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アイラヴミー「答えを出すのだ」という曲に、メロディに乗せた人生の本質を見た。

あるとき僕は、何気なく実家のテレビを眺めていたら、始まったのは「NHK みんなのうた」だった。
流れはじめたイントロを聴きながら、最近は「みんなのうた」の曲も随分バンドバンドしているのだなぁ、なんてことを考えながら、その曲の歌い出しを聞いて僕はテレビ画面に全意識を持っていかれた。

この季節になると思うんだ もう先生なんていないって
問題を出してくれる人 正解をくれる人はもういない

この、ただただ平易な言い回しだけで出来たシンプルな歌い出しに、僕はなんというか、一言では到底言い表すことのできないような人生の本質っていうか、そんなものを感じてしまった。
それこそ、心の底ごとテレビに釘付け。

この曲に対する僕のなんとも言えない想いを、なんとか今から言語化することを試みてみる。うまく行くかどうかは分からない。

「もう先生なんていない」

僕は「教育業」という世界に身を投じてから、もう随分長いこと時間が経つのだけど、ハッキリと分かることがある。

生きれば生きるほど、自分の周りに「先生」っていなくなる。

思えば長い人生、当たり前のように「先生」って早いうちから近くにいてくれるんだよ。
その先生はいつもいつも、数学だって、国語だって、もっと言えば人生だって、「さぁ、どう思う?」って問いかけてくれて、考えさせてくれて、そして一つの答えとともに「じゃあ、これはどう思う?」って、僕らのことを当たり前のように四六時中支えてくれる。

だから、幼い頃の自分たちから見たって、もっと言えば、いつの頃の自分から見たって、「先生」という存在が近くにいてくれたことが確かにあったのは、当たり前の話なんだ。

で、10年経って、20年経って、人生がどんどんどんどん先に進んで、
ふと周りを見渡すといないんだよ。「先生」って。

「先生」って、そんなもんなんだよな。

これに気づく人と気付かない人

面白いのは、このことに気づく人も気づかない人もいることだと思う。
横に常に誰かがいて、次にどうすればいいのかいつも教えてくれて、答えも教えてくれて。

人生の最初は多分これでいい。
しかし、いつまでもこれじゃあ、そこから先の人生って随分と質が変わる。

「もう先生なんていない」

この言葉は、「人生の分かれ道」みたいなものを歌ってるように聞こえたんだ。
これに気付いて、受け入れて、自力で走れるようになる人がいる。そういう人は、自分の選択で自分の人生を突っ走って、多分「笑って死ねる」ほうを選んだってことになる。

でも、一方でいつになってもこれに「気づかない」。そんな人もこの国にはたくさんたくさんいる。

そういう人は、いつになっても「誰かが教えてくれる」「誰かが導いてくれる」のばかりを待って、どんどん「自分」を殻の中にしまい始める。
それが「誰の人生なのか」ってことなんて、考えなくなってく。「社会」とか「安定」みたいな言葉を隠れ蓑にして、誰かが自分の人生をコントロールしてくれるのを待ち続けるようになる。

「もう先生なんていない」のに。

大事なことに気づいたアイラヴミーというバンドの歌

この曲はきっと、そんな「大切なこと」に気づいた「アイラヴミー」というバンドの今までを振り返った歌なのかもしれない。

私が私に 問題を出して
私が私に 答えを出すのだ
怖くても不安でも
勇気を持って1人で決めなくちゃ

でもこの曲の歌詞は、何も単なる「アイラヴミーの今まで」の歌ってんじゃなくて、もっと大きな大きな解釈の可能性を持っていて、
「人生ってこんなもんだよな」「だけど自分で考えて前に進まなきゃな」というひとつの正解を、たくさんの人の人生に当てはめて提示してくれる

なんだよ、「みんなのうた」ってこういう意味だったのかよ。30年間生きてきて俺はやっとこの言葉の意味を知ったのかよ。

黒板に描いた夢をみんなに無理だと笑われた
部室で初めて弾いたギターに心が震えてさ
あのね、先生 正解はわからないよ
それでも間違えながら 前に進めたらいいな

この平易な言葉たちが語る、人生の本質みたいなの、なんだろうな。

きっとこの曲は、5歳で聴くのと、10歳で聴くのと、20歳で聴くのと、30歳で聴くのでは全く意味が違って聴こえるんだ。でも、毎度毎度、きっと全く違う気づきをくれるんだ。

まるで、抽象的にほんの少しだけ書いてあるからこそとてつもなく多くのことに当てはまる、憲法みたいな歌なのかも。
そして、枝分かれした各々の法律を人生の中で知ってゆくほどに、この曲の具体的意味づけが見えてくるんだ。なんて面白いんだ、そして凄いんだ、本当に。

音楽、そして言葉の力

音楽の力はすごいなぁ、そして言葉の力はすごいなぁと思っています。
人生の大事なことに気づいた人たちが、それでも間違いながらたどり着いたひとつの「人生の答え」を、ポップに心地よくコーティングして、それが「みんなのうた」というステッカーとともに日常に溶け込んでいる。

素敵だ。なんて素敵なのだ。

音楽ってすげーな。
もっとたくさんの人にこの曲を聴いて欲しいです。

答えを出すのだ(アイラヴミー)

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