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おたねさんちの童話集「井戸端クイズ」

井戸端クイズ
 
「第一問!この国で一番高い山はなんカナ~?わっかるカナ~?」
司会のカナヘビが、大きく声を張り上げました。
今日は家族対抗、井戸端クイズ大会の当日です。
「ピンポーン!」
最初にボタンを押したのは、イモリの親子でした。
「キタノタカイヤマ!!」
ブブー。不正解のブザーがなりました。
「ピンポーン!」
続いて回答ボタンを押したのは、ヤモリの兄弟です。
「アタリデイチバンタカイヤマ!!」
ブブー。また不正解みたいです。
「ピンポーン!」
最後に回答ボタンを押したのは、トノサマガエルの夫婦でした。
「ムコウノオヤマ!!」
「正解!正解!大正解!」
司会のカナヘビが大声で叫びました。
「ちょっと待ってよ!」
イモリのパパが叫びました!
「キタノタカイヤマの方が、ムコウノオヤマより高いじゃないか!」
「え~、イモリのパパのご指摘にお答えします。確かにキタノタカイヤマの方が、ムコウノオヤマより高いのですが、カナヘビの間では、キタノタカイヤマは別の国となっています。なのでキタノタカイヤマは不正解です。」
「そんな!イモリの間では、キタノタカイヤマのあるキタノアタリもここと同じ国になっているのに!」
「イモリのことはしりません。問題はすべてカナヘビが作っているので、答えはぜんぶカナヘビが基準に決まっています。
「だからアタリデイチバンタカイヤマもダメなの!」
「いえ、アタリデイチバンタカイヤマはあんまりにも寒いので、カナヘビは誰もいったことがないのです。だから高いかどうかも分からないから不正解なのです」
カナヘビは平然と答えました。
「では気を取り直して第二問!みなさんの目の前にある井戸は、いったいどこへつながっているのカナ~?わっかるカナ~?」
「ピンポーン!」
またもや最初にボタンを押したのは、イモリの親子でした。
「井戸だから、下に水が湧いているだけ!どこにもつながっていないヨ!」
ブブー。また不正解のブザーがなりました。
「ピンポーン!」
やっぱり続いて回答ボタンを押したのは、ヤモリの兄弟でした。
「地下水はムコウノカワからも湧いていたから、ムコウノカワまでつながっている!」
ブブー。やっぱり、また不正解でした。
「ピンポーン!」
「ピンポーン!」
やっぱり最後に回答ボタンを押したのは、トノサマガエルの夫婦でした。
「井戸には確かに横穴が開いているけれど、真っ暗で誰も奥へと進んだことがないから分からない!」
「正解!正解!大正解!」
司会のカナヘビが、やっぱり大声で叫びました。
「ちょっと待ってヨ!分からないが正解なんて問題、おかしいよ!」
今度は、イモリの親子とヤモリの兄弟が同時に声を出しました。
「だって分からないから、分からないと言ったまでです!何か問題でも?」
イモリの親子もヤモリの兄弟も、あんまり腹が立ったものですから、司会のカナヘビのところまで走ってきました。
「ちょっと待って!ちょっと待って!」
司会のカナヘビは、びっくりして二組の家族を制止しようとしました。でも、イモリの親子もヤモリの兄弟も、すっごい勢いでやってくるから止まるはずはありません。司会のカナヘビもイモリの親子も、ヤモリの兄弟も、みんな井戸の中へおっこちてしまいました。
「やれやれ、仕方がないか」
トノサマガエルの夫婦は互いに顔を見合わせて、一緒に井戸の中へと飛び込みました。
「ほら、言わんこっちゃない!」
一番泳ぎの苦手なカナヘビは、トノサマガエルの旦那さんに助けられて、石の崖まで運んでもらいました。
「お前ら、そんなに怒るけどな。ちょっと考えたらわかることだろ。こんだけ泳ぎの苦手なやつが、井戸の底になにがあるなんて分かっているはずがないじゃないか・そう考えたら、答えは分からない以外に考えられないだろ!」
「じゃあ、第一問は、なんでわかったのさ!」
「そら、カナヘビが問題を出しているからさ!この馬鹿でわがままなカナヘビが作る問題なのに、このへんで一番高そうな山を適当に答えていら正解するさ。だってこいつは、胃の中の蛙ならぬ、井戸端のカナヘビなんだぜ!」
イモリの親子も、ヤモリの兄弟も思わず、なっとくしてしまいました。
「でも、じゃあ、お前さんは、もしかしたら、この横穴の奥に何があるのかもしっているのかい?」
イモリのパパがトノサマガエルの旦那に尋ねました。
「ああ、知っているさ!でも、教えない」
「なんでだよ!ほんとは知らないんだろう?」
「そんなことは…」
と言おうとして、トノサマガエルは思わず口を閉じました。
「べつに、そう思うんだったら、それでもいいさ!勝手にそう思っていな」
「そんなことより、お前たちは、どうやって上まであがるのさ!」
ヤモリの兄弟がすいすいと壁をのぼりながら言いました。カナヘビも、ヤモリの兄弟を追いかけて登っていきました。
「お前たちも早く行けよ!」
トノサマガエルの夫婦は、イモリの親子に向かって叫びました。
「でも…。お前さんたちはどうするんだい?」
イモリの親子は急に心配になってきました。だって、トノサマガエルの夫婦がこの険しい壁を登れそうもないように思えたのです。
「大丈夫だって言われても、お前たちは、いったいどうやってこの壁を登るのさ!」
そこまで、叫んでイモリのパパはハッとしました。
もしかして!
イモリのパパは、急に進路を変えました。あの真っ暗な横穴へと入っていったのです。
「こら、やめろ!そこへ入るな!」
トノサマガエルの夫婦は慌てて大声を出しました。
が、間に合いません。
イモリの親子はずんずんと真っ暗な穴の中を進んでいきました。そうして、目の前の水の中へと飛び込んで、ぐんぐんぐんぐんと泳いでいきます。
「おや!あんなところに光が見える!」
イモリの親子は光を目指して泳いでいきます。
そこは、近所にあるため池でした。お百姓さんが、このため池から田んぼに水を流すのを、イモリのパパは見たことがありました。
「そうか!それでトノサマガエルの夫婦が必死になってとめたんだ」
「おーい!トノサマガエルのご夫婦よ!心配しなくても俺たちはお前さんたちの卵なんて食べやしないさ!」
そこには水草に括りつけられた、たくさんのカエルの卵がありました。
「でも、決して誰にもいうんじゃないぞ!」
イモリの親子が地上へと這い上がったころ、ため池の向かうから、グワグワと大きな鳴き声が聞こえました。
「パパ!僕が卵だったころ、パパを僕を守ってくれた?」
「ああ、当り前さ。みんな、それぞれ、いろんなルールで生きているけれど、子供を思うパパとママの気持ちだけは、みんな一緒なんだから」
太陽はずいぶんと高く上がってきました。きっとあと一週間もすれば、ため池には、たくさんのオタマジャクシが泳いでいることでしょう。
ところで、井戸端クイズ大会は、どうなったのカナ~。また忘れた頃に開催されないカナ~?井戸端クイズ
 
「第一問!この国で一番高い山はなんカナ~?わっかるカナ~?」
司会のカナヘビが、大きく声を張り上げました。
今日は家族対抗、井戸端クイズ大会の当日です。
「ピンポーン!」
最初にボタンを押したのは、イモリの親子でした。
「キタノタカイヤマ!!」
ブブー。不正解のブザーがなりました。
「ピンポーン!」
続いて回答ボタンを押したのは、ヤモリの兄弟です。
「アタリデイチバンタカイヤマ!!」
ブブー。また不正解みたいです。
「ピンポーン!」
最後に回答ボタンを押したのは、トノサマガエルの夫婦でした。
「ムコウノオヤマ!!」
「正解!正解!大正解!」
司会のカナヘビが大声で叫びました。
「ちょっと待ってよ!」
イモリのパパが叫びました!
「キタノタカイヤマの方が、ムコウノオヤマより高いじゃないか!」
「え~、イモリのパパのご指摘にお答えします。確かにキタノタカイヤマの方が、ムコウノオヤマより高いのですが、カナヘビの間では、キタノタカイヤマは別の国となっています。なのでキタノタカイヤマは不正解です。」
「そんな!イモリの間では、キタノタカイヤマのあるキタノアタリもここと同じ国になっているのに!」
「イモリのことはしりません。問題はすべてカナヘビが作っているので、答えはぜんぶカナヘビが基準に決まっています。
「だからアタリデイチバンタカイヤマもダメなの!」
「いえ、アタリデイチバンタカイヤマはあんまりにも寒いので、カナヘビは誰もいったことがないのです。だから高いかどうかも分からないから不正解なのです」
カナヘビは平然と答えました。
「では気を取り直して第二問!みなさんの目の前にある井戸は、いったいどこへつながっているのカナ~?わっかるカナ~?」
「ピンポーン!」
またもや最初にボタンを押したのは、イモリの親子でした。
「井戸だから、下に水が湧いているだけ!どこにもつながっていないヨ!」
ブブー。また不正解のブザーがなりました。
「ピンポーン!」
やっぱり続いて回答ボタンを押したのは、ヤモリの兄弟でした。
「地下水はムコウノカワからも湧いていたから、ムコウノカワまでつながっている!」
ブブー。やっぱり、また不正解でした。
「ピンポーン!」
「ピンポーン!」
やっぱり最後に回答ボタンを押したのは、トノサマガエルの夫婦でした。
「井戸には確かに横穴が開いているけれど、真っ暗で誰も奥へと進んだことがないから分からない!」
「正解!正解!大正解!」
司会のカナヘビが、やっぱり大声で叫びました。
「ちょっと待ってヨ!分からないが正解なんて問題、おかしいよ!」
今度は、イモリの親子とヤモリの兄弟が同時に声を出しました。
「だって分からないから、分からないと言ったまでです!何か問題でも?」
イモリの親子もヤモリの兄弟も、あんまり腹が立ったものですから、司会のカナヘビのところまで走ってきました。
「ちょっと待って!ちょっと待って!」
司会のカナヘビは、びっくりして二組の家族を制止しようとしました。でも、イモリの親子もヤモリの兄弟も、すっごい勢いでやってくるから止まるはずはありません。司会のカナヘビもイモリの親子も、ヤモリの兄弟も、みんな井戸の中へおっこちてしまいました。
「やれやれ、仕方がないか」
トノサマガエルの夫婦は互いに顔を見合わせて、一緒に井戸の中へと飛び込みました。
「ほら、言わんこっちゃない!」
一番泳ぎの苦手なカナヘビは、トノサマガエルの旦那さんに助けられて、石の崖まで運んでもらいました。
「お前ら、そんなに怒るけどな。ちょっと考えたらわかることだろ。こんだけ泳ぎの苦手なやつが、井戸の底になにがあるなんて分かっているはずがないじゃないか・そう考えたら、答えは分からない以外に考えられないだろ!」
「じゃあ、第一問は、なんでわかったのさ!」
「そら、カナヘビが問題を出しているからさ!この馬鹿でわがままなカナヘビが作る問題なのに、このへんで一番高そうな山を適当に答えていら正解するさ。だってこいつは、胃の中の蛙ならぬ、井戸端のカナヘビなんだぜ!」
イモリの親子も、ヤモリの兄弟も思わず、なっとくしてしまいました。
「でも、じゃあ、お前さんは、もしかしたら、この横穴の奥に何があるのかもしっているのかい?」
イモリのパパがトノサマガエルの旦那に尋ねました。
「ああ、知っているさ!でも、教えない」
「なんでだよ!ほんとは知らないんだろう?」
「そんなことは…」
と言おうとして、トノサマガエルは思わず口を閉じました。
「べつに、そう思うんだったら、それでもいいさ!勝手にそう思っていな」
「そんなことより、お前たちは、どうやって上まであがるのさ!」
ヤモリの兄弟がすいすいと壁をのぼりながら言いました。カナヘビも、ヤモリの兄弟を追いかけて登っていきました。
「お前たちも早く行けよ!」
トノサマガエルの夫婦は、イモリの親子に向かって叫びました。
「でも…。お前さんたちはどうするんだい?」
イモリの親子は急に心配になってきました。だって、トノサマガエルの夫婦がこの険しい壁を登れそうもないように思えたのです。
「大丈夫だって言われても、お前たちは、いったいどうやってこの壁を登るのさ!」
そこまで、叫んでイモリのパパはハッとしました。
もしかして!
イモリのパパは、急に進路を変えました。あの真っ暗な横穴へと入っていったのです。
「こら、やめろ!そこへ入るな!」
トノサマガエルの夫婦は慌てて大声を出しました。
が、間に合いません。
イモリの親子はずんずんと真っ暗な穴の中を進んでいきました。そうして、目の前の水の中へと飛び込んで、ぐんぐんぐんぐんと泳いでいきます。
「おや!あんなところに光が見える!」
イモリの親子は光を目指して泳いでいきます。
そこは、近所にあるため池でした。お百姓さんが、このため池から田んぼに水を流すのを、イモリのパパは見たことがありました。
「そうか!それでトノサマガエルの夫婦が必死になってとめたんだ」
「おーい!トノサマガエルのご夫婦よ!心配しなくても俺たちはお前さんたちの卵なんて食べやしないさ!」
そこには水草に括りつけられた、たくさんのカエルの卵がありました。
「でも、決して誰にもいうんじゃないぞ!」
イモリの親子が地上へと這い上がったころ、ため池の向かうから、グワグワと大きな鳴き声が聞こえました。
「パパ!僕が卵だったころ、パパを僕を守ってくれた?」
「ああ、当り前さ。みんな、それぞれ、いろんなルールで生きているけれど、子供を思うパパとママの気持ちだけは、みんな一緒なんだから」
太陽はずいぶんと高く上がってきました。きっとあと一週間もすれば、ため池には、たくさんのオタマジャクシが泳いでいることでしょう。
ところで、井戸端クイズ大会は、どうなったのカナ~。また忘れた頃に開催されないカナ~?

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