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地域のつむぎ手の家づくり|スズメのキャラクター「すずちゃん」で顧客・地域との関係を再構築<vol.34/クリエすずき建設:千葉県柏市>

【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。

今回の<地域のつむぎ手>は・・・

長引くコロナ禍で、工務店は対面でのイベントなどが開催しづらい状況が続いています。そんな中、さまざまなイベントによって顧客や地域の人たちとのつながりを深めてきたクリエすずき建設(千葉県柏市)は、コロナ禍で希薄になってしまいがちな関係を深めるため、スズメをモチーフにしたマスコットキャラクター「すずちゃん」を発案しました。国が企業支援策として展開している事業再構築補助金などを活用しながら、愛らしいぬいぐるみなども製作し、顧客や地域の人たちに自社を「思い出してもらう」きっかけづくりに取り組んでいます。

社長の鈴木一功さんは、以前の自社を「リアルイベントが得意な工務店だった」と表現します。地域の人々を集めた流しそうめん大会で、600人以上を集めた経験もあるほどです。しかし、コロナ禍でリアルイベント、特に飲食を伴うものがほぼ開催不可能になってしまいました。

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社長の鈴木一功さん

同じ時期に、会社も大きく変化してしまったそうです。それまでの好調な受注により仕事量が急に増加したことで、手が回らない状況などもありクレームも増えてしまいました。その結果、一部の社員が退職してしまう事態に。鈴木さんは退職者を出してしまったことを悔い「残ってくれたスタッフの良さを尊重しよう」と心に決めました。

そんな状況下で、広報や顧客応対を担当していた社員がマスコットキャラをつくることを提案。鈴木さんは、イベントに替わる手段として会社のシンボルとなるようなマスコットに可能性を見出し、社員の個性も生かせると考え、そのアイデアをさっそく採用しました。

社員や地域と共につくりあげる

マスコットづくりのプロジェクトは2021年初頭からスタートしました。月に1回のマーケティングミーティングで打ち合わせを重ね、春にはデザインが決定。デザインは、絵心のある発案者の社員が担当しました。

スズメをモチーフにしたのは、同年5月から始めたサブスクリプション型の維持管理サービス「住ま暮らサポート」のロゴが、桜であることも関連しています。「桜に近く、親しみやすい存在」で、かつ社名にも近い響きだったことなどを考慮しながら決定しました。

デザイン決定後は、インスタグラムや、4200人が登録しているというLINEを利用して「名付け親選手権」を開催。70人から応募があったそうです。OB顧客や地域を巻き込んみながら、キャラクターをつくり上げていきました。

「名付け親選手権」で最優秀賞を受賞した人にぬいぐるみをプレゼント

最も大変だったのは、決定したデザインを元にぬいぐるみを試作する過程だったそうです。「(平面の)絵から立体にするので、イメージがうまく形になっていないこともあった」ため3カ月もの期間を要しました。ぬいぐるみの製造にかかった約100万円の費用は、事業再構築補助金と市の補助金でまかないました。

「すずちゃん」のぬいぐるみ。近くの神社に住んでいるという設定

かわいさを認知のツールに

マスコットが決まりぬいぐるみが出来上がった後、まずは、リフォームの見積もりを依頼してきた見込み客に対し、ぬいぐるみをプレゼントするキャンペーンを展開しました。鈴木さんは「見積もり(の価格)よりも、当社の取り組みの方がお客様の記憶に残りやすい」と話します。認知のフックとして、すずちゃんのぬいぐるみを位置付けています。

また、すずちゃんは同社がメインの対象とする顧客のイメージとも重なります。鈴木さんが考える顧客像は「築10年ぐらいの戸建てに住む一家の女性(主婦)」。リフォームの必要、つまり工務店のニーズが生じた際に「不安をあおってリフォームの必要性を迫るようなYouTubeの動画よりも、子どもと“かわいいね”と話す中で弊社を思い出してもらう方がうちらしい」と笑います。

すずちゃんで手応えをつかんだ同社は今年、鈴木さん自身をキャラクター化した「カズノリ社長」も登場する予定です。すずちゃんと共に漫画化され、カズノリ社長は「お客様との契約後に、いろいろな気づきをお客様に伝えていく役目」を担っていくそうです。

文:新建ハウジング編集部
写真:クリエすずき建設提供

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