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自閉症とは

脳機能の障害

自閉症は、先天的な脳機能障害。先天的なので、生まれ持った障害です。ただ、診断の時期は一人ひとりに違いがあり、幼少期に診断を受ける人もいれば、学齢期、社会人など、人それぞれだったりします。「先天的」とあるので、親の育て方、いじめ、個人の努力不足など、後天的なことが自閉症の要因ではないことは明らかです。ここは、押さえておきたいポイントでもあります。

脳機能の障害は、情報処理に機能障害があるとも言い換えることができます。目や耳などで得た情報をインプットし、脳内で情報処理をした後、話したり書いたり動いたりすること、つまりはアウトプットする。こういった一連の流れの一部分(もしくは全体的)に機能障害があるということになります。

また、自閉症の特徴の一つに、能力のアンバランスさがあります。できることとできないことに差があり、その差は大きな開きがあり、そこに対する周囲の理解が整わないのもあって、生きづらさに繋がっています。そのため、周囲の理解は不可欠で、周囲との関係性や相性によって脳機能障害の程度もまた、変わってくるともいえます。

診断名の変化

自閉症という言葉は、1943年のレオ・カナーの論文から始まりました。当時は家族因によるものとされていましたが、その後、1968年のラターらにより言語/認知障害が基本障害とされるようになり、「社会性の障害」にも注目が集まるようになったといわれています。
また、1981年には、イギリスのローナ・ウイングの論文でアスペルガー論文が再評価されることになります。ローナ・ウイングは、自閉症と診断されないが3つの障害(社会性、コミュニケーション、想像力)をもつ人たちがいることに注目しました。いわゆる「三つ組の障害」です。ローナ・ウイングの報告は、自閉症概念の拡大に繋がりました。

さて、歴史的背景から診断名の変化に話を移していきます。DSM-Ⅳ(アメリカの精神疾患の診断・統計マニュアル)では、広汎性発達障害という概念が設けられました。また、その下に、自閉性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害といった下位分類が設けられていて、その頃に診断を受けた人は、上記の診断名で理解されている人もおられると思います。
また、改訂されたDSM-Ⅴでは、自閉スペクトラム症(ASD)という単一のカテゴリーにまとめられました。診断名は、時代とともに、改訂される診断基準のなかで変化しているようです。

本書では、ASDを主として話を進めていきますが、私にとっては昔から馴染みのある「自閉症」という言葉で表記統一して書き進めていきたいと思います。

(引用文献)
・テンプル・グランディン,  リチャード・パネク(2014):自閉症の脳を読み解く どのように考え、感じているのか(NHK出版)第1部1章
・関正樹(2022):小児科医・かかりつけ医に知ってほしい発達障害のこと(南山堂)第2部各論 1.自閉スペクトラム症

アンバランスさがあるということ


図は、自閉症における能力のアンバランスさを簡単に表したものです。「多様な偏り」を例として示していて、真ん中の横軸を平均とし、上段が得意(できる)、下段は苦手(できない)として3色の折れ線で表現してみました。
黒色は自閉症のない人、青色と赤色は自閉症のある人を表しています。青と赤は微妙に違いがあり、自閉症の診断が共通していたとしても、個々によって多様な偏りがあることを伝えたくて作った図になります。

図を見ると、黒色は平均を小さく波打ち、青色と赤色は得意苦手の間で大きく波打っているが一番のポイントです。誰しも、得意なことや苦手なことはある一方で、自閉症の人たちは得意と苦手の差がとても大きく、例えば、とても流暢に話すことができる青色の自閉症の方は、書くことがとても苦手で、その落差に周囲はなかなか理解できず、周囲の無理解が自閉症の人を生きづらくしているように思います。
書くこと、話すこと、集中力、段取りなどは青色と赤色で違いがありますが、時間管理、客観視、感情、視覚情報、聴覚情報などは共通することで図を作ってあります。自閉症の診断の基準は明確であるため、共通となる特性があるのも忘れてはいけないポイントです(上記の項目は、診断基準の項目ではなく、図を分かりやすくつくために用いた言葉になります)。

ここでは、自閉症の人がもつ能力のアンバランスさが人よりも差が大きく、それゆえに周囲からの理解を得にくくなり、その結果として生きづらさに繋がっている現状があることを押さえておきたいと思います。

自閉症の文化


ここでの最後は、所属する事業所のコラムを一部紹介して締めくくりたいと思います。

「異文化」とは何か? 辞書には、「価値観や言語,習慣や行動様式など,自分が親しんでいる文化とは規範・営みの異なる文化」というように書かれています。
20年ほど前、私は自閉症に出会い、自閉症の子どもたちとどう向き合っていけばよいのかを模索する中で、ある日、自分に中にストンと落ちる話に出会いました。それが、「自閉症を異文化として理解する」ということでした。
https://jobjoint-osaka.com/2643/

自閉症の人は、「見え方」「感じ方」に違いがあるといわれています。独特な一面があり、ユニークなところが魅力だったりします。

新型コロナが流行して以降、外国の方が日本に来る機会が減り、インバウンドという言葉もすっかり聞かなくなってしまいました。コロナの前は、たくさんの外国の方が来日され、歴史ある日本、おもてなしを大切にする日本、日本独自の食文化など、日本を楽しむ方は多かったように思います。
自閉症の人を外国の方と同様に理解するわけではないですが、見え方や感じ方が違うために、自閉症の方は異なる文化があると言えます。

外国の方は、日本に興味をもち、日本をリスペクトし、滞在や観光を楽しまれます。僕たちも、異なる文化のある自閉症の人に関心を寄せ、リスペクトの気持ちも大切にする中で関わっていくことが自閉症を理解する上で何よりも大切なスタンスであるように思います。

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