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好きで好きで大好きで

むか〜しむかし、大好きな人がいました。

私が二十歳の時です。

あちらは確か一つ上だったかな?いや、3っつくらい?4っつ?わからんけどそのくらい年上でした。

ファッション業界に入って2年目。大好きなブランドの洋服に囲まれて毎日楽しくて楽しくて仕方がなかった。

その人は同じ商業施設の中で別の店にいました。一つ下の階、メンズフロアの憧れのブランドで店長をしていました。

ちょっと中性的な雰囲気とそのスレンダーな身体に繊細な着こなしがめちゃくちゃオシャレでいつも憧れて陰から見つめていました。

お昼の休憩時間になるとワンフロアー上の階に上がってきて私のショップの前を通ってカフェへ行くのですが、その時に必ず店の中をチラッと覗いていくんです。一瞬のそのタイミングを逃すまいと、見当をつけた時間になる頃、わざとらしく店の前方にいて、彼が前を通るときに「お疲れ様です!」と声を掛けれたらその日一日がめちゃくちゃハッピーでした。

ニッコリ笑って「お疲れ様!」と言ってくれて、もうそれだけで天にも昇る気持ち。憧れの君は他にも沢山のお店の女の子たちから好かれていましたので私なんて眼中になかった。分かっているけど一度でいいから二人で面と向かって話がしてみたいな〜と夢見ていました。

いつも誰か彼女がいて、別れたらまた誰かと付き合っていると噂は絶えません。

そんなモテる人だから、余計になかなか近寄りがたくいつも遠目にその麗しい姿を見つめていました。

それからしばらくして、なんかのきっかけでちょっと仲良くお近づきになって、一度だけ二人っきりで飲みに行ったのね。その時、「verdeちゃんとはいつ付き合うの?って、みんなから言われてたんだよね」って言うんです。はぁ???ってなりますよね。突然そんなこと言われると。要するに周りのみんなからの情報で私が彼を好きなのはバレバレだったわけです。彼はそうやって冷やかされていたのを暗に私に言うことで「俺のこと好きなんでしょ?分かってるよ」と私の心を認識してくれていることを伝えてきました。私はなんと言っていいか分からずなんとなく笑って誤魔化してしまいました。本当に昔っから私は自分の気持ちを伝えるのが苦手で、天邪鬼だった。あの時「いつ付き合ってくれるの?」くらいのことが言えていたら、本当に彼女になれたかもしれないのにね。

いつも私はそんな風に好きな人に自分の気持ちを伝えきれなくて恋が成就することはなかったんです。全くどうしようもないあかんタレでした。

まあ、その時は二十歳そこそこのお子ちゃまでしたから仕方ないよね。もしも付き合っていたとしてもモテ男の彼とうまく付き合い続けることなんてできなかったと思います。

でも、あの頃のキラキラした時間とドキドキした恋は間違いなく私の青春でした。毎日が楽しくて仕方がなかった。若くて、恥ずかしくて、分かってもらいたくて、見つけて欲しくて。一生懸命だった。きっとイタくておバカで可愛かっただろうなと思います。

誰にもある青春の日々、この曲を聴くとそんなかけがえのない私だけの思い出が甦ってくるんです。ちょっぴりハートがキュンと疼いて、ウワッとなるけどなんとも言えない清々しさと一途な透明感を思い出す。好きで好きで大好きで。それだけで毎日がハッピーだった日々。

楽しかったね。泣きたくなるほど愛しい日々。


#藤井風 #青春病 #恋 #失恋 #若さ #思い出 #エッセイ

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