽く手をあげる。

福士蒼汰だ、と思って笑ってしまう。
さっきイベントしていた福士蒼汰がそのままここにいる。

蒼汰「いーね。大人っぽい。可愛い」
〇〇「ぽい、じゃなくて大人なんだよ笑 
蒼ちゃんも、、、」

蒼汰「ん?」
〇〇「福士蒼汰だね」
蒼汰「イベント終わりで、ネクタイとベストは
   脱いでそのままの衣装で来たからね。
   買取りしてきた笑」

〇〇「夕方の広場のイベント、見たよ。
   たまたまだったけどね。」
蒼汰「そうだったの⁉︎ なんか恥ずかしいわ笑」

メニューを開いて、眺める。

蒼汰「ここ裕貴が教えてくれたの。
クラフトビールが美味しいんだって。」
〇〇「そうなの!飲みたい!」

オススメの料理を何品かをオーダーし、クラフトビールも頼む。

蒼ちゃんは黒のクラフトビール。私はフルーツフレーバーのクラフトビールをオーダーした。

夜の始まりとともに、川沿いの街並みにうっすらと灯りがともり始めていた。

景色に見惚れながら、蒼ちゃんの横顔を見る。
溜息が出るほど美しかった。

これが友達だったり、彼氏だったり、、、
一般の人なら写真に収めておきたい、と思うんだけどな。


蒼汰「どーしたの?黙って」

〇〇「見惚れてた。暮れていく街に」
蒼汰「きれいだよね、、、」

〇〇「蒼ちゃんの写真、撮ったらダメ、、、
   だよね?」
蒼汰「え?確かに撮ってないね。いーよ。
〇〇なら全然いいよ。」

〇〇「笑 景色見ていた蒼ちゃんが、、、
   綺麗だった」
蒼汰「こう?笑」

ちょっとわざとらしくポーズをとる蒼ちゃん。
パシャ、私のシャッター音が鳴った。

ほら、と見せた写真は、夜景も蒼ちゃんも綺麗に写っていて。
目を細めて景色を見る蒼ちゃんの横顔は、息を飲むほど美しかった。

〇〇「さすが、だね。笑」
蒼汰「惚れる?」
〇〇「この福士蒼汰。惚れない人いないんじゃな
   い?笑」

蒼汰「いるわ!俺も撮っていい?起きてる顔 笑」

カメラを向けられ、思わず照れ笑いを浮かべて下を向く。その瞬間のシャッター音。

蒼汰「あ、いいじゃん。いつもの〇〇だ」

しばらくして、料理とビールがきた。
〇〇「最後の夜に」
グラスを合わせる。


蒼汰「んー!!!美味しい。」
〇〇「んー!!!ほんと!裕貴くん様々だね」
蒼汰「ほんとだね笑」

もう一口、クラフトビールを味わいたいところだけど、忘れないうちに、紙袋を出す。

〇〇「可愛かったからね、、、
買っちゃった。邪魔かな、、、」
蒼汰「あ、ありがとう、、開けてい?」

〇〇「桜の季節の思い出として、、、
ちょっと可愛いすぎたかな、、、」
蒼汰「ううん、ありがとう。嬉しい。飾るよ。
   桜の季節じゃなくても飾るよ。」

もう会えないかもしれないと買った、スノードーム を手に取り見つめている。

ちょっと複雑な表情の蒼ちゃん。
あ、困ってる、、、26歳の男の子には微妙な
チョイスだった、、、と、後悔した。

蒼汰「俺も、、、これ。」
〇〇「え?」
気恥ずかしそうに蒼ちゃんが出してきたのは
私が渡したのと同じ紙袋。

蒼汰「開けてみて。」

包みを開けると、私の桜のスノードームと同じ
大きさの宇宙がモチーフのスノードームだった。

蒼汰「俺、なにかと月とか宇宙とかと縁があって
   ね。で、それオルゴール付きなんだよ笑」

〇〇「ありがとう、、、でも、これ」
蒼汰「うん、新幹線に乗る前にこの店でロケ
   したの。その時に、買った、、、」
〇〇「そんなことある?こぉわ笑。私、自分のも
   買ったから2つ並べて飾るね。ありがとう。」


蒼汰「待って 笑。俺も自分のも買った、、、笑」
大きな声で笑い合った。
蒼汰「2人似てるんだよ。きっと」
〇〇「笑 びっくりしたー」

まだ一口しか飲んでなかったビールとオススメのソーセージを
蒼汰「食べて!飲もー。」
進められる。 

ソーセージもクラフトビールも今までの中で1番美味しいかった。

〇〇「めちゃくちゃ美味しい!!」
蒼汰「うん!」

思わず、店員のお兄さんに東京にも店舗はあるの、と食い気味に聞いてしまった。


蒼汰「東京の店舗にも行く?」
〇〇「行きたい、行きたい!」
満足そうに微笑む蒼ちゃんを見ながら、
胸がギュッとする。

煮込みやサラダも来て、どれも美味しく、美味しいねと笑い合う。

〇〇「明日もイベント?」
蒼汰「うん、午前中は取材で午後から大阪で
   イベントかな。」
〇〇「映画公開した後も色々あるんだね」

〇〇「オルゴールの雑貨屋さんのロケの
放送ってまだ先なの?」
蒼汰「そうだね。まだ先だね。」

〇〇「どんな気持ちなのかな、、、」
蒼汰「ん?」

〇〇「嬉しいのかな、寂しいのかな、、、
恥ずかしいのか、懐かしいのか、つらいのか」
蒼汰「つらいって、、、一緒にびっくりしたよねっ
て笑いたい」

その画はなんとなく浮かばなくて。
多分 私は家で1人で見るんだろうな、と力なく笑う。

蒼ちゃんも多分そう思ってる。
地方だから、東京ほど人目を気にせず過ごせた。
東京ではこんな風に過ごせない。

〇〇「頑張ってね」

蒼汰「近くで、応援してくれないの?」
〇〇「、、、応援は、するよ。」

〇〇「でも、近くで迷惑をかけるのも、近くにいる
   のに遠くに感じるのも、、、つらいな」
蒼汰「じゃあ俺〇〇を待ってる、ずっと待ってるよ
   だから、暇な時でもいいし、寂しい時でも
   いいし、 いつでも連絡してきて?」
〇〇「笑 わかった」

疎遠になるのが目に見える約束。
でも蒼ちゃんの為にはそれがいい。

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