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いつも最高最低

人生は、最高と最低の繰り返し。


初夏に子どもが産まれた。
立ち会い出産だった。妻の頑張りを一番隣で見られた。

妻とは、久々の再会から結婚・出産と、一年半くらいで全てがとんとん拍子に事が進んでいった。

紛れもなく、人生最高の期間であった。

私は現在育児休暇中。毎日毎日、妻と子どもと三人で24時間一緒に居られる幸せを噛みしめている。毎日毎日、ずっとこの時間が続けばいいなと心の底から思っている。


夏が終わりそうな頃。
息抜きがてら、旧友たちと遊ぶ事になった。
その日は海でサーフィン予定だったので、早朝に家を出た。
妻はいつも通り、朝のミルクで既に起床していた。

「ごめんね、〇〇(子の名前)を宜しくね〜。行ってくるね。」

いつも通り玄関までお見送りをしてくれた。

小田急線に乗り、湘南まで。
友だちの1人とは登戸で落ち合った。地元が同じの、一番古いお友達。
その日の暑さを嘆き合った。

他のみんなとは、現地で落ち合った。
去年ぶりのサーフィン。去年と同じ場所で、去年と同じメンバーで。
友だちとの時間は、幸せだ。会うたびに感じている。

その日は特に暑かったので、海が気持ちよかった。サーフィンはインストラクターについてもらい、教えてもらいながらのスタート。
去年よりも、上手くなっている!気がした。
別にそんな事はなかった。

ボード上で腹ばいになり、上体を反って両手で水をかく。パドリング。
インストラクターの「立って!」の指示と同時に、ボード上に立ち上がる。


その瞬間だった。
感じた事のないような痛みを腰に感じた。

腰を捻っただけかと感じていたが、時間が経つにつれて立つ事も難しくなっていく。
帰り道は、友だちにおぶさってもらいながら少しずつ進んだ。
暑さと痛みに限界を感じ、救急車を呼んでもらう事に。

すぐに救急車は到着。
辻堂の病院まで運ばれ、レントゲンを撮ってもらう。異常は無し。
応急処置として、痛み止めの坐薬を入れてもらった。

「これ以上は、MRIを撮らないと分からない」

理由は忘れたが、その病院ではレントゲン以上の事はしてもらえず。軽く入院を勧められたが、意地でも帰りたかったので、タクシーと電車で帰宅。
帰路も歩行がままならない状態で、なんとか帰宅。

夕方頃に、排尿が出せない事に気付き、いち早く救急へ連絡。
運悪くその日は日曜日で、どこの病院も受け入れてくれなかった。

1時間ほど救急車で待機後、ようやく受け入れ先の病院が見つかった。
到着は21時頃だった。
MRIもCTも撮ってもらった。
長い時間待って、ようやく結果を言い渡された。

「サーファーズミエロパチー」

ではないか、との事。

知られた言葉で言うと、脊髄損傷。
どうやら、長時間ボード上で上体を反るという慣れない動作の時に、胸椎の神経を傷つけてしまったらしい。

直近で、体操のひろみちお兄さんのニュースや、職場(介護施設)でそういった方々を身近に見てきていたからこそ、その言葉を聞いた時に恐怖を感じた。

よりによって、一番恐れていた病気に自分が襲われるなんて。心から絶望した。
検査など全てが落ち着いた頃には、もう午前2時を回っていた。


それでも、妻と子どもの毎日の連絡・励ましのおかげで割と直ぐに前を向けた。この先いかなる状況でも、受け入れられるような心の状態は準備できていた。
比較的ポジティブで良かった。

毎日たくさん祈った。自分の心だけは折れないように。たくさん楽しい事も考えた。友だちも、妻も、地域の知人も、お見舞いに来てくれた。病院の看護師さんも理学療法士さんも良い人だった。

入院中はいろんな事を経験した。
ステロイド治療もした。オムツも履いた。初めての下剤も、摘便も。バルーンだって挿入した。嫌いな注射も点滴も、血糖測定も。

気持ちが落ちそうな度に、「自分なら大丈夫」と言い聞かせた。
今まで辛かった事も、そうやって全部乗り越えてきた。

リハビリのおかげで、入院から3日ほどで少しずつ歩けるようになった。
気持ちがいかに大事を感じた。

自分の周りの全ての人のおかげで、入院は2週間で済んだ。念願の在宅復帰。
再び妻と子どもとの生活が始まった。幸せを感じずにはいられなかった。

人生は最高と最悪の繰り返し。
最悪な事なんて起こらなくていい。かといって、最高な事ばかり、なんかもあり得ない。
いかに「普通」が尊いかを感じさせられる。
なにもかも普通でいい。特別な事なんてなにもいらない。

在宅復帰後は、それまでしていたように妻と子どもとの散歩を日課にしている。
日々、足腰が戻ってきている事を実感している。今は、胸椎損傷の影響で「膀胱直腸障害」が残ってしまっている。
自力での排尿が難しく、自分で尿道に管を入れ導尿をしている。
いつまで続くかな。


本当に当たり前の事なんかなに一つない。
手足が自由に動かせる事。好きな場所に好きな時に行ける事。好きな人と隣に居られる事。

もうしばらく病気とは向き合っていかなければいけないが、
全てに感謝をしながらこれからを生きていきたい。

どうか、同じ病気に悩まされる方々。
気持ちだけは負けませんように。
起こりうる全ての事が、何かの良いきっかけになりますように。


#サーファーズミエロパチー
#脊髄損傷
#胸椎損傷





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