地域のつむぎ手の家づくり|地域の人と技術を守り、育てる究極のものづくりを追求<vol.14/杢創舎:岩手県盛岡市>
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地域のつむぎ手の家づくり|地域の人と技術を守り、育てる究極のものづくりを追求<vol.14/杢創舎:岩手県盛岡市>

【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。

今回の<地域のつむぎ手>は・・・

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カンカンと、若い大工たちがノミをたたく音が響きわたります。墨付けされた太く大きな木材を器用に転がしながら、次々と刻んでいきます。活気あふれる「これぞまさに大工の仕事場」という光景が目の前に広がるのは、岩手県盛岡市の自然豊かな好摩地区に拠点を置く工務店、杢創舎の広大な加工場です。

社長の澤口泰俊さん
の信念のもと、地元の木と伝統の大工技術を生かした家づくりを貫いています。ベテランから若手まで、家づくりに関わるさまざまな工程をマルチにこなす“多能工化”した大工集団を擁し、製材から基礎、左官、板金、建具・家具までこなす、ものづくりの高みを極めようとする地域のつくり手の姿がそこにはあります。

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社長の澤口泰俊さん

杢創舎は、岩手県産の「南部アカマツ」をはじめとする地元の木を使い、大工が伝統的な大工の技術で仕上げる、豪快で美しい木組みの架構を持つ家が、地元のファンに支持されています。

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高度な技術を要する家づくりを支えるのが30人近くいる社員大工です。85年生の南部アカマツからつくる8寸角の大黒柱や幅5寸・高さ6寸の梁など、市場に出回らないような大きな部材を自社で製材・加工します。澤口社長は「本物の木を全面的に用いる当社の家づくりでは、大工の技術が生命線です。若い大工を育て、次の世代に技術を継承していくことに最も力を注いでいます」と語ります。

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岩手県産の南部アカマツの美しい木材

理想のものづくりを追求

同社には、「本物の木を扱う本物の大工技術を学びたい」と入社を希望する若者が後を絶ちません。現在も社員大工のうち10人は20代の若手です。そんな若手に対し澤口社長やベテランの棟梁たちは、まずは道具のつくり方や、大きな部材を使い回せる体づくりなどについて指導します。その後は、加工場と家づくりの現場の両方で大工のイロハを仕込みながら、丁寧に若手を育てていくのです。

杢創舎はかつて、盛岡の市街地に拠点を構えていました。現在の事務所や木材の加工場などは、そこから30㎞ほど北の自然豊かな環境にある好摩地区にあります。敷地面積は、なんと3000坪。実はここは、東日本大震災で取引先が津波で流されて廃業を余儀なくされた製紙工場の跡地なのです。澤口社長は「理想のものづくりを追求しよう」と全面的な移転を決断しました。

多能工化とワンストップ化

移転を機に澤口社長は、大工の多能工化=マルチプレーヤー化とワンストップ(自社完結型)の家づくりへと大きく舵を切りました。そこには「顧客の満足度と家づくりの質を高めながら、同時に地域の貴重な人と技術を次の世代へとつないでいく」という澤口社長の、高い理想を本気で目指す決意がにじみ出ます。

敷地内には桟積みで天然乾燥する木材のストックヤードから製材機を備える製材所のほか、木材加工はもちろん鉄筋、左官、板金、建具・家具の製作スペースなど、家づくりに必要な機能がそろっています。そして、その全ての作業を担うのが多能工化された大工たちです。澤口社長は「敷地が広いだけでなく、工場跡地のため全て屋根付きなんです。これは本当に大きい。物件が出た時、理想を実現できると飛びつきました」と移転当時を振り返ります。

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木材は、屋根付きのストックヤードで桟積みで天然乾燥する

「本物の灯」をともし続ける

ただ、多能工化とワンストップ家づくりの目的は、内製化による効率化の追求ではありません。澤口社長は「もちろん段取りや工程管理、生産性向上の面で基礎工事からはじまり左官、板金、建具まで自社の大工がこなしてしまうことのメリットは計り知れない」としながらも、「でも究極の目標はそこではないんです。一番大切なのは、あくまで地域の人と技術を守り残すことなんです」と訴えます。

例えば同社が製材するのは、市場に出回っていない、購入したら非常に高額になってしまう特殊部材だけです。普通の下地材や根太、胴縁、間柱などは長く付き合っている製材所から購入します。「いま、各地で製材所の廃業が相次いでいます。地元の木をひいてくれる地元の製材所は残ってもらわなければ困ります」と想いを語ります。

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上から製材、建具、板金、左官、家具、基礎(鉄筋加工)と、
家づくりのあらゆる機能をワンストップで完備している

建具・家具の技術は、仕事量の減少で経営が難しくなった近在の職人兼経営者を社員として迎え入れたところから、自社の大工に広がったものです。地域の人と技術を守った形になりました。左官の技術については取引のある職人の協力を得て、そこに自社の若手大工を期間限定で修業に出して学ばせているそうですが、最近では左官屋さんが多忙な時に、左官技術を身につけた自社の大工を派遣することもあるそうです。

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道具は大工の命。時にはチョウナやマサカリ、ヤリガンナといった
伝統的な道具も実際に使って仕上げる

本物の木を使い、伝統の大工の技でつくる本物の家づくりの灯を絶やさずともし続けるため、人と技術を守り、育て、そして次世代に継承していく。澤口社長は地域工務店の使命として、今後もその役割を担っていこうと決意を固めています。

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文:新建ハウジング編集部
写真:杢創舎提供




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