#10 「小説を書きたい」という何の変哲もない普遍的な欲望について、もしくはおすしが好きなひとについて


 なんというか、ここ最近特に何も出来ていないのと、プライベートの流れで本当に机に向かえていないので小説を書きたいという気持ちだけが強く出てしまっていて、これは危険だなと思う。

 小説がどういったものであるのかてんでわからなくなってしまったし、というかぼくが今まで書いてきたものが小説であるという自信はなく(みなさんがそう思うならそれでいいのだろう、とは思うものの)、つまるところ自分が小説であると実感できるものを書かなければならないという焦燥感にばかりとりつかれてしまっていて全然文章が組み上がらないし組み上がっても「そうじゃねえんだよな」ってどこかで思ってしまうようなものばかりになる、もしくは既存の流れの延長線上にすぎないものになる。ぼくが書きたいのはたぶんそうじゃない、と思っているが、はたしてほんとうにそうか? と最近になって思い始めた。

 ここ最近自分の「好物」、つまり自分が他人にアピールする上での「好物」と、ほんとうの好物、つまるところ統計的に有意にそれを選好するであろうと考えられているものは結構異なっていることに気づいた。たとえばぼくはおすしが好きでたらこパスタが好きだ。でもほんとうにそうだろうかと考えたときに、食べているものを少しずつたどっていくと案外そうでもないというか、意外にエビフライだったりハンバーグだったりの方が選ばれていたり、おにぎりの具もこんぶが好きだと思っていたら結構な確率でおかかやツナマヨを選んでいたりしていて実はそんなにこんぶを食べているわけではないというようなことにある日「気づいてしまう」し、気づいてしまったが最後それより前に戻るのは結構難しかったりするのだ。

 何が言いたいのかというとべつに何が言いたいとかはないのであるが(ひざのうらはやおの文章にはおおむねそういうところがある。こんな文章を常日頃から読んでいる方には既知だろうが)、得てしてぼくのいうところの「書かなければならないもの」というのは実のところほんとうはそういうわけでもなくて、別に全然書きたいとも書かなければならないとも思っていないところが「書かなければならないもの」だったりする、みたいなことも結構あるんだろうと思うようになった。そしてそう思ってしまったが最後、はてぼくが小説だと思っているものはほんとうに小説なのだろうか、小説みたいなやつ、なだけなのかもしれないと思い、そこからなんだかうまいこと書けなくなってしまっている。

 今年に入ってからも、白昼社が主催のアンソロジーやオカワダアキナ氏が主催するアンソロジーなんかに寄稿しているが、結局のところ完全新作はそこにしか出せていない。先日(というか発行日でいえば今日なのであるが)、ぼくは年間購読者限定で新刊を発出したが、それは今までの没作品の再録であり、ぼく自身の「過去」を封印したものでもあった。こういったものはある程度個人情報のやりとりなどをして熱意とリスクを共有してくださっている年間購読者の方以外に頒布することは難しく、また誰にも読まれないということも性質上難しいものであったので、こういった形式として発出したまでである。発行日である今日、令和4年3月1日はぼく自身の人生にとって記念すべき日であった。今後もおそらくはそうなっていくだろうということ、そして「そうすべきである」というところから、当該作品を発出し、またこの文章を書いたまでである。

 そんなわけで、この文章での肝要というのは実は従前の部分につきるわけだ。極めて個人的なことながら、義理という手前まったくお知らせしないという訳にもいかず、このような形とかえさせていただいた。とはいえ何か身分が変わるわけでもないので、今後ともよろしくお願いしたい。

 なお、以後の創作活動については、ぼくが原作となっているもの、およびエッセイなどの非小説関係の文章についてはひざのうらはやお名義で、それ以外、つまり新作小説については原則新津意次名義で発表していこうと考えている。本協会のメインライターと制作局のトップを新津意次名義にしたのはそういった背景からである。もちろんしばらくはひざのうらはやお作品のリライトやシリーズ作などもあるためひざのうらはやお名義のものもそれなりに出てくるが、最終的にはすべて新津意次という別の名義に任せようと思っている。これは一身上の都合である。それもご了承のほどお願いしたい。

 まだ寄稿の原稿がいくつか残っているので、とりあえずそれに手をつけていきたい所存。

 なお、寄稿のお問い合わせについては協会アカウントか、代表であるぼく、つまりひざのうらはやおまでご連絡いただきたい。そうそうぼくに寄稿を打診する物好きなんていないだろうが、もし必要とあらば善処していきたいし、今後は寄稿による広報も積極的に行っていきたいところであるということも今一度お伝えしようと思う。こちらについてもよろしくお願いしたい。

おすしを~~~~~よこせ!!!!!!!!おすしをよこせ!!!!!!!よこせ~~~~~~!!!!!!!おすしを~~~~~~~~~!!!!!!!!!!よこせ~~~~!