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令和6年予備試験論文式試験労働法再現答案

第1、設問1
1、X組合は救済命令等の申立てを行う事が考えられるが、これは認められるか(労働組合法(以下「労組法」)27条1項、27条の12第1項、7条3号)。
(1)たしかにY学園の施設管理権はA校長にあると考えられ、会議室の使用を認めるか否かはA校長の裁量の下に判断されるべき事項であるから、本件規程は有効であり、これによる本件Y学園による会議室使用拒否は不当労働行為たる支配介入(労組法7条3号)に当たらないとも思える。
(2)しかし、かかる裁量権も労働者の権利の重要性に鑑み限定されるべきで、具体的な支障が生じないのにその利用を認めないのは裁量権の逸脱濫用があるとして違法となると考える。
 本件でX組合の他に会議室の使用を予定している者はおらず、X組合に使用を認めても具体的な支障は生じないと考えられる状況であった。そのためかかる会議室使用拒否は上記裁量権の逸脱濫用であり、違法である。
 また、本件規程では会議室使用の2週間前までに学校長の許可を得る必要があるとされていたが、実際には、使用直前に教頭に対してその旨告知すれば学校運営上具体的支障が生じない限りその使用が認められる、という取扱いがなされてきていた。このような運用は相当程度長期間にわたりなされてきたものと考えられるから、事実たる慣習(民法92条)として法的拘束力を持つ。本件会議室利用拒否はこれに反するもので、違法である。
 なお、仮に上記取扱いが事実たる慣習として法的拘束力を有しなかったとしても、いきなりAが校長に就任してからその取扱いを変更する事は信義則に反する(労働契約法(以下「労契法」)3条4項、民法1条2項)。
 そして当時X組合はY学園と部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善について激しく対立している状況にあったことから、Y学園には支配介入の意思があったものと強く推認される。
2、以上よりY学園の会議室使用拒否は不当労働行為たる支配介入に当たり、上述のX組合の申立ては認められる。
第2、設問2
1、本件Zへの戒告処分は有効か。労契法15条に反し無効とならないか、問題となる。
(1)ZはY学園教諭であり「労働者」(同法2条1項)、「使用者」(同法同条2項)たるY学園と労働契約関係にある。そしてY学園は教諭の懲戒の手続等につき就業規則で定めていた。
 よって「使用者」たるY学園は「労働者」たるZ「を懲戒することができる場合」に当たる。
(2)本件戒告処分は「客観的に合理的な理由を欠」かないか。
ア、たしかに上述の通りA校長にはY学園の施設管理権があり、それにともなって定められた本件就業規則も有効である。そしてZは職員室内でAの「許可なく」ビラを「配布」しており、Y学園就業規則39条5号の懲戒事由に該当するようにも思える。
 そのため、「客観的に合理的な理由を欠」かないとも思える。
イ、しかし、上述の通り施設管理権の裁量にも限界があり、業務遂行上具体的な支障が生じないといえる特段の事情がある場合には、例外的にY学園就業規則39条5号の懲戒事由には該当しないものと考えるべきである。
 本件でZは、A4サイズのビラ1枚を教職員の休憩時間たる昼休みに、手渡しや机に置くという方法により配布した。その所要時間は約10分間であり、このようなものであれば教職員の業務遂行に具体的な支障は生じなかったものと言って良い。また、Zはこのビラ配布を生徒等がいない事を確認して行っており、外部に不当な影響が生じるとも考えられない。
 したがって本件では上記特段の事情が存在し、本件Zの行為はY学園就業規則39条5号には該当しないものと考えるべきである。
(3)すなわち本件戒告処分は「客観的に合理的な理由を欠」く。
2、以上より、本件Zへの戒告処分は労契法15条に反し無効である。
                                以上


【コメント】
たぶん及第点(と願いたい)。
強いて言えば、段落分けが下手なのと、事実の評価が甘いのがマイナスポイントかな。
ただ、相対評価なので、何とも言えない。

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