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パンクはコメディーが似合う

Title image: (C) https://www.instagram.com/yoshi_nochan/

俺の孤独が魚だったら、巨大さとどう猛さに、鯨でさえ逃げ出す
俺の挫折が魚だったら、悲痛さと滑稽さに、海にさえ棲み処がない
俺の正義が魚だったら、どん欲さと傲慢さで、海底のマグマでさえ爆発させてやる
ジョン・G・ハーニホウ/富樫哲郎訳

 『フィッシュストーリー』の音楽は斉藤和義氏が担当している。本編でカギとなるFish Storyという曲も斉藤氏作。ピストルズを連想する、ストレートだが、今聞くと腑抜けた音にあえてしていると思う。曲は、斉藤氏の「歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017」、映画からスピンアウトしたバンド「逆鱗」のアルバムで聞くことができる。
映画自体は、低予算映画感をわざと出している。その中で、パンクバンドのカットだけちょっとリアルな匂いにしている。多部未華子が高校生役で出ている。出演時間は少なく、演技もいまいちだが、とても新鮮だ。

 多部未華子は『あやしい彼女』で主演している。パンクバンドが、昭和歌謡ロックに転身して成功するというコメディーだ。独特な歌唱力があり、人を惹きつけるという設定になっている。映画自体もこの独特な歌唱力を前面に出しているので演技、歌唱は大変だったろう(歌がうまいという設定の演技は大変じゃないだろうか)。本編終了後のおまけ映像で彼女が再生したバンドが演奏している。この時の多部未華子は、カラオケ乗りですさまじくかわいい。かわいさとエグさの対比をねらっているのだろう。それにしても、宣伝のイメージ画はどうしたものか。音楽は小林武史だ。

話を戻して、『Fish Story』の予告編を見てみよう。

本編を正確にダイジェストしているが、本編とは印象が全く違う。本編はもっともっと面白い。浜田岳も若いし、重要な役回りで出てくる森山未來も若い。ブレイク直前の滝藤賢一も出ている。

もう一本紹介する。
『グッモー・エビアン!』
タイトルは、Good morning everyoneを英語発音ぽくしたものと思われる。主人公大泉洋がこんな感じで言っている。
キングオブコメディー大泉洋とクイーンオブコメディー麻生久美子のダブル主演。
これだけで参る。
こっちの予告編は悪くない。

演奏シーンは少ない。パンクやっているやつが家族にいるとどうなるんだというストーリーだ。

もう一本。
これは作風がメジャー指向っぽくて、しけてる。おじさんパンクバンドが何十年ぶりかに再結成する話だ。
主演佐藤浩志、だめだわな。宮崎あおい共演、きびしいな。
『少年メリケンサック』
これもコメディー。監督、宮藤官九郎。どうしたんだ官九郎。

Fish Storyとは、「俺はこんなでかい魚を釣ったぜ。最後に糸が切れれて、逃げられちまったが」という釣り人の自慢/自虐話のことを言う。ティム・バートンに『ビッグ・フィッシュ』という作品がある。ビッグ・フィッシュを日本語に訳すとしたら「大法螺」だろう。ハリウッドの映画は、金がかかっていて、Fish Storyとは対極の作りだ。

パンクってなんなんだろう。
人生の”パンク”じゃないだろうか。
バカっぽくってストレート。
社会とうまく折り合えない面々の物語。
見方を変えるとパンクは人生のコメディー。
だから、笑える、だから、元気になれる。

私の孤独はとても大きくて強い。たとえるなら鯨だ。ほら話のようだが
私の挫折はとても悲しく滑稽なほどだ。海でさえ飲み込むことはできない。ほら話ではない
私の正義はとても気高く高邁だ。海底火山の噴火ほどの力を持つ。ほら話だと思うか

柴田英寿改

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