ミューズと呼ばれた憧れのひと
「彼女が18年ぶりに来日する」
当時、そのニュースを知った時、同じく彼女を好きな友人に興奮しながら連絡したのを、今でも鮮明に覚えている。
2018年9月、日本とフランスの交流イベントへ参加するために、アンナ・カリーナは来日した。
私と友人は、勿論すぐにチケットを入手し、意気揚々とその日を待った。
もう、わくわくが止まらなかった。
歳を重ね、シワが増えても、少女がそのまま大人になったような人柄に魅了されない人はいない。ココ・シャネルが名付け親、ゴダールのミューズ。キラキラと輝く彼女に憧れるのは、至極当然の流れだった。
イベント当日、友人と駅で早めに待ち合わせた。会場近くで開催されていたアンナの写真展を先に見るために。
数々の映画のポスターや写真を眺めながら、「ああ、この後、本物に会うのだ」と思ったら、そわそわして、こころが落ち着かなかった。
ライブは、野宮真貴さんや、クレモンティーヌも一緒で、ちょうどアンナやクレモンティーヌのお誕生日でもあったから、和やかなお祝いモードだった。
会場にはカジヒデキをはじめ、芸能人もちらほら。
イケメンギタリストを従えて、アンナが歌い出した時、歌詞を間違えて止めるハプニング。舌をペロッと出して、テレるアンナは、スクリーンでみた可愛いひとのままだった。
なんだか夢を見ているような時間だった。
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そして2019年12月、アンナ・カリーナはがんのために79歳でこの世を去った。あまりにも突然で信じられなかった。
今思えば、もしかしたらすでに来日の時にはガンにおかされていたのかもしれない。
2018年は9月とはいえ、まだ蒸し暑い日が続いていた。ボーダーのカットソーに、紺色のジャケットを羽織り、赤いストールを首にかけ、ハットを被った彼女。フランス人女性らしくシンプルでセンスのよい風貌はさすがだが、ちょっと痩せたかな?と思っていた。けれどそれはご高齢のせいだと。
それだけ明るい笑顔で元気だったから。
先日、たまたまみたポスター販売サイトで、2018年5月に行われたカンヌ国際映画祭のポスターを見かけた。
映画祭のメインビジュアルのポスターとして、『気狂いピエロ』のキスシーンが採用され、ゴダールと共に召喚されていた。
これまでも欲しいなぁと思って、色々みていたが、状態が悪いものや、高額なものばかりで諦めていたのだ。だが今回は手の届く範囲の金額で、状態もさほど悪くないようで、迷わず購入した。ラスト1枚…手続きを完了したらSOLD OUTの表示がでた。出会いだと思った。
いつも慎重な性格で、悩んでいるうちに締切…ということが多い私。だけど、後悔しないように、ここだっていう瞬間を逃さないようにしないといけないと思った。
会いたいひとには、会いにいけるうちに会う。
好きなひとには、言えるうちに好きと言う。
いつか…は、来ないかもしれないと、最近すごく思うんだ。
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