第19回 大人相談会 / 大人とは(Part2)

画面に集まったそのひとたちの顔を見ているだけで私は幸せを感じていました。

ただひたすら「味わう」時間を楽しむ90分間でした。

大人とは?と問いかけると、皆それぞれ生きてきた道のりを振り返り、今の自分にたどり着くまでの途中経過で出会った気づきや、行動に移すことによって得られたターニングポイントや、取り払った枠組みや、縛られた環境は実は自らが作り上げた幻想だったという深い話を伺い、一人一人の経験を聴きながら追体験するようにじっくりと味わっていました。その思考や世界観に浸りながら、誰もが自身の経験や記憶と照らし合わせ、共感し、共鳴し、また全く違った思考や価値観に驚き、そこに違和があったとしても、それさえも新たな気づきとして受け取る余裕を持ち、気がつけばみんながとてもリラックスした笑顔で、これまでになく自由な言葉で様々な方向へと話が飛んでゆくことを楽しんでいました。


私はある年代まで「経験こそ全てである」と自負していたところがあります。経験していないと何も言えるはずもない。経験していない人が言うことは説得力がない。経験して初めて気づき、人にその価値を伝えることができるのだ、と。

しかし、ある時期からそうではないかもしれないと思うようになりました。その“経験“こそが縛りとなり、自分に対して、ある固定観念や枠組みを作って自らの手枷足枷にしているのではないかと。人は経験したことは実感を伴った体験として自分自身の糧とし、気づきや概念を固定させることがあります。絶対的な価値感を伴って自分の中である形となって居座ります。もちろん、柔軟な思考でしなやかな生き方ができる人もいますが、それまでの自分が持つ価値観を覆すきっかけにもなりえる“経験“を自分自身をアップグレードしたと捉え、自身のスケールや軸として重要視する傾向になりがちです。そして他人にその観念や思考を“正しいもの“として披露したくなります。「私はそれを実際に経験したのだから間違いない」と。しかし果たして本当にそうなのだろうかと思いを巡らせることが年々増えてきたのです。

ある人が言いました。「“経験していない“ことによって言えること、気づくことがある」それは“大人“の概念にも通ずるもので、「あらゆる『別』がないこと」と仰います。どういうことかと言うと、『ジャッジ』しないこと。『良い』『悪い』で裁かないこと。それは価値観の多様性を認める、ということです。経験していようがいまいが、それはなんのジャッジにも値しない、ということです。

経験していることが「良い」とは言い切れないし、経験していないことを卑下する必要はない。老いも若きも、男も女も。何一つジャッジされることなどこの世にはないのだと。それはとても自由で、なんの縛りもなく、誰にも裁かれず全てが認め合うことができる世界。それこそが大人であり、理想とするところであると。


世界に散らばったメンバーたちのそれぞれの体験、それぞれの思考、それぞれの価値観、それぞれの理想、それぞれの生き方、それぞれの死生観、そしてそれぞれの「大人」に対する思いを聴いていると、自分が今いる場所はほんの一つの小さなスペース、そして人生の一瞬の通過点に過ぎないんだと知ることができます。知ることは気づきに繋がります。そして過ぎ去った遠い過去の時間の話を追体験する中に自分の過去と重なる思いを見つけるとき、ここに至るまでに自分自身で選んできたたくさんの分岐点での決断や覚悟を振り返り、あぁ、こうやって自分の人生を歩んできたんだなと実感します。そしてそれは“自分自身を幸せにするために責任を取る“という行為なんだと改めて知ることができました。

自分の居場所を自分で選べること。どのように生きていくかを自分で決められること。そこにある自由は自分で責任を取るという覚悟の上に成り立つこと。大人とは、選べる立場にあることなのだと。


印象的だった言葉の中に、私はまた新たな気づきをいただきました。それは常々私の中で育ってきた思いと全く同じ価値観だったからこそ強く心に響きました。

ー 子供に習うことは山ほどある。ー

大人になって、子供を産んで育ててきて、たくさんの経験を積めば積むほどにじわじわと実感してきたことで、私が今現在生きていく上で最も大切なことの一つだと感じるのは“子供の心”を持ち続けることだと思っています。

子供の頃、なんの枠組みにもはまらず、なんの固定概念も持たず、なんのしがらみもなく、なんの縛りもなかった心を取り戻すことができたら。見るもの全てをフラットに捉え、聞くこと全てを素直に吸収し、『良い』も『悪い』もなく、拘りも偏見もなかった時代。それは人として生きていく中でほんの一瞬だったような気がしますが、確かに誰にも同じようにあったはずの時間。そのころのピュアな魂に今の自分を飛ばすことができたら、これまで生きてきた中で経験してきたことも全て、ジャッジすることの無意味さを気づかされると同時に、本当の意味での自由を手に入れることができるような気がします。大人になった今、子供の心に学ぶことはたくさんあります。


とにかく居心地のいい空間でした。それぞれに思いを馳せる無言の時間さえも愛しく心地よく。気づけばみんなが画面の向こう側で微笑んでいます。そう、こんな時間を持つことは大人の特権かもしれません。大人っていいな。素敵な時間をありがとうございました。


参加してくれたメンバーの皆さん、ありがとうございました。また会いましょう。


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