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解放のドア

タカーシーさん、眠っていらしたんですね。
鬱の時は繭玉の中に入ってじーーーっと静かに心と身体を休ませてあげてくださいね。いくらでも寝られますよね。欲しいだけ睡眠を貪って、少しずつ目覚めてくる。何もかも放り出して、とにかく寝てください。心の赴くままに。
そうやって自分の心の声をしっかりと受け止めることができるのは大人だからです。対処法も知っている。とてもいいことだと思います。

私は小さい頃から自分の感情を言葉や態度に出すのがとても苦手でした。
きょうだいが4人、祖父母もいて、大家族のお世話で母はいつも忙しく、あまり構ってもらえなかったというか、大人に自分の話をきちんと対峙して聴いてもらうという場面がほとんどなかった気がします。放任と言えば聞こえはいいけれど、要するに放ったらかしです。

日常は二人いる姉たちに付いていくだけで必死で、姉たちの言うことが全て正解で自分の考えを表に出すということができませんでした。人見知りだったこともあり、家ではとても静かな子供だったと思います。嫌なことをイヤと言えない子でした。

学生時代は仲良しの友達に囲まれて楽しく過ごしていましたが、同級生の男子と口をきくのがとても苦手でした。
本当はもっと話したかったし仲良くなりたかったのですが、どんな話をすればいいか分からないし、私の顔が「いつも怒ってる」みたいな一重瞼の鋭い目付きと口角が下がったへの字口だったため、近づいてくる男子はほとんどいませんでした。なんだか知らないけど、怖がられていたんです。

だから社会人になって、接客業に就いて、笑顔がデフォルトになって人との関係性の作りかたを学ぶようになってからは、男性の仕事仲間とも仲良く交わることができるようになりました。

でも、若さって色々めんどくさいじゃないですか。ちょっと仲良くなったらすぐ付き合おうとかなんとかややこしくなってくる。そういうの要らんのになぁ、と思いつつせっかく仲良くなってもそのまま穏やかに続いていくということは少なかった気がします。

年を取ることは見た目の面では残念なことがたくさんあるけれど、それとは引き替えにいいこともあってね。
私の場合、50才を過ぎた辺りからすんごく楽になってきたんですよね。色々と。

まず、自分が女だという自覚が良い意味でなくなってきた。いえ、誤解を生むのはよくないので詳しく書くと、男性と一対一で話したり会ったりするときに構えなくなった。いわゆる「下心」というヤツが相手から感じられなくなって、めちゃくちゃ楽チンになりました。別に自惚れているわけじゃないですけどね。そういう「構え」というか「力入ってるなぁ」みたいなのが無くなった。

現在はこんなオバサン(と自分でいうのは好きじゃないけど、どう考えても一般的にという意味でね)相手にするわけねぇだろ、女として見てねーよ。という気楽な関係性を楽しめるようになりました。
ただの人間。それだけ。いいですよね~、このスタンス。相手も私も楽チ~ン!

だから次の約束も気楽にできる。
「また会いたいです」の意味が女性同士のそれと同じだという心地よさ。両方が同じスタンス。これ、なかなか無いんですよ。40代までは。

それでね、男友達と下心なくお酒を飲みながら話すことの解放感というヤツを知ってしまったら、もうそれ以上なにを望むことがあるか?というくらいに楽しいんです。この感覚は若い頃には全く無かったんですよね。

若い頃は関係性が進展しないでいるとヤキモキして、「二人で会ってるのに私に興味ないの?」なんて相手にジャッジを強要したりしてね。あー、なんて傲慢なんだ。やな女だねぇ。

私に興味の無い男なんて興味無いわ❗️みたいに。
どんだけーーー!ですわ。ホンマに。

年を取るっていいですよ。相手に何も求めない。自分を晒しても恥ずかしくない。計算も忖度も何もない。あくまでも私の場合はですが。

逆に家族や女友達には言えないような話も素直にできる。( 言えないような話というのは、相手に不快な思いをさせないだろうかとか、心配させないかといった話 )要するに、気を遣わないってこと。甘えられるってことですね。しょーもない愚痴やエゴイズムもスルーしてくれる。気持ちいいほどに。ある意味お互いに赦し合える何かが暗黙にあるような感じ、とでも言いましょうか。私の話を聴いてくれるから私も聴くよ!という互助の精神のような。求め合う種類のベクトルが同じという奇跡的な関係性。それはとても稀有であり、とても信頼性がある。人生頑張ってきて最終コーナーを回った頃に嬉しいご褒美が待ってました!みたいなね。これまで見たことない新しい扉、ご褒美のドアを開ける感じです。


自分を解放できるドアはいくつもあった方がいいと思います。使い分けというか、相手によって話せることって違うから、それぞれの扉を開けることで少しずつ種類の違う解放を味わうことができたらとっても生きやすくなります。

迷惑にはならない程度にね。
相手あっての解放のドアですから。
そこん所は大人としてのマナーをしっかりと守っていきましょう。

何の話や。

今夜はタカーシーさんによい眠りが訪れますように。


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